有終の美飾る一打にベンチもスタンドも熱狂
■北海道日本ハム 5-4 千葉ロッテ(10日・札幌ドーム)
北海道日本ハムの矢野謙次外野手が10日、本拠地で行われた引退試合(千葉ロッテ戦)に代打で登場し、左前打を放った。
16年間のプロ生活最後の打席は、1点リードの7回2死一塁で回ってきた。2万2572人の大歓声を耳にしても、冷静に仕事に徹する。「歓声は聞こえましたが、いつも通り、試合の打席に臨むようにやりました」と集中。カウント1-1から4球ファウルで粘った後、鮮やかに三遊間を破った。
気配りの男らしく、真っ先に感謝したのは、千葉ロッテベンチだった。7球全てが直球。「井口監督や千葉ロッテの皆さんが、僕が出てきたら真っすぐで行けと言ってくれたこともあると思う。真っすぐ勝負をしてくれたことに感謝です」。ベンチで身を乗り出してガッツポーズをするチームメートには一塁上で右手を上げて応え、熱狂するスタンドにはヘルメットを取って、感謝の気持ちを示した。
うまくなりたいという一心で野球に取り組んできた38歳は、最後の最後まで技術向上を追求していた。「練習でスイングがいい感じかなと思っていて、それが最後に形になって、自分の引き出しになりました。やっていたことの方向性は間違っていないことの確認にもなりましたし、また学びが一つある打席でした」と最終打席でつかんだものについてうれしそうに語った。
指導者転身を望む声多数 恩師・竹田氏もビデオメッセージで期待
引退後の進路は未定だが、指導者転身を期待する声は多い。引退セレモニーに寄せたビデオメッセージの中で国学院大時代の恩師である竹田利秋氏は「持ち前の明るさと面倒見の良さで、野球に取り組む姿勢、本気度というのをこれから若い人たちに伝えていってほしいと思います。特に君は指導も上手ですから、そういう機会が得られたらいい指導者になると思います」と語った。
セレモニーを終えた矢野は「まだやれそうな気がしていますが、やりきったので、すっきりしています」と晴れ晴れとした表情。13日からのクライマックスシリーズ(CS)には帯同しないが、11日のシーズン最終戦(本拠地千葉ロッテ戦)は後輩たちと一緒に過ごす。
「自分ができることは限られますが、やれることをやって、チームメートと勝ちに向かっていきたいです」とリーグ3位からの日本一を目指す後輩たちを後押しする。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)
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