NPBは再び「打高投低」時代に突入するのか? リーグ防御率は8年前の水準に

Full-Count 広尾晃

2018.9.20(木) 15:40

広島・丸佳浩と埼玉西武・山川穂高(左から)【写真:荒川祐史】
広島・丸佳浩と埼玉西武・山川穂高(左から)【写真:荒川祐史】

両リーグの防御率は前年を大きく上回る結果に

2018年のNPBは、投打のパワーバランスが大きく変動した年となった。ここまでは前年よりも大きく「打高投低」に振れている。これによって、投手は受難の時期を迎えているともいえる。

過去10年のセ・パ両リーグのリーグ打率、本塁打数、防御率の推移を見ていこう。(2018年は9月19日まで)

2009年 セ)率.256 本769 防3.55 パ)率.267 本765 防4.03
2010年 セ)率.267 本863 防4.13 パ)率.270 本742 防3.94
2011年 セ)率.242 本485 防3.06 パ)率.251 本454 防2.95
2012年 セ)率.244 本454 防2.86 パ)率.252 本427 防3.03
2013年 セ)率.254 本714 防3.72 パ)率.262 本597 防3.57
2014年 セ)率.264 本738 防3.89 パ)率.257 本623 防3.60
2015年 セ)率.249 本571 防3.24 パ)率.256 本647 防3.59
2016年 セ)率.253 本713 防3.69 パ)率.259 本628 防3.65
2017年 セ)率.251 本718 防3.67 パ)率.250 本782 防3.66
2018年 セ)率.261 本766 防4.19 パ)率.255 本772 防3.94

2009年、NPBの加藤良三コミッショナー(当時)は、WBCなど国際大会へ向けて、NPBの公式球をMLBの公式球と同レベルの反発係数のボールに統一すべき、という見解を発表。2010年には、翌年から「統一球」が導入されることが決まった。

統一球元年の2011年、NPBの野球は「投高打低」へと激変した。両リーグともに本塁打数は40%前後減少し、防御率は1ポイント以上上昇した。そんな中で埼玉西武の中村剛也は48本塁打で本塁打王となったが、これは千葉ロッテのチーム本塁打数46本よりも多く、リーグ総本塁打数の1割を超えていた。

この傾向は2012年も続いたが、2013年に入ってボールが“突如"飛ぶようになり、両リーグともに「打高投低」に大きく振り戻した。

これは、NPBが前年オフに公式球の仕様を変更していたのが原因だったが、NPB側はこの事実を公表せず、加藤コミッショナーも事実を把握していなかったと発表したため問題となった。

また、2011、12年の使用球は、規定の反発係数に達していなかったことも明らかになった。この年、東京ヤクルトのバレンティンはシーズン60本塁打を打ち、NPB記録を更新している。

埼玉西武・山川はシーズン50本塁打も射程圏内

2013年以降、投打のバランスは小幅に上下しながら推移していたが、今年になってさらに「打高投低」が進んだ。防御率は両リーグともに4点前後となり、統一球導入前の2010年の水準に戻った。

まだ各チームは1割前後の試合数を残しているが、両リーグともに本塁打数800本超えが確実になっている。

そんな中で、埼玉西武の山川穂高は平成以降の日本人選手としては2人目となる「シーズン50本塁打」に迫ろうとしている。対照的に投手の失点は増えている。

昨年の防御率1位は、両リーグともに1点台(セ・巨人・菅野智之1.59、パ・埼玉西武・菊池雄星1.97)だったが、今季の防御率はセの菅野の2.48、パの東北楽天、岸孝之の2.63が1位だ。

投打のバランスが「打高」に振れた原因は明らかになっていない。単純に打者のレベルが上がっていると捉えても不思議ではない。「打高投低」の傾向は、来年以降も継続するのか、一時的な現象なのか、今後の経緯を見守りたい。

記事提供:Full-Count

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