ティム・ミード副社長に独占インタビュー「オオタニという才能を大切にしていく」
エンゼルスのコミュニケーション担当副社長、ティム・ミード氏が独占インタビューに答え、MLBで1シーズンを過ごした大谷翔平投手の印象について明かした。ミード氏は、大谷がエンゼルスの球団史に残るインパクトを残した選手であると断言。プレーオフ進出こそならなかったものの、大谷の活躍があったことで「このシーズンはとても楽しかった」と大きく評価した。
――大谷が入団したことは、どのぐらいのインパクトがある出来事でしたか?
「82年にレジー・ジャクソンが来た時、ウォーリー・ジョイナーがロッド・カルーのポジションを獲った時。そして(先天性右手欠損のハンディキャップを抱えながら活躍した)ジム・アボットが来た時は、スポーツメディアだけじゃなく、ニュースのメディアが大騒ぎだった。スプリングトレーニング中、毎日メディアの対応をしていた。
ショウヘイが来た時も、メディアの注目の的だった。ショウヘイがBゲームで投げた時ですら、50人ものメディアがアリゾナに来た。ジミーが投げた試合を思い出したよ。オオタニもアボットも『インパクト』というより誰もが『注目』していた。アボットとオオタニを技術などで比べるつもりはないけど、どちらも野球ファンやメディアからの注目といった点では似ていると思う」
――大谷の活躍は、ベーブ・ルースの記録を改めて思い起こさせることになりました。
「ベーブが活躍した当時は、メディアやマーケティングもあまりなかったが、彼の名はいつまでも残っている。彼はレジェンドで、そんな人物と比べられるということは、すごくクールだと思う。100年後、人々はショウヘイ・オオタニのことを話しているかもしれない。でも、これからの彼の道のりは長いし、今あまりプレッシャーをかけたがる人はいないと思う。エンゼルスは、過剰にマーケティングすることなく、ショウヘイ・オオタニという才能を大切にしていくと思うよ」
――この1年を見て、大谷をどう評価しますか?
「彼は慌てず、自分自身と向き合ってきた。その姿勢がチームメイトにもたらす影響は大きいと思う」
――大谷のユニークさはどこにあると思いますか?
「精神的に強くて、マイク・トラウトみたいだ。自分の能力に自信を持っていて、自分であることに自信を持っている。人生を楽しんでいるしね。キャッチャーや審判への態度でもわかるけど、彼は野球をとてもリスペクトしている。何かを恐れることはないんだろうね」
「ショウヘイはMVP争いに食い込むような選手になる」
――日本人選手では、2010年に松井秀喜選手がエンゼルスでプレーしました。
「ショウヘイはメジャーでのキャリアの始まり、マツイはキャリアの終盤だったけど、マツイは僕に品位というものについて教えてくれたし、メディアや他の人を尊敬していて、チームメートに愛されていた。よく集中していたし、自分が置かれた状況を楽しんでいた。メディアの対応にも慣れていたね。ショウヘイも、じきにメディアに慣れるだろう」
――大谷が今年残した数字について、どう評価しますか?
「ショウヘイが今の調子で毎日出られるのなら、MVP争いに食い込むような選手になるだろうね。もちろん来年はコンスタントに試合に出てもっと打つだろうし、とても楽しみだよ。毎晩万全の準備をして試合に臨むし、才能がある。その才能を最大限発揮していると思うよ」
――大谷にどのような選手になってほしいと思いますか?
「彼はマイク・トラウトと仲も良いし、とてもいい関係だ。でも、彼のいいところは、マイク・トラウトに対抗しようとしているんじゃなくて、自分にできることをやろうとしている。数字とにらめっこするのではなく、自分自身と向き合っている。彼の可能性は無限大だし、ベストなパフォーマンスが出るのはまだ先だろう」
――トリー・ハンターが「自分がトラウトに、そしてトラウトがオオタニにメジャーのいろいろなことを教えているのと同じように、いずれオオタニも誰かに(メジャーのことについて)教えていくだろう」と言っていました。
「彼が英語に不自由することはなくなっていくだろうし、そうなれば伝えられることも増えていくと思う。野球は世界共通語だと思うし、態度だけで人に伝わることもあるだろう。ショウヘイは自分の持っているものを、彼に続く誰かにきっと受け継いでいくと思う」
――今年1シーズン、あなたは「大谷翔平」をエンジョイしましたか?
「100%楽しんだよ。彼は素晴らしい活躍を見せたし、みんなもとても楽しんでいた。苦労した期間もあったけど、アルバート(プホルス)やマイク(トラウト)も苦悩する時はあった。それは自然なことなんだ。彼がいたことで、このシーズンはとても楽しかった。自己中心的でうぬぼれた、傲慢な人間であるわけでもない。素晴らしい野球選手であると同時に、彼は1人の人間として素晴らしい青年だしね。それが彼との付き合いをよりよいものにしているよ」
(盆子原浩二 / Koji Bonkobara)
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