8月22日の千葉ロッテ戦において、楽天の高卒ルーキー・藤平投手が念願のプロ初勝利を挙げた。
昨夏の甲子園を沸かせた横浜高校のエースは、昨年、ドラフト1位で楽天に入団。鳴り物入りでのプロ入りだったが、その大きな期待に応え、ファームでは着々と実績を残していた。ただ高卒ルーキーということで、一軍初登板は早くて夏頃と予想されていた。しかし、辛島投手の不調や塩見投手の怪我の影響もあり、交流戦期間中の6月16日、甲子園で行われた阪神戦でプロ初先発。今年の高卒新人の中では、12球団最速の一軍デビューを飾った。
藤平投手のデビュー戦は2回裏、7番・原口選手に137キロの直球を左中間席まで運ばれ、5回、84球を投げて被安打5、与四死球2、失点2という結果となった。初登板初勝利とはいかなかったが、失点は一発を浴びたことによる2点のみ。思い出深い聖地・甲子園でのプロ初マウンドで、確かに自身の爪痕を残した。
プロ2度目の登板は8月6日の千葉ロッテ戦。6回2失点と試合を作るものの、二木投手の前に味方打線が沈黙し、この日もプロ初勝利はならなかった。
そして迎えた8月22日、チームは6連敗中。3度目の一軍マウンドに上がった藤平投手は落ち着いていた。初回は三塁打を浴びるものの、4番・ペーニャ選手から外角のスライダーで空振り三振を奪って、決定機を凌ぐ。直後の2回表に味方打線から1点の援護がもたらされると、その裏の千葉ロッテの攻撃を3者凡退に抑えてリズムを作り、以降は2塁より先への進塁を許さない。
最終的にチームは6対2で勝利し、藤平投手は5回を投げて被安打2、奪三振7、与四球1、無失点。堂々たる投球でチームの連敗を食い止めるとともに、「三度目の正直」と呼ぶべきプロ初勝利を手にした。球数は98球と少々多かったものの、ピンチらしいピンチを招いたのも初回のみ。被安打と与四球の少なさ、奪三振率には目を見張るものがある。
球速自体は特筆して速い方ではないが、打者が藤平投手の直球に詰まらされる場面が散見された。その質のいい直球があるからこそ生きる変化球を効果的に配し、プロの打者を翻弄する姿には、これまで以上に大きな期待を抱かずにはいられない。
藤平投手は千葉県出身。馴染み深い場所でうれしいプロ初勝利を挙げたことになるが、これは今季の高卒ルーキーでは12球団一番乗り。結果的にチームの連敗も6でストップさせるなど、記憶と記録に残るかけがえのない最初の「1勝」となったと言えるだろう。
ヒーローインタビューでは、「(プロ初白星は)うれしいです」「自分が連敗を止めようという強い気持ちを持っていました」と、元気よくハキハキと質問に答え、ファンを魅了した藤平投手。チームの勝利が一番とはいえ、まず1勝を挙げたことで、藤平投手自身もようやく人心地ついたような部分はあるだろう。ここからが本当のスタート。相手チームに恐れられる頼もしい投手としてはもちろんのこと、チームメイトやファンに愛される魅力的な選手として、これからの野球人生を歩んでいってほしいものだ。
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