“千葉の誇り”福浦和也選手の2000安打、その時スタンドの人々は? 応援団長には複雑な思いも…

パ・リーグ インサイト

2018.9.26(水) 11:00

千葉ロッテマリーンズ ※球団提供
千葉ロッテマリーンズ ※球団提供

千葉ロッテの福浦選手が22日にZOZOマリンスタジアムで行われた埼玉西武戦で史上52人目、球団生え抜きでは有藤通世氏に次ぐ快挙達成となった。

2対2の同点で迎えた第4打席は8回裏。マウンドには奇しくも同じ千葉県出身の小川投手。先頭、福浦選手が打席へ向かう。カウント2-2からの7球目を打ち返すと、打球はライト線へ飛ぶ二塁打。その瞬間、千葉ロッテファンはもちろん、左翼席に陣取る埼玉西武ファンも交えた360度からの「ふっくうら!」コールにZOZOマリンスタジアムは包まれた。

もつ煮の曽根会長は「勝ちたかった」

この光景を多くの人々が万感の思いで見守っていた。船橋市在住の千葉ロッテファン歴10年の男性は福浦選手の印象に残る安打について「これ、という印象的なものはないですが、立ったまま二塁ベースにたどり着く二塁打、スタンディングダブルが印象的です」と語っていたが、その通りの打球、そして福浦選手の立ち姿となった。

同じ思いは都内在住のファン歴20年の男性も持っており「らしい二塁打で出塁し、勝ち越しにつながってくれた。それだけに本当に勝ちたかったです。もちろん全盛期のライナー性とは言いづらいですが、子供のころから憧れ続けた“福浦和也”で、そのかっこよさに涙を禁じ得ませんでした」と語る。

達成の瞬間、泣き出すファンの姿が老若男女問わず見られたが、“らしい”一打が流させた涙だったのだろう。

25年間、活躍を続ける福浦選手を陰から見守ってきた人もいる。ZOZOマリンスタジアムのバックスクリーン裏で約30年、もつ煮を売り続ける曽根会長こと曽根太一さんは「ただ一言、おめでとう! 本当だったら最後は勝ってほしかったがこればかりはしょうがない」と、逆転負けで福浦選手の快挙を飾れなかったことを悔しがっていた。

“中距離打者”らしい福浦選手の2000本目

千葉ロッテに欠かせない「26人目の選手」を盛り上げる応援団は、福浦選手の快挙を複雑な思いで見つめていた。

応援団長の高橋慎さんは「個人的にも大好きな選手なので、この場に立ち会えてよかったです。ただ、この二塁打が最後の安打になってしまうのでは……という思いもありました」と吐露。試合後に「来年もやるつもりでいます」とコメントしたことには、多くのファンの心境と同じく安堵の気持ちがあった。

2000本まで残り38本で迎えた今季は5年ぶりの開幕スタメンを果たすなど、福浦選手は4月から快調に安打を積み重ねてきた。しかし、5月には不調に陥り一軍登録を外れたこともあり、高橋団長はスタンドからその苦悩を感じていた。

「今年は1打席1打席、フォームが違って見えました。(42歳という)福浦さんの年齢を考えれば、体調が厳しいというのは思っていましたが、しんどそうな印象で、全盛期とは違っていましたね。ただ、(9月9日に放った)埼玉西武戦のホームランは、2010年のCSで放ったホームランと同じような打球で、とても印象に残っています」

これまで放った2000本の安打のうち、二塁打が388本、三塁打が19本、本塁打は118本とまさに“中距離打者”という表現が当てはまる福浦選手。

前述した都内在住の男性ファンも「流れるようなフォームから、右中間を破る美しい打球の軌跡だけが、目に焼き付いています」と語るように、福浦選手の二塁打を印象に挙げる人も多いが、高橋団長は118本と決して多くないホームランを印象的な一打に挙げる。

「福浦選手はホームランが多くないのですが、そっちが印象に残っています。2010年、横浜スタジアムの交流戦で打った代打満塁ホームランとCSで打った決勝ホームランが印象的です」

どちらも福浦選手特有の流れるようなフォームからバットでボールを巻き込むようにしてスイングし、ライトポール際への放物線を描いた打球。右中間への鋭いライナー、芸術的なセンター返しや流し打ちで数多くのヒットを打ってきた福浦選手だが、ホームランでもファンにインパクトを与えているようだ。

試合後の記者会見で「もっと若手に教えて、自分もしっかりプレーして。もっとみんなを良くしたい」と今後への意欲を語った福浦選手。高橋団長も「今までの野球人生で培ったものを教えて、若手は刺激を受けてどんどん良い選手になってほしい」と福浦選手の存在による千葉ロッテの若手たちの成長を願っている。

「井口監督を胴上げしたい。ZOZOマリンスタジアムで胴上げをしたい」という夢を口にした福浦選手。それはZOZOマリンスタジアムに集う全ての人々に共通する思いだろう。同じ夢を誓う福浦選手とスタンドの人々。これからも海風を受けた戦いは続いていく。

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