新天地でも「勝てる投手」として躍動。勝利数リーグトップタイの山崎福也にデータで迫る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

北海道日本ハムファイターズ・山崎福也投手(C)パーソル パ・リーグTV
北海道日本ハムファイターズ・山崎福也投手(C)パーソル パ・リーグTV

交流戦終了時点で、ハーラーダービーのトップタイに位置している

 2024年から北海道日本ハムでプレーしている山崎福也投手が、交流戦終了時点でパ・リーグトップタイの6勝をマークしている。白星の数だけでなく、勝率も.750と非常に優秀だ。さらに、防御率も2.47と10年間のキャリアで最高の水準に達しており、自身初の個人タイトル獲得の可能性も大いに示している。

 今回は、山崎投手のこれまでの球歴に加えて、セイバーメトリクスに基づく各種の指標を紹介。新天地でも先発として躍動する実力派左腕がさらなる進化を果たしている理由について、実際のデータを基に掘り下げていきたい。(成績は6月16日の試合終了時点)

プロ7年目に先発の一角に定着し、リーグ3連覇にも大きく貢献した

 山崎投手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

北海道日本ハムファイターズ・山崎福也投手 年度別成績(C)PLM
北海道日本ハムファイターズ・山崎福也投手 年度別成績(C)PLM

 山崎投手は明治大学から、2014年のドラフト1位でオリックスに入団。プロ1年目の2015年は17試合で3勝6敗、防御率4.53とやや苦しんだが、続く2016年は17試合で防御率3.67と投球内容を改善させた。しかし、2017年以降は4年連続で防御率4点台と安定感を欠き、なかなかポテンシャルを開花させられずにいた。

 しかし、プロ7年目の2021年に飛躍の時を迎え、自身初めて投球イニングが100を突破。先発の一角として8勝を挙げ、防御率3.56と一定以上の投球を展開。主力投手の一人へと成長を遂げ、シーズン前の下馬評を覆す同年のリーグ優勝にも少なからず寄与した。

 翌2022年も防御率3.45と安定した投球を続け、リーグ連覇を果たしたチームを支えた。さらに、日本シリーズでは9イニングを投げて無失点という見事な投球を披露し、山本由伸投手の故障という緊急事態をカバーしてチームを救った。この活躍によってシリーズの優秀選手賞にも選出されるとともに、悲願の日本一奪還にも大きく貢献してみせた。

 2023年には3年連続となる防御率3点台を記録し、引き続き貴重な先発左腕として活躍。それだけでなく、プロ9年目にして初の2桁勝利となる11勝を記録し、自己最多の130.1イニングを投げ抜いた。投手としてさらなる進化を果たすとともに、チームのリーグ3連覇を力強く支える存在となった。

 2024年からは北海道日本ハムに活躍の場を移し、新天地でも先発左腕として登板を重ねている。ここまで11試合の登板で6勝と順調に白星を重ねており、前年まで2年連続で最下位に沈んだチームが上位争いを繰り広げる原動力の一人となっている。

一般的には、先発よりもリリーフの方が与四球率は改善されやすいが……

 ここからは、山崎投手が記録してきた各種の指標について見ていきたい。

北海道日本ハムファイターズ・山崎福也投手 年度別指標(C)PLM
北海道日本ハムファイターズ・山崎福也投手 年度別指標(C)PLM

 通算の奪三振率は5.69と控えめな数字であり、キャリアを通じて打たせて取る投球を展開していることがわかる。その一方で、与四球率は通算2.79と優秀な水準に達しており、制球の良さと多彩な球種を生かして、打者を手玉に取ってきたことが示されている。

 ただし、2015年から2020年までの6年間における与四球率は全て3点台以上と、キャリア初期の与四球率はやや高くなっていた。しかし、2021年以降の4年間はいずれも与四球率が2点台以下、そのうち3シーズンは1点台と、近年に入ってからは制球面の劇的な改善が見られている。

 山崎投手は2019年までは先発とリリーフを兼任していたが、2020年から先発に固定され、翌2021年からは大きく与四球率が低下している点が興味深い。一般的には、長いイニングを消化する必要がある先発投手のほうが、短いイニングに集中できるリリーフよりも与四球率が高くなる傾向にある。それだけに、山崎選手は例外的なケースと考えられる。

 また、奪三振率もリリーフに比べて先発の方が数字が低下しやすいとされている。だが、山崎投手は先発転向後の2021年に奪三振率7.14というキャリアハイの数字を記録し、2021年、2022年、2024年はいずれもキャリア平均に近い奪三振率を残した。先発転向後は与四球率の改善に加えて、奪三振率への悪影響も生じていないことがわかる。

 さらに、奪三振を与四球で割って求める、制球力や投手としての能力を示す「K/BB」においても同様の傾向が見られる。2015年から2020年までの6シーズンにおけるK/BBは、いずれも1点台と低い水準にとどまっていたが、2021年からの4シーズンはK/BBが3点台まで向上し、一般的に優秀とされる3.50という水準に大きく近づいている。

 これらの事実を鑑みても、山崎投手は類を見ないほどに先発としての適性が高かったと考えられる。そして、新天地で迎えた今シーズンも与四球率は1.73と優秀で、奪三振率も5.67とキャリア平均に近い数字を残している。リーグ3連覇に貢献した過去3年間と同様の投球を見せている点も含め、環境の変化に影響を受けていない点も頼もしい要素だ。

キャリアを通じたBABIPの低さも、打たせて取る投球を支える要素に

 被打率に関しては、先発時とリリーフ時で大きな違いは見られない。ただし、2024年の被打率は.242と、キャリア平均の数字(.253)ならびに、過去3シーズンの数字に比べても.010ほど低くなっている。痛打されるケースの減少が、今季の山崎投手がキャリア平均よりも優秀な防御率を記録している理由の一つとなっている可能性はありそうだ。

 それに付随して、ホームランを除いたインプレーの打球が安打になった割合を示す「BABIP」も見ていきたい。この指標は投手の実力に左右される要素が少なく、運に左右されやすい性質を持っているとされ、投手の被BABIPは一般的に.300が基準値であると考えられている。

 しかし、山崎投手の場合は通算BABIPが.270と非常に低く、シーズンのBABIPが.300を上回ったのも、登板がキャリア最少の7試合にとどまった2018年だけ。山崎投手は打たせて取る投球を持ち味とするだけに、BABIPの低さは安定感を支える大きな要素となっている。

 BABIPは長いスパンで見ると一定の値に収束しやすいとされているが、山崎投手はプロ10年目を迎える今季に至るまで、ほぼ一貫して.300を下回る数字を維持している。今後のキャリアにおいても同様の傾向が続くかは、注目すべきポイントの一つとなりそうだ。

 また、2024年のBABIPが.265と、先発ローテーションに定着した2021年以降では最も優れた数字となっている点も興味深い。それもあって、1イニングで出した走者数の平均を示す「WHIP」も、1.08というキャリア最高の値を記録している。今後も例年以上に被安打を少なく抑え続けられるか否かが、このままキャリアハイの成績を残せるかを左右しそうだ。

移籍を機にさらなる飛躍を果たし、自身初の個人タイトルを手にできるか

 リリーフ時は安定しなかった与四球率が先発転向を機に劇的に改善し、制球良く打たせて取る投球スタイルを確立。ずば抜けた先発適性の高さを発揮してオリックスのリーグ3連覇に貢献した実力は、新天地で迎えた今季も存分に生かされているといえよう。

 防御率だけでなく、被打率やWHIPも例年以上に優秀な数字を残しているだけに、過去3年間を大きく上回る成績を記録する可能性も十二分にあるはずだ。移籍を機に投手としてさらなる飛躍を果たしつつある制球力抜群の左腕が見せる巧みな投球術からは、今後も目を離すことができなさそうだ。

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