「あそこのフォアボールが3点につながっているので。1点でも2点でも(失点が)違っていたら、ゲーム展開的に違っていたと思います」
「2018 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージ第3戦で福岡ソフトバンクの上林誠知に先制3ランを浴びるまでの場面で、埼玉西武の先発・榎田大樹が最も悔いを残したのは一つの四球だった。
0対0で迎えた3回無死1塁、9番・甲斐拓也は送りバントを2度ファウルにしたが、榎田は制球を乱して歩かせてしまう。無死1、2塁から1番・川島慶三がきっちり送り、1死2、3塁で打席に2番・上林を迎えた。
32歳、プロ8年目でCS初登板の榎田は、初回から持ち前の粘り強い投球で走者を出しながらも無失点でしのぎ、3回のピンチでは「1点は仕方ない」と割り切っていた。
一方、上林は「第1戦で左ピッチャー(菊池雄星)を打っていましたし、いいイメージで入れました」
痛恨の一発を浴びることになる榎田は、甲斐への四球を引きずったまま上林と対峙したわけではないと振り返る。しかし、初球からスライダー、カットボールが外角低めに2球続けて外れて2ボール。打者有利のカウントになった。
そして勝負を決する3球目、榎田の投じたスライダーがど真ん中に甘く入ると、上林の打球は福岡ソフトバンクファンで埋まるライトスタンド中段に突き刺さった。
「得点圏でしたし、変化球も頭にあったので。それがよかったと思います」
上林が大きな3点をもたらすと、福岡ソフトバンクは中村晃のタイムリーで1点を追加した。
その裏、「取られたら取り返す」が信条の埼玉西武打線は、7番・森友哉、8番・外崎修汰の連続ヒットで無死1、2塁に。金子侑司、秋山翔吾は倒れたものの、好調の源田壮亮がライト前に運び、反撃の狼煙を上げたかと思われた。だが、先制3ランを放ったばかりのライト・上林から鋭い送球がホームに送られると、2塁走者の森は生還を阻まれた。
実はこのプレーの伏線となったのが、8番・外崎のライト前への当たりだった。上林が振り返る。
「その前のライト前が捕れたと思うので。1歩目で反応したんですけど、思ったより打球が伸びてきて、ギリギリかショーバン(の捕球)だったと思うので。それがあったので、(源田の安打では)刺してやろうという思いが強かったですね」
終わってみれば両チーム合計24安打、19得点と大味な試合になったが、勝負の行方を左右したのは、3ランにつながる四球と、相手の勢いを止める刺殺だった。もし榎田が甲斐に送りバントをさせていれば、あるいは上林が森をホームで刺していなければ、その後の展開は大きく違っていたかもしれない。
これで埼玉西武の1勝分のアドバンテージを含め、2勝2敗のタイ。実力伯仲の両チームによるCSファイナルステージは、まったく先が見えない。
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