首位・福岡ソフトバンクの鉄壁の「勝利の方程式」の一角として、ここまで獅子奮迅の働きを見せている岩嵜投手。将来のエース候補と目され、昨季まではチーム状況に応じて先発と中継ぎを兼任していたが、今季は中継ぎに専念して気迫十分の投球を続けている。
市立船橋高校時代、甲子園で球速150キロをマークして注目を集めた岩嵜投手。由規投手(東京ヤクルト)、中田選手(北海道日本ハム)、唐川投手(千葉ロッテ)からなる「高校BIG3」がドラフトを賑わせた2007年、福岡ソフトバンクから1位指名を受けてプロ入りする。
容姿や人気にも恵まれ、投球スタイルは最速150キロを誇る右の本格派。誰もが次世代の大エースになることを期待したが、ルーキーイヤーと2年目はそれぞれ1試合ずつの登板に終わり、プロ4年目の2011年にようやく初勝利を挙げる。その試合のお立ち台では、涙を耐えきれず「やっぱり一軍で勝つということは凄いこと」だと、ファンや野手への感謝を語り、それでも「いずれはホークスのエースに」と力を込めていた。
しかし、先発と中継ぎの双方を経験し、どちらの役割でも一定の結果を出しながら絶対的な信頼を得ることはできず。入団時の高い期待には完全に応えられないまま、チームが日本一に輝いた2015年には、わずか8試合の登板で防御率6.75という数字に終わってしまう。
ただ、日本球界に復帰した和田投手に背番号「21」を譲り、「17」を背負って迎えた2016年は、岩嵜投手にとって飛躍のシーズンとなった。初登板は5月17日とやや出遅れたものの、その後は中継ぎとして6月26日まで15試合に登板して防御率0.82。先発した7月7日のオリックス戦では、自身5年ぶりとなる完封勝利もマークする。最終的には7試合の先発を含む35試合で4勝2敗、9ホールド1セーブ、防御率1.95という好成績を残した。
そして開幕前、複数の専門家から指示を仰ぎながら肉体強化に励むなど、さらなる向上心を持って臨んだ今季。岩嵜投手にとっては、プロ入り後初めて先発としての登板が1試合もないシーズンとなっている。中継ぎに専任したその投球はさらに凄みを増し、ここまで60試合に登板して60回2/3を投げ、5勝2敗33ホールド2セーブ、防御率1.63。勝ちパターンの1人として、いくつもの接戦を拾い、首位奪還を目指すチームに大きく貢献してきた。
岩嵜投手がここまで記録した今季のホールドポイントは38にのぼり、2位のハーマン投手(楽天)に7つの差をつけてリーグトップを快走中。エース候補として将来を嘱望されていた豪腕が、中継ぎというポジションに専念した今季。自身初となる一軍タイトル、リーグ最高の中継ぎ投手という栄誉にあずかる可能性は十分だ。
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