「東都の奪三振王」の本領発揮。東浜投手はその腕で福岡ソフトバンクを頂点に導けるか

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2017.7.29(土) 00:00

7月27日にパ・リーグトップタイとなる10勝を挙げるなど、福岡ソフトバンク先発陣の柱として奮闘する東浜投手。開幕直後から離脱者が相次ぐ中、その穴を埋めて余りある活躍を続けている。プロ入りしてからの日々は決して順風満帆とは言えないものだったが、かつて東都を沸かせたスターが、数多の挫折を経てついに大きな飛躍を遂げようとしている。

沖縄尚学高校時代には春の選抜で優勝投手となり、亜細亜大学でも東都大学リーグの通算完封記録を破るなど素晴らしい実績を残した東浜投手。当然のようにプロのスカウトにも熱視線を送られ、3球団からドラフト1位指名を受けた。くじ引きの結果福岡ソフトバンクに入団した東浜投手は、開幕前から新人王の有力候補と目され、入団会見では「1年目から先発ローテに入り、活躍して新人王を獲りたい」と抱負を語っていた。

しかし、東浜投手を待ち受けていたのは厳しいプロの洗礼だった。初登板となった4月11日、制球に苦しみ初回だけで31分、52球を費やす。結果的に満塁弾を浴びるなどして4回途中6失点(自責1)。次の登板でも結果を残すことができず、以降二軍での長い調整を余儀なくされる。9月後半に再び一軍に合流すると、1完封を含む3戦3勝を記録してその力の一端を示したが、5試合に登板して3勝1敗という成績は、開幕前に寄せられた高い期待に応えるものとは言い難かった。

翌年以降もなかなか一軍に定着することができず、2015年までの3年間で記録した勝利数は1年目の3勝が最多。2014年から2年連続で日本一に輝いた福岡ソフトバンクの強力な先発陣に割って入ることができず、本来持っている力からすれば物足りないと言わざるを得ない立場に甘んじる状況が続いた。

しかし、オフの期間に単独で海を渡り、筋力トレーニングに励むなどして迎えた2016年、ついに転機が訪れる。開幕こそ二軍スタートとなったが、初登板となった4月15日の楽天戦を勝利で飾ると先発ローテーションに加わり、6月16日まで5勝無敗の好成績をマーク。そのまま先発陣の一角として投げ抜き、自己最多を大きく更新する9勝を挙げる。防御率も3.00と安定感を見せ、主力の1人として存在感を示したシーズンとなった。

前年の活躍からさらなる好成績も期待された今季だったが、豪華な先発陣のハイレベルな争いによって、オープン戦の段階では先発の椅子すら確約されていない状態だった。だが、実力で競争を勝ち抜き開幕ローテーションの座を確保してみせると、開幕直後から先発陣に故障者が続出する中、まさに救世主のように快投を披露する。7月17日の時点ですでに自己ベストに並ぶ9勝をマークし、防御率も2.38と頼もしい投球を続けた。

そして迎えた7月27日。リーグ1位の楽天と2位の福岡ソフトバンクの首位攻防2連戦。初戦を落としていた福岡ソフトバンクは、先発マウンドに東浜投手を送り込む。対する楽天の先発は、試合前の時点で防御率リーグトップに君臨していた岸投手。

この大事な試合で東浜投手は、8回途中1失点の好投でリーグを代表する右腕に投げ勝ち、チームの負け越しを阻止した。自身初となる2桁勝利に乗せた記念すべき1勝は、今後のシーズン全体を占う上でも重要な白星となったと言えるだろう。

プロ入り前から高く評価されてきたそのポテンシャルが、ついに発揮されつつある今季の東浜投手。高校時代に優勝を経験し、大学ではリーグを代表するエースとして活躍した沖縄の快腕は、自身の一軍定着後初となる優勝に向けてチームを導けるか。入団会見で掲げた「新人王」という目標こそ叶わなかったが、同時に語っていた「小さな子どもたちに目標とされる選手になりたい」という夢が叶う日は、もうそう遠くはないだろう。

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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