現在リーグ3位に付けている埼玉西武。その先発陣の中で、エース・菊池投手に次ぐ勝ち星を挙げているのがウルフ投手だ。日本球界8年目を迎える36歳のベテランが、その右腕に蓄積された数多くの経験を生かしてチームを支えている。

2010年から2013年までは北海道日本ハム、2014年から2015年まで福岡ソフトバンクに在籍していたウルフ投手は、昨季、5人の外国人投手に白星が1つもないという危機的状況の中、6人目の外国人投手として埼玉西武に途中入団した。すると、先発した4試合全てで白星を挙げる活躍。苦しいチーム状況の中、淡々と勝利していくその救世主のような姿は、多くのファンに来季への大きな希望を抱かせた。

迎えた今季は、背負った期待に応える抜群の投球を披露している。4月2日の初先発から、いきなり4連勝を飾るなど絶好調。以降も全て日曜日の先発マウンドに上がり、8月6日の時点ですでに9勝を挙げた。自身最多の12勝を更新する可能性も充分に残っている。完投タイプではないものの、必ず試合を作って着実に勝利につなげる姿から、「サンデーウルフ」の異名で呼ばれることも多い。マウンドでは常に冷静で、表情を変えることはほとんどない。

そんなウルフ投手の最大の武器は、投球割合の半数以上を占めるツーシームである。打者の手元で小さく動く速球を軸に内野ゴロの山を築き、テンポの良い投球スタイルを確立している。四球も少なく、野手が集中して後ろを守ることができるのもウルフ投手の持ち味だ。リーグ屈指の援護率を誇っていることからも、ウルフ投手のテンポの良さが打線に与える好影響が窺える。

それが最も強く表れたのが4月30日の千葉ロッテ戦だった。ウルフ投手はこの試合も打たせて取る投球が冴え渡り、7回を僅か69球、無四死球、無失点に抑える好投を披露。試合はこの好投もあって2対1で埼玉西武が勝利したが、驚くべきはその試合時間である。13時1分開始の試合は、2時間10分という驚異的な早さで決着した。

着実に1つ1つのアウトを積み重ねていく投球は、菊池投手のように剛速球で三振を奪う投球に比べると迫力に欠けてしまうかもしれない。しかし、シーズンを通して大きく崩れることなく、常に一定の投球内容を維持し続けることが容易でないのは明らかである。

また、上位チームを猛追しているチーム状況を考えると、勝利への道筋が計算できる投手の存在は非常に大きい。実際、今週から楽天と福岡ソフトバンクとの連戦が続くことを受けてローテーションが再編され、ここまで日曜日にのみ登板していたウルフ投手が、8月15日の楽天戦に先発することが決まった。先発陣に疲れが出始め、次第に苦しくなってくるシーズン終盤。経験豊富なベテラン右腕が、昨年同様にチームの救世主となれるか。