8月18日のオリックス戦、9回を投げて被安打4、奪三振2、失点2の無四球完投でプロ初勝利を挙げた千葉ロッテの酒居投手。今季は苦しい戦いが続き、伊東監督の退任も決まっているチームに、若く頼もしい先発投手が現れた。
龍谷大平安高校を卒業後、大阪体育大学に進学すると、選手の自主性を重んじる環境の中で急成長。「考えること」「量より質」を合言葉に、トレーニングや投球における理論を意欲的に学び、エースとして活躍、プロからも注目されるようになる。しかし右肩を故障し、社会人野球の強豪・大阪ガスに入社した。
酒居投手は大学時代に磨いた「低めに伸びる直球」を武器に入社1年目から活躍する。2015年の第86回都市対抗野球では、初戦から東京ガスのエース・山岡投手(現・オリックス)に投げ勝つなどして、チームの準優勝に貢献。敢闘賞にあたる「久慈賞」と、最優秀新人賞にあたる「若獅子賞」をダブル受賞する。そして、ついに2016年のドラフトで千葉ロッテに2位指名を受けた。
ルーキーイヤーである今季は開幕一軍を逃し、4月22日に初昇格を果たす。中継ぎとして10試合に登板するも、5月17日の埼玉西武戦で1回0/3を投げて3失点を喫するなど安定感を欠き、ファーム降格となってしまった。しかし、イースタン・リーグで13試合、4勝3敗、防御率2.35の成績を残し、本来の制球力と直球のキレを取り戻すと、8月4日の楽天戦でプロ初先発の機会を手に入れる。
酒居投手はこの試合で岸投手と投げ合い、8回3安打8奪三振1失点の快投を披露。ふくらはぎがつったために完投を回避し、結果的にチームはサヨナラ負けを喫したものの、指揮官はその堂々とした投球に対して「次につながる」と明言した。
2度目の先発登板は8月11日の埼玉西武戦。初回から浅村選手に2ランを打たれ、持ち味であるテンポの良さを発揮できないまま、5回3失点でマウンドを降りるが、「酒居が最低限踏ん張ってくれたので、早く追いついてあげたかった」と語る角中選手の同点弾などで、チームは勝利を収める。
そして8月18日、オリックス戦。大阪府枚方市出身の酒居投手は、2回裏と9回裏にそれぞれ犠飛とソロで2点を失うものの、無四球完投を果たし、地元でプロ初勝利を手にした。4回裏から8回裏までオリックス打線を無安打に抑える好投。「本当に地元で初勝利できて、良かったです。まだまだ不甲斐ないピッチングをしている部分もありますが、最後までしっかり投げきって少しでも順位を上げられるように、チームに貢献していきたいと思います」と語り、伊東監督はこの日の酒居投手の投球を「新人らしからぬ」と称賛した。
再昇格以降は3試合に先発、22イニングスを投げて防御率2.45と、チームの先発投手陣の中で1番の安定感を誇っている。今季エース格の涌井投手、石川投手が本来の投球を披露できていないだけに、ファンの期待も急上昇中だ。
入団会見のときには、理想の投手としてヤンキースの田中将大投手を挙げた酒居投手。今日8月25日は福岡ソフトバンク戦で先発することが決まっている。来期から新体制に生まれ変わるチームに欠かすことのできない先発投手になるためにも、残り試合も安定感のある投球を披露し続けたい。
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