7月の月間打率、驚異の.567。「夏男」こと楽天・銀次選手が後半戦の鍵を握る?

パ・リーグ インサイト 馬塲呉葉

2017.7.12(水) 00:00

今シーズンの前半戦最後の2連戦で、リーグ1位の楽天と2位の福岡ソフトバンクが熾烈な争いを繰り広げている。実は楽天は日程と天候の関係により、消化した試合の数が両リーグで最も少ない。これから日本列島は夏本番。容赦なく選手の体力を奪う季節が到来する中、スケジュールは過密になっていくが、喜ばしいことにこの「夏男」が元気だ。バットをくるくるさせる仕草でお馴染みの、銀次選手である。

銀次選手は、NHKの人気連続テレビドラマ「あまちゃん」の舞台にほど近い、岩手県普代村出身の29歳。2005年のドラフトで、地元球団の楽天から3位指名を受け、球団創設2年目の2006年に捕手としてプロ生活をスタートさせる。イースタンリーグでは突出した成績を叩き出していたが、なかなか昇格は叶わず、内野手への転向を経て2010年に初めて一軍試合出場を果たした。

2013年は、交流戦明けから3番・一塁手として定着し、自身初の打率3割(.317)に到達。「東北の球団に入って優勝するということが、僕の夢だった」との言葉通り、球団創設初のリーグ優勝、日本一に大きく貢献。日本シリーズでは優秀選手賞を受賞した。歓喜のあまり星野監督の胸を借りて涙を流す姿は、東北を愛する多くの人々に感動をもたらした。

翌2014年もオリックスの糸井選手(現・阪神)と激しい首位打者争いを繰り広げ、最終的にタイトルは逃したものの、リーグ2位の打率.327を記録。昨季は不振と怪我に悩まされて二軍落ちも経験したが、今季は開幕から安定して安打を積み重ね、内野守備で好守を連発。4年ぶりに首位を快走するチームを支える貴重な存在となっている。

今季ここまでの打撃成績は、74試合に出場し273打数89安打2本塁打31打点。7月11日現在、打率は福岡ソフトバンクの柳田選手に次ぐリーグ2位の.326をマークしている。

特に7月に入ってからの打撃の好調さが光り、すでに4度の猛打賞を記録。7月9日の埼玉西武戦では、4対4の同点で迎えた7回裏、1死1,3塁の好機で武隈投手の初球を中前へとはじき返す勝ち越しの適時打を放つ。また7月11日の福岡ソフトバンクとの首位攻防戦では、同点で迎えた9回表にサファテ投手の直球を捉え、息詰まる接戦に終止符を打つ値千金の勝ち越し打。この1勝により、チームは前半戦首位ターンが確定した。

まだ7月上旬とはいえ、銀次選手の月間打率は驚異の.567。昨季の7月と8月の月間打率も3割を超えている「夏男」らしい大暴れである。

楽天は、前半戦最後のカードの初戦をものにしたことで、首位のまま後半戦を迎えることが決まった。しかし、2位の福岡ソフトバンクとのゲーム差はわずかに0.5。オールスター期間を挟み、前半戦の疲労も癒えないうちに後半戦が始まる。選手たちが戦う環境はより過酷なものになっていくだろう。そんなとき、銀次選手のような「夏男」の存在はチームにとって非常に頼もしい。

このまま楽天は首位の座を守り抜き、2013年以来の頂に辿り着くことができるか。また、銀次選手自身も、2014年に逃した首位打者のタイトルを獲得し、再び故郷・東北に歓喜をもたらすことができるか。首位争いを左右するかもしれない「夏男」のバットに注目だ。

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パ・リーグ インサイト 馬塲呉葉

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