あまりうれしくなかった大阪桐蔭での春夏連覇、その理由は…
吉田正尚外野手や山本由伸投手など、若手の活躍が目立つオリックス・バファローズ。安定した投手陣の中でも2年目の右腕が存在感を見せている。リリーフとしてここまで31試合に登板、5ホールドを記録している2年目の澤田圭佑投手だ。
澤田は強豪・大阪桐蔭高を卒業後、立大を経て2016年のドラフト8位指名を受けて入団した。大阪桐蔭では藤浪晋太郎投手(現阪神)らとともに、3年時に春夏連覇を達成したことで知られているが、1、2年生の時は一度も甲子園に出場できず、強豪と言われることにプレッシャーがあったと振り返る。
「強豪だなんて言われたくないという雰囲気でした。大会前には新聞や雑誌で、優勝候補として学校名の横に◎が付いていたりするんですけど、『1回も甲子園に行ったことないくせに。こんなの嘘だろ』みたいなことも言われましたね。1回勝ちきるまでは大変でした。でも、その2年間があったから、3年の時に結果が出たのかもしれません」
3年の夏には、藤浪の2番手投手として背番号10を付け甲子園のマウンドに立った。3回戦の済々黌(熊本)戦では2失点完投勝利。バッティングでも本塁打を放つ活躍を見せたが、春夏連覇を達成した時は「あまりうれしいとは思わなかった」と、意外な答えが返ってきた。
「夏が終わった時は、うれしいというよりも『もうこのチームで甲子園で試合をすることはないんだ』と思いました。みんなもそんな感じでしたね。自分は試合もあんまり出てないし、基本ベンチにいただけなんで。今、当時のチームメートと会っても、あんまり甲子園の話になりませんね」
それでも、藤浪の2番手ということに悔しさはなかったという。当時は「絶対にプロに行きたい」とも思っていなかったそうだ。卒業後の進路についてもこだわりを持っておらず、立大に進学することを決めたのも「高校の監督に勧められたから」という理由だ。
リリーフにやりがい、目標は増井のパ記録45ホールド
立大に進学した澤田は、1年秋、2年秋にはリーグトップの5勝を挙げる活躍を見せる。当時について「普通にやっただけです」と話すが、4年間でリーグ通算22勝を挙げ、3年夏には侍ジャパン大学代表にも選出された。そして、プロ志望届を提出。ドラフト会議でオリックスから指名があったのは8巡目だったが、焦ることはなかったという。
「秋のリーグ戦がまだ1週残っていて、明治との優勝決定戦だったので、そのことを考えていました。やり切った4年間だったし『まぁいいや。呼ばれなかったら後から考えよう』と思っていました」
進路にも、プロ入りにもこだわりを持っていなかった澤田だが、今、自身が任されているリリーフというポジションにはやりがいを感じている。
「先発は長いイニングを投げないといけない。そうすると、試合の流れを読んで、力を抜いたり抜かなかったりが出てくる。でも、リリーフは目の前のバッターに集中できます。ノーアウト満塁で行こうが、2アウトランナーなしで行こうが、目の前のバッターを抑えればいい。その1イニングだけなら集中しやすいし、一気に入り込めます。自分には向いていると思います」
同期入団の山本などリリーフには好投手が揃うが、自身のアピールポイントを尋ねると「あんまり飛び抜けたところがないので、それを言われると一番困ります」と言葉を詰まらせた。それでも、明確な目標を持ってシーズンに挑んでいる。
「今シーズンは最低40~50試合投げて、ホールドが10いったらいいかなと思います。ゆくゆくは、増井さんのパ・リーグ記録、45ホールドを超えたいと思っています」
不振が続く藤浪に「結局はすごいですよ、あいつは」
今シーズンから加入した増井浩俊投手には、教えられることが多いと話す澤田だが、増井がホールドの記録を持っていることを知らず、恥ずかしい思いをしたというエピソードを教えてくれた。
「『増井さん、ホールドどのくらいいったんですか?』って聞いたら『え! 俺45ホールドで今、パ・リーグ記録だよ』って言われて。謝ったんですけど『みんな知らないからいいんだよ。いいよいいよ。昔のことだから』って言ってくれました」
「1年間ではなく、辞めるまでに45ホールドだったりして」と笑いながら冗談も言ってみせたが、自身が増井の記録を超えることができれば、チームは必ず優勝に近づくと考えている。
大阪桐蔭での春夏連覇についてあまり思い入れがないのは、今、プロでの大きな目標に必死で取り組んでいるからなのかもしれない。それでも、不振が続く盟友・藤浪について聞くと、はっきりとした口調で言った。
「自分に聞いても何も出てこないと、いつも言っています。本人は本人なりにやっている。周りを見ても、高卒1年目から10勝するピッチャーなんて、なかなかいないじゃないですか。結局はすごいですよ、あいつは」
高校時代はあくまで通過点。プロの世界で優勝の歓喜を味わうため、24歳の右腕は日本一のリリーフ投手を目指す。
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