CSができてPSは最大18試合に、なぜ試合が面白くなるのか
10月13日からクライマックスシリーズ(CS)が始まる。2007年からセ・パ両リーグがペナントレースで3位以上になったチームを対象に開催しており、日本シリーズへの出場権をかけて争う短期決戦だ。
CSの始まりは2004年からパ・リーグが実施していたプレーオフ。CSと同様、3位以上のチームが日本シリーズへの出場権をかけて戦っていたが、これが盛り上がっていたことでセ・リーグも導入することとなり、2007年からクライマックスシリーズという形でスタートした。
CSができるまでNPBのポストシーズンは日本シリーズの最大7回戦制の試合だけだった。1973年から1982年までパ・リーグは2シーズン制を導入し、前期と後期の優勝チームが5回戦制で戦った。しかし、パが1シーズンに戻してからは長らくポストシーズンといえば日本シリーズだけだった。CSができたことにより、ポストシーズンは最大18試合も増えた。これによってプロ野球ファンは、10月中旬から11月にかけて、濃密な時間を楽しむことができるようになった。
「せっかく長丁場のペナントレースを勝ち抜いてきたのに、短期のCSで敗退することがあるなんて、理不尽だ」
優勝チームのファンから毎年こういう声が上がる。確かにもっともな話だが、優勝できなかったチームにも日本シリーズ出場のチャンスが残るという点で、2位、3位のファンからは支持する声も上がっている。そして何より、CSは面白い試合が多いのだ。日本シリーズよりも盛り上がることさえある。
それにはいくつかの理由がある。
(1)勝手知ったる相手であること
交流戦ができて、両リーグのチームは毎年3試合対戦している。全然知らない相手ではないが、それでも日本シリーズは両軍の腹の探り合いから入ることが多い。初戦はぎごちない戦いとなってワンサイドになることも多い。日本シリーズが盛り上がるのはセ・パ両代表チームが、相手の陣容が把握できた3戦、4戦目になることが多い。
しかしCSは、ペナントレースで25回も戦った相手との勝負だ。互いに長所、欠点を知り尽くしている。だから1戦目から総力戦になる。接戦が多くなるのだ。
「下剋上」に向けての「心理戦」も魅力の1つ
(2)レギュラーシーズンの熱気をそのまま持ち込むこと
日本シリーズは両軍が万全の態勢を整えて戦うため、開催まで3~4日の予備日がある。その間に両軍は休養を取るが、試合から遠のくことでエンジンがいったん落ちた状態になることも多い。しかし、CSはペナントレース終了の翌々日から始まる。極端な場合、2日前まで戦っていた勢いのままに、CSに突入するのだ。ペナントレース終盤に好調だった選手がそのままの勢いでシリーズに臨むことも多い。熱戦が多いのはこれも原因だろう。
(3)超短期決戦であること
日本シリーズは7回戦制だが、CSのファーストステージは3回戦制。1敗すればもう“カド番”になる。勝ち点で争う大学のリーグと同じ形式だ。この超短期決戦が、初戦の総力戦につながる。特に3位のチームは引き分けでも負けと同じ扱いになるから、何としても頭を取ろうと思う。まるで甲子園の高校野球のような「一戦必勝」の緊張感がファーストステージを立ち上がりから盛り上げるのだ。
(4)アドバンテージがあること
CSでは対戦チームはイーブンの条件ではない。ファーストステージでは2位チームが3位チームに0.5勝、ファイナルステージではリーグ優勝チームがファーストステージを勝ち上がってきたチームに1勝のアドバンテージがある。このアドバンテージが、微妙なスパイスとなって両チームの心理状態に大きく影響する。
下位チームが勝てば、アドバンテージが吹っ飛ぶ。「下剋上」に向けて野心が広がっていく。反対に上位チームが勝てば、楽勝ムードが広がり、思わぬ落とし穴が待っていたりする。アドバンテージによって、こうした複雑な「メンタルの揺れ」が発生するのだ。CSでは、そうした心理戦もたまらない魅力となる。
13日から始まる最大18試合の日本シリーズへ向けた「秋の短期決戦」。じっくりと楽しみたいものだ。
(広尾晃 / Koh Hiroo)
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