北海道日本ハムの小さな大投手。身長167cm、谷元圭介投手が挑む夢舞台

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2017.7.14(金) 00:00

球界で3番目に身長の低い投手の1人として知られる北海道日本ハムの谷元投手は、今季も勝ちパターンの一角を担い、後ろの投手へバトンをつなぐ重要な役割を全うしている。6月23日の楽天戦で、NPB史上25人目となる通算100ホールドに到達すると、「マイナビオールスターゲーム2017」にも監督選抜で選出され、32歳にして初の球宴出場が決まった。

低い重心から最速150キロの速球を投げ込む谷元投手にとって、167センチという身長は他の投手にはない武器の一つでもある。しかし、プロで成功を収めるまでには、人一倍苦労も味わってきた。

三重県立稲生高校から中部大学に進学したが、身長を理由に社会人野球の強豪チームからのオファーはなく、最終的にバイタルネットに入社。通常の業務をこなしながら練習に励み、エースとしてチームをけん引した。北海道日本ハム入りが決まった際は、入団テストを受けた上でのドラフト7位指名で、決して高い評価を得てのプロ入りではなかった。

しかし、谷元投手は自らの投球で徐々にその評価と信頼を高めていく。ルーキーイヤーの2009年に、その年の新人では12球団一番乗りとなるプロ初勝利を挙げる。防御率は5点台ながら24試合に登板し、プロとしての確かな第一歩を踏み出した。

3年目となる2011年には、47試合に登板して防御率2.47という安定感を見せ、一軍戦力としての足場を固めた。以降はチーム状況に応じて先発やロングリリーフなど、与えられた役割を着実にこなし、首脳陣の期待に応えると、再び中継ぎに専念した2014年は52試合に登板して5勝1敗、12ホールド1セーブ、68回、防御率1.59。初めて2桁のホールドも記録し、勝ちパターンとしての地位を確かなものにした。

プロ8年目を迎えた2016年、幾度となくチームを救ってきた谷元投手が、シーズンの明暗を分ける局面でその真骨頂を見せる。僅差で首位を争う福岡ソフトバンクとの大一番となった9月21日、1点リードながら1死2,3塁と絶体絶命の状況で谷元投手に出番が巡ってくる。シーズンのすう勢を決めかねない局面で、谷元投手は好守にも助けられながら後続の2人を打ち取り、チームを首位に導く値千金のセーブを挙げた。

この勝利で勢い付いた北海道日本ハムはそのままリーグ優勝を成し遂げ、クライマックスシリーズも制覇して日本シリーズへと駒を進める。そして3勝2敗と王手をかけて迎えた日本シリーズ第6戦、6点リードで迎えた最終回のマウンドには、谷元投手の姿があった。かつて、ドラフト7位でプロの門をくぐった小柄な投手は、最大11.5ゲーム差をひっくり返して日本一に輝いたチームの胴上げ投手となった。

谷元投手は、今年の6月21日に国内FA権を取得。この権利は北海道日本ハムのブルペンに欠かせない存在として、長年チームを支えてきた証でもある。

アマチュア時代の低評価を跳ね除けて、日本野球最高峰の舞台で戦う谷元投手が、自身初の夢の球宴でどのような投球を見せてくれるのか。「まさか選ばれるとは思いませんでした。小さい頃からテレビで見ていたので本当に楽しみです」と語る小さな大投手が、苦難の末に辿り着いたマウンドで躍動する姿に期待したい。

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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