日本シリーズ進出をかけた大一番で先発

　2019年に19歳で福岡ソフトバンクに加入し、来日6年目を迎えたC.スチュワート・ジュニア投手。今季は自身初めて開幕ローテーションの座をつかむと、前年を上回る20試合に先発。規定投球回こそクリアできなかったものの、9勝4敗、防御率1.95の好成績を残し、チームの4年ぶりとなるリーグ優勝に大きく貢献した。また、日本シリーズ進出がかかるパーソル CS パファイナルステージ第3戦で先発を任されるなど、首脳陣からの信頼も厚い。本稿では飛躍を遂げたC.スチュワート・ジュニア投手のピッチングの変化を探っていきたい。

苦手の左打者を克服したことが今季飛躍の鍵に

　好成績を残せた要因の一つとして挙げられるのが左打者へのピッチングだ。2021年には被打率.325を記録するなど苦手としていたが、今季は被打率.160と好成績をマーク。許した本塁打も245打席で1本のみと、課題としていた左打者を封じることに成功していたのだ。

変化球の投球割合が上昇

　好成績を収めていた左打者への投球を球種別のデータで見ていこう。C.スチュワート・ジュニア投手の配球は平均球速が150キロを超えるストレートを主体としているが、今季はそのストレートの投球割合が前年から約5%減少。一方でスプリットの割合が21.8%まで上昇するなど、例年に比べて変化球を投じる割合が増えていた。

変化球のストライク率が大幅に改善

　対左への変化球は投球割合だけでなく、精度面にも変化が表れていた。昨季はスプリット、カーブ、カットボールのストライク率がいずれも同条件のリーグ平均を下回るなど、変化球でカウントを稼ぐことに苦戦。配球の選択肢としてストレートに頼らざるを得ない側面があった。一転して今季は変化球のストライク率が軒並み向上するなど、課題だった制球面が大きく改善。さらにスプリットは2ストライク時のボールゾーンスイング率が前年の36.4%から62.3%まで上昇しており、ゾーンを問わず有効な球種となっていた。

割合が増したインサイドへのストレート

　続いて、C.スチュワート・ジュニア投手の生命線であるストレートのコース別投球割合を見ていきたい。苦手としていた左打者に対して、昨季までは真ん中から外角への投球が約7割以上を占めていたが、今季は内角の割合が40.0%まで増加。以前は変化球でストライクを取れないこともあってか厳しいコースへ投げられない場面も多かったが、今季はストレートを果敢にインサイドへ投げ込めていたのだ。結果として左打者の内角に投じたストレートは被打率.149と効果を発揮していた。

投球の幅を広げ、自慢の剛速球が真価を発揮

　これまでは左打者にストレートを痛打される傾向にあったC.スチュワート・ジュニア投手。昨季の0・1ストライク時の球種別ストライクゾーン被スイング率を見てみても、変化球の被スイング率が42.0%にとどまっているのに対し、ストレートの被スイング率は62.6%と高い数値をマーク。相手打者に速球を狙われていたのは明らかだった。その中で今季は変化球の精度を改善させ、ピッチングの幅を広げることに成功。ストレートの被打率も.170まで良化するなど、苦しんでいた対左打者の克服をもたらしていた。

　昨オフには契約期間を延長するなど、球団からの期待も大きいC.スチュワート・ジュニア投手。19歳の若さで日本球界に飛び込んだ右腕は徐々に非凡な才能を開花させ、リーグ制覇を果たしたチームの主力にまで成長した。昨年は悔しい思いをしたポストシーズンでも力強いピッチングに期待したいところだ。

※文章、表中の数字はすべて2024年レギュラーシーズン終了時点

文・データスタジアム

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