どうすればもっとパ・リーグが盛り上がる? パ・リーグのリーチ拡大とファンとの深い繋がりの構築を、6球団の球団職員が学ぶ

パ・リーグ インサイト

2024.8.5(月) 15:00

(C)PLM
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 7月12日、パ・リーグ6球団で働く球団職員とパシフィックリーグマーケティング(PLM)の社員を対象とした「パ・リーグビジネススクール2024」がオンラインで開催された。1年半ぶりの開催となった本イベントには過去最多となる300人がエントリーした。

 パ・リーグビジネススクール(PBS)は国内外のスポーツビジネスの事例や一般ビジネスを学べる講座として2017年に開設された。2020年6月からは、スポーツマネジメントの最先端の研究と実践を主導する、UMASS:マサチューセッツ州立大学アマースト校 アイゼンバーグ マネジメントスクール内 マーク H.マコーマック スポーツマネジメント学科(The University of Massachusetts Amherst, Mark H. McCormack Department of Sport Management)とPLMがパートナーシップ契約を締結し、特別講座が開催されるなど、PLMの人材事業の取り組みのひとつとして、パ・リーグ全体でスポーツビジネスを学ぶ取り組みに力を入れている。

 今回の講義では、「パ・リーグのリーチの拡大と、ファンとの深い繋がりの構築」を主要テーマとし、「北米のスポーツやエンターテイメントに関連する最新のトレンド」、「ファンの消費者行動に関する原理原則」、「2024年のデジタル視聴に関する分析」の3部門に分けてUMASSのWilliam Norton教授とMatthew Katzより講義が行われた。その一部を紹介する。

北米スポーツ業界の最新トレンド

 最初のセクションでは、現在の北米のスポーツ業界の動向が説明され、北米でのスポーツ業界全体でのチーム価値、ライブメディア権利の価値の上昇や、女性スポーツの急成長が挙げられた。また、「The Battery」(MLBアトランタ・ブレーブス本拠地スタジアムに併設された大型複合施設)や「St. Petersburg」(MLBタンパベイ・レイズ本拠地。さまざまなレストランやショップを併設)のようにスポーツと都市開発を組み合わせたプロジェクトが成功例として紹介された。

 Matthew Katz博士によると、コスチュームなどでチーム色に染まるスポーツファンはユニークであるという。そんなファンへ価値あるものを提供するために、ファンの動機理解やグループマーケティングの原則を解説した。

グループマーケティングの原則(C)PLM
グループマーケティングの原則(C)PLM

 さらに、Women’s National Basketball Association(WNBA)のケーススタディを用いて、個人観戦するファンを分析し、このファン層を定着させるマーケティング活動を説明。この個人ファンを利用し他の個人ファンを取り込む方法の一例として、影響力のある個人ファンに無料チケットを配布し、そのチケットを使って他の個人ファンを球場に繰り返し連れてきてもらう方法を紹介。また、ファン間での交流やグループは自然発生するべきとし、チームが介入しすぎないように気をつけなければならないと主張した。

若い世代へのアプローチをどう考えるか

 最後にデジタルファンの分析が行われた。デジタルファンの多くはZ世代と呼ばれる若い世代である。

 若い世代のデジタル行動を読み取っていくと、3時間近くある試合をライブで視聴することは少なく、ハイライトなど短く編集された映像を見る傾向にあることがわかっている。特に、動画クリエイターやインフルエンサーの動画がより視聴され、共有されている。このことからも、ライブ配信以外の動画コンテンツの作成が重要であるとした。

「若年層の観客をスタジアムに呼び込むためには、まずファンの動機や価値観を明らかにする透明性の高いデータを収集する方法に注力するべきです。その後、メッセンジャー・SMS・LINEなどによるワンクリックのチケットプロモーション、インフルエンサーを活用してスタジアム内イベントの興奮を伝えること、そしてソーシャルメディアでのストーリーテリングなど、採用しやすいデジタル戦術を実施することが重要です」とWilliam教授は話す。

受講生からの質疑応答に答えるWilliam Norton教授(C)PLM
受講生からの質疑応答に答えるWilliam Norton教授(C)PLM

学びを生かし、日本の野球ファンにコミットした政策を

 今回の講義は北米のスポーツファンを対象としたデータをもとに実例の紹介や分析が行われたが、日本のファンが同様な結果になるとは限らない。北米スポーツの取り組みをそのまま模倣するのではなく、講義での学びをヒントに日本野球の特徴やファンの人間性を理解したうえで独自の施策を行っていくことが重要であると主張された。

 講義後、参加者からは、
「新鮮な気付きはもちろん、個人的な経験則がアカデミックな分析に裏打ちされる部分もあり、楽しく有意義な時間を過ごすことができました」
「ファンコミュニケーションの領域を専門的に研究されている方から講義を受けることができたため非常に良かったです」
「ファンとどのように接点を持つのか、ファンがどういった行動を好むのかという話が非常に参考なりました」
 といった声が寄せられた。

 今年はあと2回開催される予定の「パ・リーグビジネススクール2024」。個人ではなくリーグとしてこのような学びの機会が設けられることで、パ・リーグだけでなく日本野球界のさらなる発展に期待したいところだ。

文・藤井美月

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