今季は誰が? MLBに移籍したエースの後を継ぎ、新たなエースに成長した6名の投手たち

パ・リーグ インサイト 望月遼太

北海道日本ハムファイターズ・伊藤大海投手(C)パーソル パ・リーグTV
北海道日本ハムファイターズ・伊藤大海投手(C)パーソル パ・リーグTV

エースがMLBに移籍した翌年に、大きな飛躍を果たした投手は?

 2023年のオフに、上沢直之投手と山本由伸投手がMLBの球団へと移籍した。チームのエースがメジャーリーグに挑戦するためにチームを離れた例は過去にも多く存在するが、その投手が在籍していた球団にとっては、後釜の確保が急務になるという側面も出てくる。

 しかし、過去の例に目を向けてみると、パ・リーグ球団のエースがMLBに移籍した翌年に飛躍を果たし、新たなエース格に成長した投手も少なからず存在していた。今回は、MLBに移籍した大黒柱の穴を見事に埋めてみせた、6名の投手たちについて紹介していきたい。(※成績は2024年3月31日の試合終了時点)

涌井秀章投手

涌井秀章投手 年度別投手成績(C)PLM
涌井秀章投手 年度別投手成績(C)PLM

 涌井秀章投手は2004年のドラフト1位でプロ入りし、2005年には高卒1年目ながら開幕ローテーション入りを果たす。同年は13試合で1勝6敗とプロの壁に跳ね返されたが、続く2006年は12勝を挙げて防御率3.24と成績を大きく向上させ、若くして主力投手へと成長を遂げた。

 2006年のオフには松坂大輔氏がMLBに移籍したこともあり、若き右腕にはその後継者としての期待がかかった。そして、涌井投手は2007年に17勝、防御率2.79と素晴らしい数字を残し、自身初タイトルとなる最多勝を獲得。横浜高校の先輩でもある松坂氏の後を継ぐ、チームの新たなエースとなった。

 続く2008年も10勝を挙げてチームのリーグ優勝と日本一に貢献し、16勝、防御率2.30を記録した2009年には最多勝と沢村賞に輝いた。さらに、後に移籍した千葉ロッテと東北楽天でもエース格として活躍。3球団での最多勝受賞という、史上初となる快挙を達成してみせた。

吉川光夫投手

吉川光夫投手 年度別投手成績(C)PLM
吉川光夫投手 年度別投手成績(C)PLM

 吉川光夫投手は2006年の高校生ドラフト1巡目でプロ入りし、1年目の2007年から先発の一角として19試合に登板。93.1イニングで防御率3.66と好投して同年のリーグ優勝に貢献し、日本シリーズでも先発登板を果たすなど、高卒ルーキーながら確かな存在感を放った。

 この活躍から翌年以降のさらなる成長も期待されたが、2008年以降は3年連続で防御率6点台を記録するなど苦しんだ。しかし、ダルビッシュ有投手がチームを離れた2012年に自己最多の14勝を挙げ、防御率1.71と出色の投球を披露。先発の柱としてリーグ優勝の立役者となり、最優秀防御率とリーグMVPに輝く大ブレイクを果たした。

 その後も主力投手の一人として活躍し、2015年には自身2度目の2桁勝利を記録。2016年はチーム事情に応じて一時はクローザーを務めるなど貴重な左腕としてフル回転し、リーグ優勝と日本一に貢献するなど、長きにわたって投手陣を支える存在となった。

攝津正氏

攝津正氏 年度別投手成績(C)PLM
攝津正氏 年度別投手成績(C)PLM

 攝津正氏はプロ1年目の2009年からセットアッパーを務め、70試合で39ホールドポイントを記録。最優秀中継ぎ投手に加えて新人王にも輝く圧巻の活躍を見せると、続く2010年も71試合で32ホールドポイントを挙げ、2年連続で最優秀中継ぎ投手のタイトルを手にした。

 2011年からは先発に転向し、14勝を挙げて防御率2.79と見事な成績を記録。そして、和田毅投手が退団した2012年には17勝5敗、防御率1.91という驚異的な投球を披露。最多勝と最優秀投手(現在の最高勝率)の2冠に加えて沢村賞にも輝く活躍によって、チームの新たなエースとなった。

 翌年以降も先発陣の柱としてチームをけん引し、2011年から2015年まで5年連続で2桁勝利を記録。2011年には胴上げ投手となるなどポストシーズンでも好投を見せ、それぞれ5度のリーグ優勝と日本一を経験するなど、投手陣の精神的支柱として常勝軍団を支え続けた。

則本昂大投手

則本昂大投手 年度別投手成績(C)PLM
則本昂大投手 年度別投手成績(C)PLM

 則本昂大投手は2013年にルーキーながら開幕投手に抜擢され、15勝を挙げる新人離れした投球を披露。同年の新人王にも輝く活躍で、球団創設後初となる日本一の立役者の一人となった。同年オフに田中将大投手がMLBに移籍したこともあり、翌年からはプロ2年目にしてエースとしての重責を担うことになった。

 そして、則本投手は続く2014年に200投球回を突破して防御率3.02と好投し、204奪三振、奪三振率9.06で最多奪三振を受賞。最下位に沈むチームの中で奮闘して14勝を挙げると、同年から5年連続で2桁勝利を記録。田中将投手の後を次ぐエースの座に相応しい存在へと成長を遂げた。

 それに加えて、同年から4年連続で200奪三振を超え、5年連続で最多奪三振のタイトルを獲得。2017年には8試合連続で2桁奪三振というNPB記録を樹立するなど、群を抜く奪三振能力を最大の武器に、近年のパ・リーグを代表する本格派右腕としてマウンドに君臨した。

上沢直之投手

上沢直之投手 年度別投手成績(C)PLM
上沢直之投手 年度別投手成績(C)PLM

 上沢直之投手はプロ3年目の2014年に先発ローテーションに加わり、8勝を挙げて防御率3.19と好成績を記録。若くして台頭を果たしたが、翌2015年は防御率4.18と成績を落とし、2016年は故障で一軍登板を果たせず。それでも、故障から復帰した2017年は91.2イニングで防御率3.44と、確かな復調を示した。

 そして、大谷翔平選手がチームを離れた2018年に上沢投手は大きな飛躍を遂げ、自身初めて規定投球回に到達。チーム最多の11勝を挙げて夏場まで優勝争いを繰り広げたチームをけん引し、故障を乗り越えてファイターズの新たなエースへと飛躍を果たした。

 翌2019年の左ひざ骨折という大ケガも乗り越え、2021年には12勝6敗、防御率2.81とキャリアハイの成績を記録。2017年から7年連続で3点台前半以下の防御率を記録するなど安定した投球を見せ続け、2023年オフの米球界挑戦まで主力投手として活躍を続けた。

伊藤大海投手

伊藤大海投手 年度別投手成績(C)PLM
伊藤大海投手 年度別投手成績(C)PLM

 苫小牧駒沢大学で本格派右腕として活躍した伊藤大海投手は、2020年に地元球団の北海道日本ハムに入団。前年オフに有原航平投手が退団していたこともあり、ドラフト1位入団の伊藤投手には、1年目から即戦力としての働きが期待される状況だった。

 伊藤投手はその期待に応えて開幕ローテーション入りを果たすと、そのまま先発陣の一角に定着。防御率2.90、奪三振率8.69と優秀な投球内容を示し、規定投球回に到達して2桁勝利を記録。有原投手が抜けた穴を埋める見事な投球を見せ、ポテンシャルの高さを大いに示した。

 翌2022年も投手陣の柱の一人として活躍し、2年連続となる2桁勝利と防御率2点台を達成。続く2023年は3年連続の2桁勝利こそ逃したものの、プロ入りからの3シーズンは全て規定投球回に到達して防御率は3点台以下と、主戦投手としての確固たる地位を築いている。

若手の多い両球団において、新たなエースに名乗りを上げるのは?

 以上のように、米球界挑戦のためにエースがチームを離れた後に出色の活躍を見せ、その後も長期にわたってチームを支えた投手は多く存在した。こうした新陳代謝が図れるか否かは、チームの戦力的なマイナスを最小限に抑えるためにも非常に重要になってくる。

 今季以降の北海道日本ハムとオリックスにおいて、新たなエースの座に名乗りを上げる投手はいったい誰になるだろうか。両球団には期待の若手が多く在籍しているだけに、今回取り上げた選手たちのような、大ブレイクを果たす投手たちの出現に期待したいところだ。

文・望月遼太

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