福岡ソフトバンクのバンデンハーク投手が、8月9日の千葉ロッテ戦で来日初の2桁勝利を達成した。「負けない男」とあだ名され、今や福岡ソフトバンクの先発陣の柱の1人として厚い信頼を寄せられているバンデンハーク投手だが、来日直後は一軍登板すらもままならない苦しい時期を経験していた。
2014年、韓国プロ野球で最優秀防御率と最多奪三振の2冠に輝き、翌年福岡ソフトバンクに入団したバンデンハーク投手。しかし当時のチームには、日本球界での実績充分なスタンリッジ投手、サファテ投手、李大浩選手に加えて、この年連続試合ホールドの日本タイ記録をマークするバリオス投手が在籍しており、一軍の外国人枠を埋めていた。バンデンハーク投手自身が負傷で出遅れアピールの機会を失っていたこともあり、ファームで好投を続けながらもなかなか昇格の声がかからない時期が続いた。
初昇格を果たしたのは交流戦期間中の6月14日。広島を相手に6回を投げて自責点1点に抑え、見事に来日初勝利を飾った。その後もローテーションの軸の1人として快投を続け、15試合に登板して9勝無敗、防御率2.52という数字を残す。チームのリーグ優勝に大きく貢献するとともに、日本シリーズでも第2戦に登板して8回無失点と完璧な投球を披露し、来日1年目にして日本一の歓喜を味わった。
先発陣の柱の1人として期待された翌2016年も開幕から無傷で勝利を重ね、5月10日の千葉ロッテ戦において、日本プロ野球新記録となるデビューからの14連勝を達成。球史にその名を刻んだ。
しかし次の登板となった5月17日の北海道日本ハム戦で来日初黒星を喫すると、6月からは体調不良と首の負傷で3カ月以上にわたって戦線を離脱してしまう。9月中盤に復帰してからの成績も3試合で1勝2敗と振るわず、シーズン全体では13試合7勝3敗、111回2/3、防御率3.84と、前年の活躍に比較するとやや物足りない成績に終わってしまった。
真価が問われる2017年のシーズン前には第4回「ワールド・ベースボール・クラシック」でオランダ代表のエースとして3試合に先発し、母国のベスト4入りに貢献したバンデンハーク投手。だが、開幕直前に右手にできたマメの影響を受け、開幕カードでの登板回避を余儀なくされてしまう。
4月頭に一軍に合流して以降はここまで離脱することなくローテーションを守り抜き、18試合で10勝5敗、防御率3.06という好成績を記録。安定感のある投球内容を披露し、先発陣に故障者が続出していたチームを、東浜投手とともに支えている。
自身初の10勝を達成した先述の千葉ロッテ戦において投げ合ったのは、奇しくも来日1年目に福岡ソフトバンクの同僚として一軍の先発枠を争ったスタンリッジ投手だった。バンデンハーク投手は7回2失点(自責点1)、スタンリッジ投手は6回3失点とお互いに試合を作ったが、かつてのチームメイトの投げ合いはバンデンハーク投手に軍配が上がった。
過去2年間はフルシーズン一軍に帯同することができず、高い能力を持ちながら2桁勝利に手が届いていなかったバンデンハーク投手。だが、今季はチームが残り37試合を残した段階ですでに10勝をマークしている。この数字はリーグ全体でも2位タイとなる好成績であり、韓国時代を含めて自身初となる最多勝のタイトルも視野に入ってきている。
幸いほぼ怪我なく過ごせている今季、バンデンハーク投手が最終的に記録する数字はどのようなものになるのだろうか。シーズンも佳境を迎えて、優勝争いは苛烈を極める。野球がサッカーほどメジャーなスポーツではないオランダ生まれのバンデンハーク投手にとって、キャリアハイとなるだろうシーズンの行方も、終盤戦における楽しみな要素の1つだ。
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