遠征中は他球場で売り子の研究。「丁寧さ」と「笑顔」で有終の美狙うまりなさん

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2018.8.21(火) 16:30

「丁寧さ」と「笑顔」がモットーと話すまりなさん【写真:佐藤直子】
「丁寧さ」と「笑顔」がモットーと話すまりなさん【写真:佐藤直子】

売り子初日は24杯「キツくて途中で気持ち悪くなっちゃって…」

今季千葉ロッテでは、3月30日のホーム開幕戦からホーム最終戦まで、ZOZOマリンスタジアムでの主催ゲームを対象に「売り子ペナントレース」を開催している。

立ち売り販売のドリンクメニュー(ソフトドリンクも含む)を販売する売り子経験5年以内の希望者88人が参加。年間販売杯数ナンバー1となった売り子には「ハワイアン航空 成田-ホノルル往復ペア航空券」がプレゼントされるという企画だ。

混戦模様のパ・リーグにおいてペナントレースが激化するとともに、「売り子ペナントレース」も佳境に突入。現在はまりなさんが首位を独走する形だが、レース状況が大幅に変わる可能性が残されている。

それが8月31日に開催される「チケット・ビール半額デー」だ。通常700円のビールが350円になる他、ビール以外の各種ドリンクも通常よりお得な価格で販売されるため、この日に売上げ自己新記録を達成する売り子も多い。

そんな一大イベントを前に、7月31日現在「売り子ペナントレース」のトップ5入りする人気売り子をご紹介するこの企画。第1回はトップを快走する「まりな」さんだ。

他球場で売り子をしていた従姉に「楽しいよ」と聞いて、売り子に興味を持っていたというまりなさん。「たまたまここ(マリンスタジアム)で募集があったので」と応募し、働き始めて4年目を迎える。

「今は平均は200杯くらいで、今年一番売ったのは277杯です」と笑顔を見せるが、スタートから全て順調にいったわけではなかった。

「初日は24杯でした。雨の日だったんですけど、よく覚えてます。キツくて途中で気持ち悪くなっちゃって、4回表までしか売れなくて……。1年目はダメダメだったんですよ(笑)。客席の周り方もヘタクソだし、売れないからタンクの中が泡だらけになっちゃうし、注ぐのもヘタクソで、全然売れませんでした」

一度始めたからには辞められない。どうしたらビールが売れるようになるのか、とことん研究したという。

「先輩方に『どうしたら売れますか?』って聞いて、アドバイスをいただきました。あと従姉も他球場で売上げがトップの方だったんで聞いたり。お客さんに聞いたこともあります。『あの先輩はこうやってたよ』って教えて下さりました」

好きな選手は「田村選手。なんかかわいいなって」

経験を重ねるごとに体力もつき、今では「絶対に休まないこと」が何よりもの自慢。「毎試合必ず来ること。そして最初から最後までずっと売り続けること。ずっといるからっていう理由で買って下さる方も多いので。休まないことは負けません」と話す。

遠征で長期にわたりホームゲームがない時は、体力維持のために走ったり、長い距離を歩いたり、準備に余念がない。

また、本拠地で試合がない時は、自身も“遠征"して研究を重ねる。

「試合がない時は別の球場に行って、売り子さんの動きを見たりします。どのくらいの頻度で回ってくるかなとか、実際に買って話をしてみたり、結構勉強になるんですよ。逆に、この球場ではこういう売り方をしているけど、マリンではあまり合わないかなとか、いろいろ考えます」

研究熱心なのは、元々の性格でもあるようだ。実は、売り子を始めた当初は、野球のルールを全く知らなかった。だが、「選手が打ってもお客さんがため息をつくことがあって、『何でかな?』って。それで試合が終わった後に『今日の○回には何があったんだろう?』って調べるようになったんです」と、今ではお客さんと野球の話で盛り上がるようになった。

「田村(龍弘)選手が好きです。なんかかわいいなって。メッチャ好きです」と笑顔を浮かべた。

現在、大学4年生。「一緒に働く仲間も大好きで、お客さんも大好き」と毎試合楽しみにしている売り子の仕事も、あと1か月半で卒業。「めっちゃ悲しいです……」と半泣きの表情を浮かべるのも、年々増えてきた常連さんの中には、わざわざ生まれた子供を見せにやってきてくれる人もいるほど、温かい交流を持てていたからだ。

多くのお客さんに声を掛けられ、「周りきるのも大変になってきちゃって」とうれしい悲鳴を上げるが、優勝することがこれまで支えてくれた人たちへの恩返しにもつながる。「丁寧さ」と「笑顔」をモットーに、感謝の気持ちを込めながらラストスパートをかける。

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