パ・リーグ首位を走る埼玉西武は25日、東北楽天を下し10年ぶり優勝へのマジックを「5」とし、27日からは福岡ソフトバンクとの最終決戦を迎える。
ここまで開幕から一度も首位を譲らなかった若獅子たちにとって、最後の試練となる戦いを控えた9月某日、パーソル パ・リーグTVとパ・リーグインサイトの編集部へ、ある男からメッセージが届いた。
男の名は「クリス・カーター」。2012年に埼玉西武へ入団すると、前半は膝の故障に苦しみながらも、後半は勝負強い打棒でチームのAクラス入りに貢献した。
同年オフに戦力外通告を受け一度は現役引退を決意するが、翌年BCリーグ・石川ミリオンスターズを経て埼玉西武に再入団。世界的な名門スタンフォード大を飛び級で卒業した秀才でありながら、情熱あふれるプレーで選手、ファンの人気を博した男だ。
カーター氏は13年オフに埼玉西武を退団すると、再び現役を引退した。その後は持ち前の頭脳を活かしビジネスの世界へ進むと、米国・アトランタを拠点にスポーツで奨学金を得て活躍を目指す若者たちを支援。太平洋を渡って活躍した自分のように、グローバルに活躍できるアスリートの育成に携わる。
彼は栗山巧、中村剛也らを筆頭に現在の埼玉西武を支える多くの選手とプレーしたが、当時のチームメイトには退団から5年経った今でも熱い思いを持っている。
「彼らはとても良いチームメートであり、とても素晴らしいリーダーです。一緒にプレーできたことはとても光栄で、ライオンズでプレーできたことは、僕の野球人生の中でも素晴らしいハイライトです。彼らの歴史の一部になれたことはすごく誇りに思っています」と、かつての日々を思い出すように神妙に語るカーター氏。
「もちろん、今でもライオンズファンです」。こう語ると突然、おもむろにシャツを引きちぎり、左胸に「L」の文字が入った当時のライオンズのユニホームが!!
「Let's go Lions! ガンバッテ! 優勝を目指せ!」
左胸の「L」、背中に縫い付けられた背番号「2」を誇らしげに指さすカーター。約10年のプロ生活で、わずか1年あまりしか在籍しなかった太平洋の向こう側のチームに、ここまで愛をもっている助っ人がかつていただろうか?
埼玉西武在籍時には、負傷離脱した当時の主将・栗山に代わって熱いスピーチを試合前に行い、チームを鼓舞したカーター。再び優勝争いを繰り広げる今のチーム、そしてファンへ熱い言葉を贈った。
「ライオンズというチームはいつも闘い、決して屈せず、勝利のためにすべてを尽くします。チームは一人の選手以上の存在です。アメリカにいる一人の男(自分自身)も、ライオンズのために応援しています。ライオンズをいつも愛し、そして応援しています!」
誰もが羨むような「秀才」でありながらも「熱血漢」という対照的な表現が似合うこの男が、所沢からはるか離れた米国から送った若獅子たちへの檄。埼玉西武は、カーター氏の激励も追い風にし、最終決戦へ挑む。
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