当初から二刀流の才能を信じたソーシア監督「疑いはなかった」
エンゼルスの大谷翔平投手は29日(日本時間30日)、本拠地アスレチックス戦に「4番・DH」でスタメン出場し、4打数無安打に終わった。ここまで打者として103試合に出場し、打率.286、22本塁打、61打点。投手としては右肘靭帯損傷で離脱したものの、開幕直後は圧巻の投球を見せ、10試合登板で4勝2敗、防御率3.31、51回2/3で63奪三振という数字を残した。
今季は30日(同10月1日)のアスレチックス戦を残すのみ。今季限りで契約が切れ、退団する可能性もあるエンゼルスのマイク・ソーシア監督は試合前の記者会見で大谷の1年目について大いに語り、契約するまでの「リクルート」が「とても楽しかった」と話している。
大谷について、当初からその能力を信じていたという指揮官。二刀流について懐疑的であったかと地元メディアから問われると、「彼が投球しているビデオを見て、そのようには思わなかった」と明言した。
「(2014年の)日米野球でメジャーリーグ最高の打者相手に投げているのも見た。彼が投げられることに疑いはない。彼のスイング、バットスピードを見れば、彼が打つこともできるとわかる。たぶん我々が望んでいたよりも投げた回数は少ないが、間違いなく彼は素晴らしいものを見せた。それは打席でも明らかだ」
エンゼルスはこの日、負け越しが決まり、プレーオフ進出もならなかった。だが、大谷の活躍を見ることは、指揮官にとっても喜びの1つだったようだ。大谷の「成長」についての問いには「身長は同じだと思う。確認しなければいけないが」とジョークを飛ばした後に「選手は経験を積めば良くなる。彼はとても入念に準備する。投球でも打撃でも準備している。彼が日本でもそうしていたことを知っている。彼はメジャーリーグ、球場、審判、ストライクゾーンについて知るにつれ、成長している」と指摘。大谷の姿勢、向上心こそが己を成長させていると高く評価した。
ベーブ・ルース以来、100年ぶりの二刀流選手としてメジャーに衝撃を与えた大谷。開幕直後の活躍に対しては、MLB公式サイトも「真の二刀流」と表現したほど。もっとも、ストライキ直後の1995年シーズンでルーキーとして活躍し、米国での野球人気回復にも貢献した野茂英雄氏との比較は難しいという。
「1994年とは少し状況が違う。94年は球界が停止した。ヒデオ・ノモがやって来て活躍したことは、球界にとって素晴らしいことだった。野球は美しいスポーツなんだ。野球には多くの層がある。ショウヘイは素晴らしいことをしている。彼は球界というよりも球団への貢献度が大きい。彼は素晴らしいシーズンを送っているが、ヒデオ・ノモが95年にしたことと、ショウヘイが今年したことは比較できない」
ソーシア監督が振り返る昨オフの争奪戦「彼をリクルートするプロセスは楽しかった」
それでも、メジャーリーグで投打ともにトップレベルのプレーを見せるというのは、誰にでもできることではない。大谷がやってきたことがいかにスペシャルか、ソーシア監督は強調している。
「ショウヘイがしていることは簡単ではない。誰にでもできることではない。彼がしたことは並外れているんだ。並外れた才能を持っている。高いレベルで投球も打撃もできる選手が現れたら、もちろん機会を得るだろう。ショウヘイは特別な才能を持っていて、ただ機会があったからというわけではない。打つよりも投げる方が得意な選手もいるし、投げるより打つ方が得意な選手もいる。とてもとても高いレベルで両方こなさなければならない」
すべては、昨オフにエンゼルスが大谷を獲得したことから始まった。名門ヤンキースが“書類選考”で脱落するなど、波乱の中でスタートした争奪戦で、大谷のハートを掴んだ。当初“伏兵”と見られていたエンゼルスは、魅力的なプレー環境、条件があることを提示し、実際に日本ハムと同じような起用法で大谷をメジャーでも二刀流として起用した。もし、大谷が他の球団に移籍していたら、今季のようなプレーは見られなかったかもしれない。ソーシア監督は、この争奪戦の過程も「楽しかった」と振り返る。
「彼をリクルートするプロセスは楽しかったよ。ショウヘイが我々と契約するかどうか、我々の球団を理解してもらうために彼と話し合ったことは、とても楽しかった。ただこのプロセスだけでも楽しかったことを覚えている。今年では、スプリングトレーニングにおける彼の打席での修正力、シーズン序盤での投球も素晴らしかった」
2010年に松井秀喜氏が加入したときも、多くの日本メディアを相手にしたソーシア監督。今季は日本語のマスターに意欲を見せ、言葉も多く覚えた。
「今年は日本語を聞いていて、いくつか単語を覚えたよ。6か月で流暢になれるほど頭は良くないけどね」
去就はまだ明らかになっていないが、経験豊富なベテラン指揮官にとっても、印象的なシーズンとなったようだ。
(盆子原浩二 / Koji Bonkobara)
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