9月半ばの9連戦前日には「今季初めて不安に襲われた」
10年の時を経て、埼玉西武が悲願のリーグ優勝を手に入れた。優勝へのマジックを1としていた埼玉西武は30日、敵地・札幌ドームでの北海道日本ハム戦に敗れたものの、この試合中に2位の福岡ソフトバンクが千葉ロッテに敗戦。前回優勝した2008年と同じ“負けてV”となったが、10年ぶり22度目のパ・リーグの頂点に立った。
歓喜の胴上げは8回。信頼を置くナインの手で宙を舞った辻発彦監督は祝勝会前に行われた優勝会見で率直な胸の内を明かした。就任2年目で初めて胴上げされた心境を「ホッとしてます。喜びと胴上げしてくれる選手たちの気持ちが伝わってきたような、ここまでみんな頑張ってくれて嬉しい思いが全てです」と、まずは安堵と喜びを口にした。
就任2年目の今季は開幕から絶好のスタートを切った。開幕8連勝で首位を走ると、結局そのまま首位を一度も明け渡すことなくゴールテープを切る“完全V”だった。「優勝経験のない人がほとんどなんで2位から飛躍するには優勝するしかない、と。開幕して8連勝というスタートを切って、そこから1度も落ちることなく、トップを走り抜けた選手たちを誇りに思います」と白星を積み重ねてきた選手たちを褒め称えた。
首位をひた走って来た今季、指揮官が唯一、不安に襲われた時があったという。2位福岡ソフトバンクと3試合、2位北海道日本ハムと2試合が組み込まれていた、9月14日からの9連戦の前日だった。「福岡ソフトバンクさん、北海道日本ハムさんと、9連戦に入る前日にですね、怖いというか、連戦がどういう結果になるのか、どうやったら乗り切れるんだろうかと、そういう不安に初めて今シーズン襲われました」という。
キャンプ初日に父が死去、キャンプインを優先「野球大好きな親父でしたし」
ただ、指揮官の不安をよそに、選手たちは勝ち続けた。9月14日の本拠地での東北楽天戦で勝利し9連戦初戦を飾ると、天王山となった15日からの本拠地福岡ソフトバンク戦で3連勝。マジック11を点灯させた。さらに連勝街道は止まらない。シーズン終盤に怒涛の快進撃を見せて12連勝。足踏みのないまま、28日の福岡ソフトバンク戦に勝利してマジックを1とした。
指揮官が優勝を確信したのも、このマジックが1となってからだった。「連勝連勝と素晴らしいゲームやってくれて、マジック1になってようやく優勝できる気持ちになりました」。20年ぶりの本拠地Vを目指した29日の同戦には敗れたものの、1試合の足踏みで頂点に上り詰めた。
就任して2年目の辻監督。監督就任1年目の春季キャンプ初日に父を亡くした。キャンプイン直前に容態が悪化したものの、前日に病床の父を見舞うとチームのキャンプインを優先させた。この日の優勝会見で「ちょうどキャンプインの時ですね。前日にちゃんとお別れしてきましたし、野球大好きな親父でしたし、おまえ野球やってろと必ず言っていると思いましたので。監督としてスタートの日でしたから、選手と迎えたいということがありました。それからずっと両親のことは、野球楽しんでということで、国旗掲揚の時に必ず思ってます。今日喜んでくれていると思います」。亡き両親にも捧げる優勝になった。
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