12勝の埼玉西武・多和田には平均7点を超える強力打線の援護
ペナントレースも70%ほどを消化し、今季の個人成績も大勢が見え始めている。最多勝など投手成績も有力候補が固まりつつある。
最多勝は、先発投手にとって大きな目標だ。しかしこのタイトルは投手自身が好投するだけではとれない。味方が援護点を取って、得点が失点を上回って初めて白星が付く。端的に言えば1失点で投げても、味方が0点で終われば敗戦投手になるし、9失点しても味方が10点を取ってくれれば勝利投手になる。そういう意味では「運」が常について回る指標だ。
今季の規定投球回数以上の投手の失点率(防御率ではなく9イニング当たりの平均失点)と、援護率(その投手が投げている間に味方がとった点数を9イニング当たりに置き換えた数値)を出し、その差し引きを算出した。
◯パ・リーグ 差し引きの数値の大きい順
多和田真三郎(西) 12勝4敗
失点率4.38 援護率7.77 差引3.39
ボルシンガー(ロ) 13勝2敗
失点率2.63 援護率6.01 差引3.38
上沢直之(日) 10勝4敗
失点率2.92援護率5.68 差引2.76
アルバース(オ) 9勝2敗
失点率3.16援護率5.13 差引1.97
菊池雄星(西) 9勝2敗
失点率3.2援護率5.11 差引1.91
岸孝之(楽) 9勝3敗
失点率2.63援護率4.01 差引1.38
高梨裕稔(日) 5勝7敗
失点率4.99援護率5.65 差引0.66
バンデンハーク(ソ) 7勝7敗
失点率5.02援護率5.38 差引0.36
石川歩(ロ) 9勝5敗
失点率3.35援護率3.42 差引0.07
則本昂大(楽) 5勝9敗
失点率3.90援護率3.69 差引-0.21
マルティネス(日) 8勝7敗
失点率3.77援護率3.38 差引-0.39
石川柊太(ソ) 9勝6敗
失点率4.25援護率3.82 差引-0.43
涌井秀章(ロ) 5勝7敗
失点率4.12援護率3.68 差引-0.44
西勇輝(オ) 6勝10敗
失点率3.92援護率2.38 差引-1.54
埼玉西武の多和田は防御率4.10で12位だが、勝利数は12で2位。これは援護率が7.77もあるからだ。強力な埼玉西武打線の恩恵で白星を積み重ねている。千葉ロッテのボルシンガー、北海道日本ハムの上沢も同じ傾向。対照的に東北楽天の則本以下5人の投手は差引がマイナス。味方の援護が少ない。
則本は今季もすでに131.2回で136奪三振と、5年連続奪三振王へ向けて走っているが、まだ5勝。6年連続2桁勝利は厳しい状況だ。チームメイトの岸は差引1.38と援護点が失点を上回り、9勝を挙げている。同じチームでも、こうした不公平ができてしまうのだ。
強力な援護がある広島勢、同じ中日でもガルシアと小笠原に大きな差
◯セ・リーグ 失点率‐援護率 差し引きの大きい順
ジョンソン(広) 9勝2敗
失点率3.32援護率5.96 差引2.64
大瀬良大地(広) 12勝5敗
失点率3.01援護率5.37 差引2.36
ガルシア(中) 11勝6敗
失点率3.08援護率4.55 差引1.47
メッセンジャー(神) 11勝6敗
失点率3.56援護率4.92 差引1.36
岡田明丈(広) 6勝5敗
失点率4.73援護率6.08 差引1.35
菅野智之(巨) 9勝7敗
失点率3.00援護率4.20 差引1.20
ブキャナン(ヤ) 8勝8敗
失点率3.94援護率4.85 差引0.91
山口俊(巨) 8勝6敗
失点率3.61援護率4.36 差引0.75
東克樹(De) 7勝5敗
失点率3.00援護率3.53 差引0.53
小笠原慎之介(中) 5勝6敗
失点率4.44援護率4.28 差引-0.16
広島のジョンソン。大瀬良が1、2位。強力打線の恩恵を受けている。中日のガルシアは差引1.47で11勝を挙げているが、チームメイトの小笠原は差引-0.16で5勝どまり。もちろん投球内容はガルシアのほうが上ではあるが、こうした運不運ができてしまう。
巨人の菅野は毎年、援護点が少なかった。2015年は援護率3.11、2016年は2.88、2017年は3.69。しかし乏しい援護点を下回る失点でエースとして活躍してきた。今季の援護率は4.20と菅野にしては多いが、今季の菅野は防御率が2.80と昨年の1.59から数字を大きく落としている。それでも9勝を挙げているが、世の中はままならないと感じる。
援護点が少ない投手は投球のテンポが悪く、打線に悪影響を与えているという説があるが、これは証明されていない。やはり運、不運とみるべきだろう。
援護点が少なく、好投しても勝ち星が伸びなかった投手については、球団も配慮をしてほしいものだ。
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