「全く仕事ができていない。納得のいく結果を残せていない。全然ダメなシーズンですね」。
千葉ロッテの加藤翔平選手は自身の現状をこう語る。昨季、自己最高の5本塁打、27打点、7盗塁、打率.266の成績を残したことで、オフに背番号が「65」から「10」に変更。井口新監督のもと、大きな期待をかけられてプロ6年目を迎えた。しかしここまで結果を残せず、苦しいシーズンを送っている。
大きな期待をかけられて「10」を背負うも…
今季も開幕前は打撃好調だった。オープン戦ではベテランとの兼ね合いで一時期ファーム調整を余儀なくされたものの、打率.474(19-9)と打ちまくり、「那覇の練習試合から、良い部分が出ている」と手応えを口にした。一方で、「悪くなったときに早く修正するのが課題」と、状態を落としたときの対処法も冷静に模索していた。
加藤選手は開幕スタメンに名を連ね、3月30日、早速今季初安打。翌31日も安打を放ち、まずまずのスタートを切る。しかしその後が続かず、4月7日に登録抹消。悔しさを晴らすように、ファームでは打率.344(58-20)と好成績を残し、5月8日に再昇格を果たした。
再昇格直後、12日の埼玉西武戦で4安打を放つが、継続的にアピールすることができず、6月25日に再びファームへ。そこではやはり打率.429(28-12)と格の違いを見せ付け、7月8日に再び一軍の舞台に戻る。そこから現在まで37試合に出場しているが、そのうちスタメンでの出場は11試合のみで、代走や守備固めでの試合出場がほとんどだ。
「自分の中で迷ってしまった部分があるので、去年やってきたこと、毎日続けてきたこと、色んな引き出しを開けても全部空っぽだったというか、何をやってもマッチしてくるものが全然なかった。例えばそれがマッチしたとしても、短期間で終わるという繰り返しだった。まだ残り試合はありますが、ここまではひどいもんだなという感じです」。
持ち味の俊足で盗塁失敗「0」。代走、守備固めで存在感を示す
悔しい日々を過ごす加藤選手ではあるが、武器のひとつである足でアピールしている。
7月24日の福岡ソフトバンク戦では、7対7の延長11回1死1,3塁の場面で、一塁走者・鈴木大地選手の代走で出場し、初球で二盗。平沢大河選手が右前適時打を放つと、前進守備にもかかわらず、三塁走者に続いて一気にヘッドスライディングでホームインした。
8月3日の東北楽天戦では、1対1の10回1死1塁、岡大海選手が放ったゴロを東北楽天の遊撃・茂木栄五郎選手が弾いて、打球が転がる間に三塁を陥れた。「茂木が弾いた時点で外野が深かったので、あれは誰でもいける」と謙遜するが、結果的にはその足でチャンスを広げ、続く田村龍弘選手の犠飛で決勝のホームを踏んだ。
走塁だけでなく、盗塁もここまで7度試みて全て成功している。ただ「盗塁は失敗0ですけど、7個しかない中での0。もっと個数を伸ばして、『走れるんだぞ!』というのを自分の中で作っていかないといけないと思う」と、自身の中では納得がいっていないようだ。
少年時代に観た「一番尊敬している」あの選手のホームラン
レギュラー獲得へ向けて日々奮闘を続ける加藤選手は、通算2000安打達成目前の福浦和也選手からも多くのことを学んでいるという。
「毎日あの年齢で早く来て、夜遅くまで練習する。本当に妥協がない人。試合に出ていないときでも、色んな準備をしっかりされている方。僕の中では一番尊敬しています」と、選手として、人として、15歳年上の先輩の背中がいいお手本となっている。
また加藤選手は「個人的なことですけど、プロ野球の試合を観に行った小学3年生のときに福浦さんがホームランを打って、それを絵日記に書いた覚えがあります」と、微笑ましいエピソードを教えてくれた。
福浦選手の活躍を絵日記に書いた少年が大人になり、プロ野球の世界に飛び込んで6年が経つ。悩ましい毎日が続くが「現状は守備、走塁でもっと信頼を勝ち取れるようにならないといけない。ただまだレギュラーで出ることは諦めていない」と力を込める27歳。守備・代走で結果を残し、もう一度信頼を積み上げていく。
記事提供: