“読み”が生んだ源田壮亮の勝ち越し打と浅村栄斗の3ラン【最終決戦、運命を分けた1プレー】

中島大輔

2018.10.19(金) 11:20

埼玉西武ライオンズ・山川穂高選手(C)PLM
埼玉西武ライオンズ・山川穂高選手(C)PLM

「嫌な空気はありましたけどね。なかなか点を取れるピッチャーでもないですし」

「2018 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージ第2戦で福岡ソフトバンクを下し、埼玉西武の“ヒーロー”の一人になった浅村栄斗は、勝負の分かれ目となる2回裏が始まる前の雰囲気をそう振り返った。

 初回に栗山巧の3ランで先制した直後の2回表、ミスが絡んで同点に。不安定な立ち上がりを見せた先発投手が、こうした展開で立ち直ることは決して珍しくない。

 しかも相手左腕のミランダに対し、埼玉西武は嫌なイメージを植え付けられていた。8月25日のヤフオクドームでの対戦では8回まで無安打に封じられると、20年ぶりの本拠地でのリーグ優勝決定を懸けた9月29日の一戦では7回1失点と抑え込まれた。

「(厄介なのは)チェンジアップとフォークですね。コントロールもいいので。いいところに落としてくるし、真っすぐもインサイドにきっちり投げられる。その辺の使い分けがいいんじゃないですか」

 188センチの長身からストレートも変化球も同じように腕を振り、リリースされたボールは打者の手元まで似たような軌道を描く。今季のメジャーリーグでキーワードになっている、「ピッチトンネル」を巧みに利用する実力派左腕だ。

 そんな難敵に対し、浅村は対策をこう語った。
「全部真っすぐを打ちにいっていると打てないと思うので、どこかで自分で腹をくくって、(変化球狙いに)絞るところは絞ってというのも絶対大事だと思います」
 ストレートを打ちにいくか、手元で落ちるチェンジアップやフォークに照準を合わせるか。この日のミランダは落ちる球の制球に苦しんでいたとはいえ、埼玉西武打線の狙いが攻略につながった。

 3対3で迎えた2回裏、2死1、2塁。2番・源田壮亮は1ボール、2ストライクから外角低めに2球続けられた落ちるボールに手を出さず、3ボール、2ストライクとカウントを五分に戻すと、勝負球に向けて思考を整理する。

「追い込まれた後のチェンジアップ2球がワンバウンドで、結構外れていて。次のバッターは浅村さんですし、(自分で勝負しようと)真っすぐが来るのかなと薄っすら思いながらいました」

 源田の読み通りにストレートが内角高めに来ると、ライト前タイムリーで4対3と勝ち越した。

 序盤から打ち合いの様相を呈するなか、打席に向かうのは今季打点王の浅村だ。初回、1死1塁から外角低めの137キロ直球を打ち返すもライトフライに倒れた後の打席で、どうやって腹をくくったのか。

「真っすぐばかり投げてくるとは思っていなかったので、カウントごとに1球ずつ狙い球を変えていました」

 初球は内角への143キロストレート、2球目は外角低めのフォークがいずれも外れ、3球目は外角低めのチェンジアップが決まって1ストライク。しかし、4球目は145キロのストレートが外角高めに外れた。
 3ボール、1ストライク。投手にとってストライクが必要な場面の一方、打者は狙い球を絞って勝負をかけやすい。有利な立場の浅村は、頭も冴えていた。

「(狙いは)真っすぐ、8割くらいで。変化球が来ても、空振りを一つできるという気持ちの余裕があったので」
 読み通りに142キロのストレートが内角低めに来ると、浅村は持ち前の豪快なスイングでバットを振り抜いた。超満員のライオンズファンで埋まる左中間スタンドに弾丸ライナーが一直線で飛び込み、7対3とリードを広げる。試合の流れを一気にたぐり寄せた。

「打っていけば乗っていけるから、このチームは。周りが打ち出すと、みんなつながるし。そういうので、特にこのチームは勢いが出ると思うので」
 試合前に浅村がそう語っていた通り、埼玉西武打線は11安打、13得点で福岡ソフトバンクとの打ち合いを制した。これでアドバンテージを含めて埼玉西武の2勝1敗。CSファイナルステージ勝ち抜けに向け、一歩前に出た。

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中島大輔

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