地方球場の魅力。米国ではマイナーリーグ&独立リーグが果たすその役割

パ・リーグ インサイト 新川諒

2017.6.6(火) 00:00

県営大宮球場(C)PLM
県営大宮球場(C)PLM

アルディージャ色に染まる大宮で、ここ10年プロ野球の試合が開催されている。その節目の年に、県営大宮球場で初めて開催される埼玉西武対北海道日本ハムの一戦に足を運んだ。素晴らしい設備を備えるメジャーリーグやプロ野球の球場とは一味違う環境ではあったが、地方球場の魅力を充分に感じられる雰囲気だった。

まず驚愕したのが、駐車場が無料だったことだ。球場に隣接しているものだけではなく、徒歩10分ほど離れた第2駐車場まで完備していて、不自由なく球場へ向かうことができる。小規模な会場では必ずと言っていいほど悩まされる駐車場問題だが、そのストレスを感じさせないのは地域の協力あってのことなのだろうか。

チケットは試合開始前に完売。雨が予想されていたにも関わらず、球場には1万7307人のファンが詰め掛けた。周辺には多くのフードトラックが並び、売店では選手プロデュース弁当やボールパーク弁当はもちろん、高橋光成投手プロデュースの「Wチョコバナナ」などのスイーツが、豊富にメニューを彩っていた。また、オム球スタジアム弁当やホームラン弁当といった野球をテーマにしたものだけでなく、対戦カードを考慮した北海道日本ハム弁当までもが用意されていた。

大宮開催限定で販売されるグッズなども充実しており、入場門付近には、埼玉西武のレオをモチーフに作られたドーム型のふわふわ遊具が登場。子どもたちが楽しめるだけでなく、ファンにとってはフォトスポットとなる場も提供されていた。

1試合のみの開催であるため、運営上の準備の大変さが予想され、地方球場としてはどのようにライオンズ色を出していくかも重要な課題となる。それでも本球場での試合開催時と遜色ないサービスを提供しようとしていることが窺えた。

決してラグジュアリー感のある観戦環境ではないが、居心地の良いアットホーム感がある。試合途中には大宮開催10周年を記念して、300発の花火が打ち上げられた。グラウンドで行われている試合を一瞬忘れて、また違った楽しみ方をも満喫できた。

メジャーリーグでは地方開催の試合はほとんどないが、それと似た役割を果たしているのがマイナーリーグと独立リーグだろう。レベルとしてはメジャーリーグの一歩手前であるトリプルAで、昨年平均観客動員数トップを誇ったシャーロット・ナイツには、平均的に8,974人が訪れている。独立リーグでは、ミネソタ州に本拠地を置くセイントポール・セインツが1試合平均8,438人のファンを呼び込んでいる。これらと比較すると大宮開催の試合は規模が大きい。

米国ではマイナーリーグとメジャーリーグがそれぞれの規模に合った楽しみ方を提供しているため、わざわざメジャーリーグの球団が地方で試合を開催する必要性はないとも言える。マイナーリーグにいたときには、選手の名前は分からなくても、ファンがわが街のチームを誇りに思い、長年応援し続けているというのがとても印象的だった。彼らにとっては一流のメジャーリーガーたちがいきなり球場を”乗っ取る”ことになったら戸惑いの方が大きくなるような気もする。

その代わり不定期ではあるが、メジャーリーガーが故障などを負った場合には、リハビリ試合に出場するためにマイナーリーグの舞台に帰ってくることがある。もし同チームで育った選手であれば、凱旋試合という特別な雰囲気になる。チーム全体が地方にやってくることはほとんどなくても、スター選手1人を送りこみ、メジャーリーグ傘下としての価値が見出される。

マイナーリーグはマイナーリーグらしく独自の楽しみ方を提供することでメジャーリーグにはないものを“地元”に与え続けてきている。地方球場の試合でも、ホーム球場では得ることのできない魅力を提供して、今後もファンを楽しませてくれるのではないだろうか。

日本と同じく米国でも、ホームチームがいない地方で公式戦が開催されることになれば大きな盛り上がりを見せるかもしれないが、マイナーリーグも独立リーグもない場所でメジャーリーグの試合を開催できるような規模のスタジアムは、おそらく大学のスタジアムしか残っていないだろう。とはいえ大学のスタジアムで開催されるメジャーリーグの試合も想像してみると、意外に面白いかもしれない。

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パ・リーグ インサイト 新川諒

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