リーグ制覇へ投手陣の安定が不可欠
首位を走る埼玉西武は、リーグトップのチーム打率.274、475得点をマークし、辻発彦監督自ら“ししおどし”打線と命名。トップバッターの秋山翔吾選手からはじまる打線は切れ目がなく、現役最多の6度の本塁打王のタイトルを獲得した中村剛也選手が下位打線に座り、2014年の本塁打王・メヒア選手が代打で控えるなど、レベルの高い打者が数多くいる。
攻撃陣は申し分ないが、投手陣は12球団ワーストのチーム防御率4.49とかなり不安定な状況だ。
【最近5年間のリーグ優勝球団のチーム防御率】
2013年 3.51(2位)楽天
2014年 3.25(2位)福岡ソフトバンク
2015年 3.16(1位)福岡ソフトバンク
2016年 3.06(1位)北海道日本ハム
2017年 3.22(1位)福岡ソフトバンク
※()はチーム防御率リーグ順位
最近5年間でリーグ優勝したパ・リーグの球団を見ても、2013年の楽天、2014年の福岡ソフトバンクはチーム防御率リーグ2位だったが、この3年間はチーム防御率1位の球団が優勝を果たしている。リーグ制覇を成し遂げるためには、投手陣の安定が必要不可欠といえそうだ。
投手陣でかなり苦しんだ2001年の大阪近鉄
投手陣に不安を抱えながらリーグ制覇した球団をみると、チーム防御率リーグワーストの4.98の2001年・大阪近鉄がそうだ。この年の大阪近鉄は、3番・ローズ選手(55本塁打)、4番・中村紀洋選手(46本塁打)の2人で101本のアーチを描くなど、リーグトップの770得点をたたき出した。リーグ優勝を決めた試合でも、9回裏に北川博敏選手が代打逆転サヨナラ満塁本塁打を放つなど、点を取られたら取り返す“いてまえ打線"が奮起した。
投手陣は先ほども述べたようにチーム防御率がリーグワーストの4.98。当時の投手陣を見てみると、3・4月に5勝1敗、防御率3.20の成績を残し月間MVPに輝いた前川勝彦投手だが、シーズン終了後には防御率5.89。門倉健投手も8勝をあげたが、防御率は6.49。
球団も投手陣のてこ入れを図り、シーズン途中にバーグマン投手、パウエル投手を補強。バーグマン投手は、前川投手に次ぐチーム2位となる10勝。パウエル投手は4勝、防御率4.95という成績だったが、ローテーションを守り抜いた。さらに先発陣が不安定だったこともあり、当時2年目だった岩隈久志投手も、シーズン後半から先発ローテーションに定着。4勝を挙げたが、防御率は4.53だった。
リリーフ陣はこの年に先発からリリーフに配置転換となった岡本晃投手が61試合に登板し、4勝4敗8セーブ、防御率2.73という成績を残したが、その他のリリーフ陣はほとんどが防御率4点台という成績。関口伊織投手は53登板で防御率4.33。巨人から移籍してきた三沢興一投手は7勝を挙げたが防御率4.01、左のワンポイントを務めた柴田佳主也投手が42登板で防御率4.35、さらに守護神・大塚晶文投手も防御率4.02だった。
近年では考えられないことだが、投手陣が5点取られても打線が6点を取る野球。まさに野手陣におんぶに抱っこの状態だった。
【2001年 大阪近鉄の主な投手陣】
<先発>
前川勝彦 28試合12勝9敗0S 140.2回 防御率5.89
バーグマン 18試合10勝4敗0S 107.2回 防御率4.18
門倉健 32試合8勝5敗0S 123.1回防御率6.49
パウエル 14試合4勝5敗0S 80回 防御率4.95
岩隈久志 9試合4勝2敗0S 43.2回 防御率4.53
<リリーフ>
岡本晃 61試合4勝4敗8S 102.1回 防御率2.73
関口伊織 53試合0勝1敗0S 35.1回 防御率4.33
柴田佳主也 42試合0勝0敗1S 20.2回 防御率4.35
三沢興一 21試合7勝0敗0S 33.2回 防御率4.01
大塚晶文 48試合2勝5敗26S 56回 防御率4.02
チーム防御率4.51の埼玉西武投手陣
首位を走る今年の埼玉西武も、2001年の大阪近鉄と同じように投手陣がピリッとせず、打線に頼る野球を強いられている。
先発陣は多和田真三郎投手が防御率4.37だが、チームトップの10勝。昨季最優秀防御率(1.97)、最多勝利(16勝)に輝いた菊池雄星投手が8勝、防御率3.30。榎田大樹投手が7勝、防御率3.11、十亀剣投手が5勝、防御率3.57と、多和田投手こそ防御率4点台だが、それ以外の投手は比較的安定している。
問題なのがリリーフ陣だ。昨季は牧田和久投手、シュリッター投手、増田達至投手の“勝利の方程式"に加え、その前を投げる武隈祥太投手、平井克典投手がおり、かなり安定していたリリーフ陣だったが、牧田投手、シュリッター投手が抜けた今季の救援陣は崩壊気味だ。
牧田投手、シュリッター投手が抜けた穴を高橋朋己投手、武隈投手、平井投手、野田昇吾投手、大石達也投手らで埋めていくと思われたが、故障や不振が重なり昨季ほどの投球を見せることができていない。守護神だった増田投手は失点を重ね、抑えの座をはく奪された。
さらに増田投手に代わり、抑えを務めていたカスティーヨ投手も右肘の張りで登録抹消されるなど緊急事態。シーズン途中にヒース投手、先日トレードで中日から小川龍也投手を獲得したが、それでも救援陣の枚数が足りていない状況だ。
投手陣に不安を抱えながらも、開幕から一度も首位の座を明け渡していない埼玉西武。2001年の大阪近鉄のようにチーム防御率が最下位でも、トップでゴールテープを切れるだろうか。
【埼玉西武の主な投手陣】
<先発>
多和田真三郎 16試合10勝4敗0S 103回 防御率4.37
菊池雄星 13試合8勝2敗0S 90回 防御率3.30
榎田大樹 13試合7勝2敗0S 66回 防御率3.11
十亀 剣 15試合5勝7敗0S 95.2回 防御率3.57
<リリーフ>
平井克典 34試合1勝1敗0S 30回 防御率4.50
ワグナー 31試合2勝1敗1S 28回 防御率4.50
野田昇吾 31試合0勝1敗1S 21回 防御率3.86
武隈祥太 27試合1勝2敗0S 21.2回 防御率6.65
ヒース 16試合1勝0敗0S 14.2回 防御率3.07
増田達至 27試合0勝4敗11S 25.2回 防御率5.61
カスティーヨ 20試合7勝4敗3S 74.1回 防御率4.48
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