6月11日の横浜DeNA戦ではヘッドスライディングで本塁に突入して決勝点をもぎ取り、8月12日の千葉ロッテ戦では涌井投手から先制パンチを繰り出すなど、埼玉西武の金子侑選手が躍動している。開幕こそ怪我で出遅れたが、復帰後はチームに欠かせない1番または9番打者として、走・攻・守すべてでチームに貢献してきた。
子どもの頃から足が速く、特技は元・西武の秋山幸二氏を彷彿とさせる「バック転とバック宙」。立命館宇治高校3年時の体育祭ではリレーのアンカーを任され、ぶっちぎりで後続を引き離すと、バック転をしながらゴールテープを切った。進学した立命館大学では、遊撃として数々の賞を受賞。2012年、ドラフト3位で埼玉西武に入団したときは、渡米した中島選手(現・オリックス)の後釜となることが期待されていた。
現在は左打ちが主だが、スイッチヒッターとしても結果を残している。ルーキーイヤーの2013年4月3日の福岡ソフトバンク戦では、左打席で先制打、右打席でプロ1号3ランを放った。だが、チーム屈指の俊足を武器に一軍で90試合を超える出場機会を得ながらも、打撃と守備に課題を残し、なかなかレギュラー定着は果たせなかった。
昨季は打撃面で成長を見せたことに加えて、シーズン中盤からは外野手起用が主となったことで俊足による守備範囲の広さも生きるようになり、ついにレギュラーの座をその手中に収める。シーズン終盤は「1番・右翼」に定着し、盗塁を量産。最終的に53盗塁を記録して、オリックスの糸井選手(現・阪神)と並んで自身初のタイトルとなる盗塁王を獲得。飛躍のシーズンとなった。
前年以上の活躍を期待されて迎えた今季だったが、右すねに痛みを抱えたことで開幕直前に一軍から離脱。公式戦初出場は交流戦期間中の5月30日までずれ込んでしまった。
しかし、復帰後の金子侑選手の活躍はまさに獅子奮迅だった。一軍合流直後は、昨季と同じ「1番・右翼」で出場したが、離脱中に上位に座っていた秋山選手、源田選手、浅村選手が揃って好調だったこともあり、交流戦明けからは9番に回ることに。その打順で昨年以上に好調な打棒を披露し、「恐怖の9番打者」として存在感を見せ付ける。
外野手の枠がなかなか埋まらず、同時に下位打線が弱点となっていたチームにとって、金子侑選手の復帰はまさに最後のピースが埋まる僥倖だった。チームは7月21日から8月4日にかけて怒涛の13連勝を果たしたが、7月の月間打率.436を誇ったその打棒が、球団記録に迫る大型連勝において大きな役割を果たしたことには、疑問を差し挟む余地がない。
今季ここまでの成績は、53試合179打数56安打26打点4本塁打、打率.313。その好調な打棒と自慢の俊足によって、時にはリードオフマンとして、時には上位打線へのつなぎ役としての役割を全うしている。
アマチュア時代の金子侑選手がバック転やバック宙を独学で習得し、スイッチヒッターになることを選んだのは、「かっこいいから」だという。強力な埼玉西武打線にアクセントを加える179センチ、70キロの「絵になる男」が、自身がプレーの根幹に置く「かっこよさ」を追い求めながら、レギュラー定着2年目のシーズンを駆け抜ける。
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