半年分を1か月で投げた稲尾、クローザーになりたてだった益田
今月、2人の投手がNPBの月間最多記録に挑戦している。オリックスの山田修義と、広島のフランスアだ。従来のこの記録は、1956年9月に西鉄の稲尾和久、2013年5月に千葉ロッテの益田直也が記録した「18試合」。8月30日時点で、フランスアはすでにこの記録に並び、山田はあと「1」に迫っている。
しかし稲尾和久と他の3人は投球内容が大きく異なっている。
〇1956年、稲尾 セーブ、ホールドは正規のものではなく、今の基準。
9月1日(高橋)2回 3安0本0四2三 自責点2
9月2日(高橋)5回 2安0本1四1三 自責点0・〇
9月4日(毎日)2回 3安0本1四1三 自責点1・●
9月5日(毎日)6回 3安0本2四5三 自責点1
9月8日(大映)3回2/3 3安0本1四2三 自責点3
9月9日(大映)3回 0安0本1四1三 自責点0・S
9月9日(大映)0回1/3 0安0本0四0三 自責点0・S
9月11日(阪急)5回2/3 3安0本4四4三 自責点1
9月12日(阪急)0回2/3 0安0本2四1三 自責点0・H
9月15日(毎日)6回1/3 7安0本2四5三 自責点1
9月17日(毎日)7回1/3 3安1本1四7三 自責点1・〇
9月18日(高橋)1回2/3 0安0本0四1三 自責点0・S
9月20日(高橋)9回 4安0本0四6三 自責点0・〇
9月22日(南海)2回 0安0本1四2三 自責点0・〇
9月23日(南海)6回 5安0本1四1三 自責点0・〇
9月24日(南海)5回2/3 3安0本0四6三 自責点2
9月27日(阪急)6回1/3 1安0本2四4三 自責点0・〇
9月30日(近鉄)2回 0安0本1四1三 自責点0
このときの稲尾は、6試合に先発し、完封勝利も1試合。18試合で74回2/3を投げ6勝1敗3セーブ1ホールド、防御率1.45を記録している。今なら先発投手が半年かけて記録するような数字だ。
〇2013年 益田
5月1日(オ)1回 0安0本0四1三 自責点0・S
5月2日(オ)1回 0安0本0四1三 自責点0
5月3日(オ)1回 2安0本0四1三 自責点0・S
5月5日(ソ)1回 0安0本0四2三 自責点0・S
5月6日(ソ)1回 0安0本0四1三 自責点0・S
5月8日(西)0回1/3 0安0本0四0三 自責点0・S
5月9日(西)1回 0安0本0四2三 自責点0・H
5月10日(楽)1回 4安0本1四0三 自責点3・●
5月12日(楽)1回 3安0本0四0三 自責点1・○
5月14日(巨)1回 2安0本0四2三 自責点0・S
5月15日(巨)0回 3安0本0四0三 自責点2・●
5月20日(広)0回2/3 1安0本0四1三 自責点0・S
5月22日(神)1回 1安0本0四1三 自責点0・H
5月25日(D)1回 0安0本0四0三 自責点0
5月26日(D)1回 2安0本1四1三 自責点1
5月28日(中)1回 0安0本0四0三 自責点0・S
5月29日(中)1回 1安0本1四0三 自責点0・S
5月31日(巨)1回 1安0本0四1三 自責点0・S
クローザーの益田は18試合で16回を投げ1勝2敗10セーブ、2ホールド、防御率は3.94だった。内容的には決して良かったわけではない。
月間で自責点わずか1のフランスア、1軍初昇格の山田
〇2018年 フランスア
8月1日(ヤ)1回 0安0本0四0三 自責点0
8月3日(D)1回 1安0本2四2三 自責点0・H
8月5日(D)1回1/3 0安0本0四2三 自責点0・H
8月7日(中)1回 0安0本0四3三 自責点0
8月8日(中)1回 0安0本1四1三 自責点0・H
8月9日(中)1回 0安0本0四0三 自責点0・H
8月11日(巨)0回2/3 0安0本1四0三 自責点0・H
8月14日(神)1回 0安0本0四1三 自責点0・H
8月15日(神)1回 1安0本0四2三 自責点0
8月16日(神)1回 2安0本1四0三 自責点0・●
8月18日(D)1回 0安0本1四1三 自責点0・H
8月19日(D)0回2/3 2安1本0四1三 自責点1
8月21日(ヤ)1回 0安0本3四0三 自責点0・H
8月22日(ヤ)1回 1安0本0四1三 自責点0・H
8月25日(中)1回 1安0本0四1三 自責点0
8月28日(巨)1回 1安0本0四2三 自責点0
8月29日(巨)1回 0安0本1四0三 自責点0・S
8月30日(巨)1回 1安0本1四2三 自責点0・H
フランスアはセットアッパー。18試合で0勝1敗1セーブ10ホールド。負けはついているが17回2/3で自責点1、防御率0.51という優秀な成績だ。
〇2018年 山田
8月3日(ソ)1回1/3 1安0本0四3三 自責点0
8月4日(ソ)0回1/3 0安0本0四0三 自責点0・H
8月5日(ソ)1回 0安0本0四2三 自責点0・H
8月7日(西)0回2/3 0安0本0四1三 自責点0
8月8日(西)0回2/3 0安0本0四1三 自責点0
8月9日(西)0回1/3 0安0本1四1三 自責点0・H
8月11日(ロ)1回2/3 0安0本0四1三 自責点0・○
8月12日(ロ)1回 0安0本0四1三 自責点0・H
8月14日(西)1回 1安0本0四3三 自責点0・H
8月15日(西)0回2/3 0安0本0四0三 自責点0・H
8月16日(西)0回1/3 0安0本1四0三 自責点0・H
8月18日(ソ)0回2/3 1安0本0四0三 自責点1
8月19日(ソ)0回1/3 2安1本1四0三 自責点3・●
8月21日(楽)0回2/3 0安0本1四1三 自責点0
8月22日(楽)0回1/3 0安0本0四0三 自責点0・H
8月28日(日)1回 1安0本0四2三 自責点1
8月30日(日)0回1/3 0安0本0四0三 自責点0・H
山田は8月になって今季初めて1軍登録された。8月の記録が彼のシーズン記録でもある。18試合12回1/3を投げて1勝1敗9ホールド、防御率3.66とそれほど良い成績ではない。
4投手の共通点 キャリアが浅く通用するか試される過程での登板数増加
稲尾和久と現役の3投手は、月間登板数は同じでも、投球内容は全く違うことがわかる。時代が違うため、単純な比較は難しい。しかし4人の投手に共通していることがある。それは「絶対的な信頼感のある投手ではなかった」ということだ。
稲尾はルーキー、試されて好投しているうちに9月に18試合も投げることになった。益田も2年目、この年からクローザーに抜擢されている。フランスアは独立リーグの高知などを経て、今年3月に育成契約。5月に初登板を果たした。山田は9年目のシーズンだが、昨年まで主として先発で通算31試合しか投げていない。そして8月に初昇格した。
すでに実績のある救援投手なら、消耗を考えて、ここまで登板数が増えることはまずない。ともに「どこまでやれるか」試されている投手だったために、登板数がかさんだ結果だということだ。
フランスアは今日、神宮球場で行われる東京ヤクルト戦で登板すれば、月間登板試合が「19」となり、単独1位となる。緒方監督の起用が注目される。
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