投手2冠に輝いた実績を持つ右腕が、佐々木朗希の穴を埋める存在となるか
12月11日、千葉ロッテが石川柊太投手の入団を発表した。2020年に先発として最多勝と最高勝率の投手2冠に輝いた実績を持つ右腕の獲得は、ポスティングを申請した佐々木朗希投手の穴を埋めることが急務となっているチームにとって、非常に大きな補強となり得る。
今回は、セイバーメトリクスで用いられる各種の指標をもとに、石川柊投手が持つ特徴と強みを紹介。それに加えて、石川柊投手とZOZOマリンスタジアムの間に存在する抜群の相性についても実際の数字をもとに確認し、新天地でのさらなる活躍に期待を寄せたい。
防御率、奪三振率、与四球率の全てにおいて一定以上の数字を記録
石川柊投手がこれまで記録してきた、各種の指標は下記の表の通り。
キャリア通算の防御率が3.32、4点台以上の防御率を記録したのは8年間で1度だけと、ほとんどのシーズンにおいて防御率3点台以下と安定した投球を披露してきた。また、一軍デビューを果たした2017年に投球回を上回る奪三振を記録したことを皮切りに、奪三振率が8.00を上回ったシーズンが4度存在し、通算の奪三振率も7.80と一定以上の水準にある。
与四球率に関してもキャリア通算の数字が3.45、与四球率が4点台以上となったシーズンも2度のみと、制球面がネックとなるタイプの投手ではないことがわかる。また、直近2シーズンにおいては、与四球率が投球に与える影響の大きさが示されている点も特筆すべきポイントだ。
2023年の奪三振率は8.52とキャリア平均を上回っていたが、与四球率に関しては4.37と悪化。この数字が投球内容に作用した部分は大きく、防御率が4.15、1イニングごとに出した走者の平均を示す「WHIP」が1.34と、いずれもキャリアワーストの数字に終わっていた。
その一方で、2024年の奪三振率は7.39とキャリア平均を下回ったものの、与四球率は1.71と、2試合の登板に終わった2019年を除けばキャリア最高の数字を記録。その結果、防御率は2.56、WHIPは0.99と、ともに投手2冠に輝いた2020年に匹敵する優秀な成績を残した。
また、2024年には制球力や投手としての能力を示す「K/BB」も4.33という数字を記録し、一般的に優秀とされる3.50を大きく上回る水準に到達していた。直近のシーズンにおいて示した投手としての進化が、新天地でも継続されるかが注目されるところだ。
近年は被BABIPがやや上昇傾向にあるものの、前年の投球内容はむしろ向上
次に、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を表す、「被BABIP」という数字について見ていきたい。被BABIPは投手自身にコントロールできる要素が少なく、運に左右される部分が大きい指標であると考えられている。
石川柊投手が記録しているキャリア平均の被BABIPは.258と、一般的な基準値と考えられている.300を大きく下回っている。しかし、2021年以降は4年連続でキャリア平均を上回る被BABIPを記録しており、キャリア初期に比べてやや運に恵まれなくなっていることが示唆されている。
そして、2024年の被BABIPは.270とキャリアで2番目に高い数字だったものの、防御率やWHIPの改善をはじめ、さまざまな指標で優秀な成績を記録した。被BABIPがキャリア平均を上回るシーズンにおいても好投を見せた点は、今後に向けても明るい材料と考えられる。
年を経るごとに相性の良さが高まっている
続いて、石川柊投手がこれまで記録してきたZOZOマリンスタジアムでの年度別投手成績を見ていきたい。
キャリア通算で7勝1敗、2018年以降は7連勝を継続中であることに加えて、通算防御率も2.47と優秀だ。2024年までは登板機会が比較的少ないビジター球場という立ち位置でありながら、無類の相性の良さを誇っていることが数字にも示されている。
しかし、意外にもZOZOマリンスタジアムでのキャリア初登板となった2017年8月8日の試合では、3.1回を自責点6と打ち込まれる結果に終わっていた。しかし、翌2018年には早くも球場の特性に適応して登板した3試合全てで白星を挙げ、それ以降は文字通りに負け知らずの投球を続けている。
さらに、参照する数字を2018年以降に限定すると、7年間で防御率1.90とまさに支配的と呼べるレベルまで数字が向上。防御率4.61と例年に比べて苦戦した2021年を除く5シーズンはいずれも防御率2点台以下と、コンスタントに好投を見せてきた点も頼もしい要素だ。
また、通算の球場別奪三振率は7.85とキャリア平均をわずかに上回る水準だが、こちらも参照する数字を2018年以降に限定すると、奪三振率8.07とさらに数字が上昇する。球場の特性でもある独特の風によって得意球のパワーカーブの切れ・落差がともに増すことにより、奪三振能力も普段以上に高まっていることがわかる。
さらに、直近3シーズンにおいては50.2イニングで51奪三振と投球回を上回る三振数を記録し、奪三振率も9.06と抜群の水準に達する。投球内容が年を経るごとにさらなる進化を遂げている点も、石川柊投手の球場に対する適応力を表す要素の一つだ。
とりわけ、2024年は3試合で12イニングを投じて11奪三振を記録し、与四球はわずかに1、自責点は0と圧倒的なピッチングを展開していた。これだけの投球を見せつけた球場が本拠地となる2025年シーズン、石川柊投手がどのような投球を披露するかは見ものだ。
相性抜群の球場で文字通りの“追い風”を受け、先発陣の中心となれるか
千葉ロッテが近年においてFAで獲得した先発投手である涌井秀章投手と美馬学投手は、いずれも移籍後に2度の2桁勝利を記録してローテーションを支える存在となった。石川柊投手も新天地で活躍を見せ、先発陣の中心的存在となる可能性は十二分にあるだろう。
移籍後も相性抜群の球場で文字通りの“追い風”を受け、先発投手としてさらなる飛躍を果たせるか。育成契約から這い上がって投手2冠に輝いた右腕が、新天地で迎えるプロ12年目のシーズンに見せる投球は、ファンならずとも興味深いものとなってきそうだ。
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