育成から球界を代表する捕手に。甲斐選手が福岡ソフトバンクの屋台骨を支える

パ・リーグ インサイト

2017.8.24(木) 00:00

福岡ソフトバンクの正捕手争いに旋風が巻き起こっている。現在、チームの捕手の中で最多の81試合に出場しているのは、両リーグトップの盗塁阻止率.379を誇る甲斐選手だ。長く続いた正捕手争いの中、すい星の如く現れたシンデレラボーイにフォーカスしてみたい。

キャリアのスタートは、今にして思えば意外なところからだった。2010年、育成ドラフト6巡目、つまりチームで最も遅く名前を呼ばれ、福岡ソフトバンクに入団した。同年のドラフト1位は高校生ナンバーワン捕手と名高い斐紹選手。育成4巡目は、現在バッテリーを組んでいる千賀投手だった。

2013年のオフに支配下登録され、背番号も「130」から「62」へ変更となる。そして2014年の春季キャンプではいきなりのA組スタート。その後もアピールを続け、開幕一軍の座をつかんだが、最終的な出場数は1試合に留まった。2015年も、鶴岡選手、細川選手(現・楽天)らによる正捕手争いに割って入ることはできなかった。

転機は突然訪れる。登録名を名前の「拓也」からフルネームに変更した2017年。2年ぶりに開幕一軍入りを果たすと、4月2日の千葉ロッテ戦で、プロ初の先発マスクを被る。東浜投手を好リードし、チームの開幕カード3連勝に貢献する活躍を見せた。その後、一軍での出場は増えていき、スタメンマスクを被る機会も一気に増加した。

甲斐選手の最大の魅力はなんといっても強肩だ。2塁への送球タイムは1.7秒台。これは12球団最速の数字で、5月28日の北海道日本ハム戦では、球界屈指の俊足を誇る西川選手を完璧な送球で刺し、盗塁を阻止した。さらにパンチ力も兼ね備え、本塁打は8月24日現在で5本。ここぞという場面での勝負強さには光るものがある。

5月2日の埼玉西武戦では2点を先制されて迎えた2回裏、2死満塁で打席が回ると、高めの直球を引っ張り、打球はそのまま左翼席へ。プロ第1号が逆転満塁弾となった。さらに、7月19日の埼玉西武戦では、2対0とリードされた3回裏に第4号ソロで1点を返すと、続く4回裏の第2打席では2死1,2塁の状況で2打席連続となる第5号3ラン。4打点を挙げる活躍を見せ、乱打戦となったこの試合の勝利に大きく貢献した。

甲斐選手は170センチ、75キロ。チームの捕手の中ではもっとも小柄で、千賀投手とは16センチもの差があり、隣に並ぶと体格差が際立つ。同じ年で同じ育成出身選手であること、その2人が一軍で先発バッテリーを組むのは、育成制度が導入されて以降初めてのことだ。

それについて千賀投手は「特別な感情などはない」と語っていたが、育成出身選手としては史上初の2年連続2桁勝利を達成した8月12日のお立ち台では、「今年は拓也(甲斐選手)とずっと組んでますけども、本当に拓也も一生懸命考えてくれますし、良いバッテリー組めてるなと思います」とはにかんだ。

長らく正捕手を固定できていなかった福岡ソフトバンク。ドラフトで捕手の有望株を獲得してはいるが、なかなか一軍に定着できずにいた。しかし今季、生え抜きの甲斐選手が頭角を現しつつある。ファン・首脳陣の大きな期待を背負いながら、甲斐選手はどのように成長していくのだろうか。熾烈を極める優勝争いのさなか、福岡ソフトバンクの屋台骨を支えるこの男から目が離せない。

記事提供:

パ・リーグ インサイト

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE