勢いはシーズン開幕後も持続する? オープン戦で上位に入ったチームの“その後”に迫る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

福岡ソフトバンクホークス・栗原陵矢選手(C)パーソル パ・リーグTV
福岡ソフトバンクホークス・栗原陵矢選手(C)パーソル パ・リーグTV

今年は福岡ソフトバンクが1位。オープン戦で好成績を残したチームは、好調を持続できたか

 3月29日に2024年のプロ野球が開幕し、パ・リーグのペナントを巡る熱き戦いが始まった。シーズン開幕に先立って行われるオープン戦は、選手たちにとっては開幕戦のスタメンの座や一軍への生き残りをかけた、非常に重要な実戦の場という意味合いを持っている。

 オープン戦で好成績を残したチームに対する期待は少なからず高まるものだが、オープン戦の勢いが開幕ダッシュにつながった例はどれだけ存在するのだろうか。今回は、直近5年間のオープン戦においてパ・リーグ内で1位となる成績を残したチームが、シーズン開幕後に残した成績について確認していきたい。

2020年以降の4年間は、いずれも高い勝率を残すチームが存在していた

 2019年から2023年の5年間において、オープン戦でパ・リーグ1位の成績を残した球団は下記の通り。

オープン戦 年度別パ・リーグ内1位球団(C)PLM
オープン戦 年度別パ・リーグ内1位球団(C)PLM

 2019年にパ・リーグ内で最高の数字を残した福岡ソフトバンクの勝率は.643だったが、2020年以降は4年連続で勝率.690以上のチームが存在していた。とりわけ、2020年の埼玉西武と2021年の福岡ソフトバンクは勝率.750とかなりの好成績を残していた。

 しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響によって、3月にオープン戦が終了してから、6月まで開幕が延期される運びとなった。そのため、同年のオープン戦で好成績を収めた埼玉西武にとっては、その勢いのまま開幕に挑むことができなかったといえる。

 さらに、2022年の東北楽天は16試合で11勝2敗、勝率.846と、先述した2チームを上回る驚異的な数字を記録。リーグ3位に入った前年を経て、まさに絶好調といえる状態でオープン戦を締めくくったことからも、シーズン開幕後の躍進が大いに期待できる状況だった。

期待通りの成績を残したチームが多いなか、特殊な日程の2020年は……

 続いて、先述した5チームがシーズン開幕から4月末(2020年は7月末)までの間に、NPBの公式戦で残した成績を確認しよう。

オープン戦パ・リーグ1位球団のシーズン序盤成績(C)PLM
オープン戦パ・リーグ1位球団のシーズン序盤成績(C)PLM

 今回取り上げた5つのチームのうち、2020年の埼玉西武を除く4チームが、開幕から1カ月強の間に3つ以上の勝ち越しを作っていた。オープン戦において好成績を残していたチームが、その勢いのままにスタートダッシュを決めるケースが多かったことが、この結果にも示されている。

 また、唯一の例外である2020年の埼玉西武の場合は、オープン戦の終了からシーズン開幕までに長い期間が空いていた点もポイントだ。勝率.500とシーズン前の好調さをそのまま持ち込めたとは言い難い4月末時点での成績は、オープン戦で得た勢いの重要性を逆説的に示すものでもあるだろう。

 その中でも、2022年の東北楽天は23試合を消化した時点でわずか6敗と、まさに群を抜く成績を残していた。それに加えて、4月26日から破竹の11連勝を飾ったことにより、5月10日の時点で24勝6敗1分とさらに数字を伸ばし、勝率は実に.800という驚異的な水準に到達。同年のオープン戦で残した圧巻の成績を、そのままシーズンに持ち込んでみせた。

 また、2019年の福岡ソフトバンクも15勝10敗2分で勝率.600と、かなりの好成績を収めていた。前年の2018年は開幕直後から独走した埼玉西武がそのままリーグ優勝を飾っていただけに、王座奪還を目指すホークスの開幕ダッシュは、後に繰り広げられる熾烈な優勝争いにもつながっていくことになる。

 それから2年後の2021年にも、福岡ソフトバンクは15勝12敗3分とスタートダッシュに成功。前年には3年ぶりのリーグ優勝と4年連続の日本一を達成していたこともあり、まさに盤石のチーム状態を示していたといえよう。

 2023年のオリックスは、開幕前にワールド・ベースボール・クラシックが開催されたこともあり、山本由伸投手と宮城大弥投手のシーズン初登板が4月にずれ込むことに。それでも、4月末の時点で14勝10敗と好調な戦いぶりを見せ、チームとしての地力をあらためて発揮していた。

直近の2023年には、オリックスが勢いそのままに盤石の戦いを見せ続けた

 最後に、今回取り上げた5チームが記録した、最終的なシーズン成績を見ていきたい。

オープン戦パ・リーグ1位球団のシーズン成績(C)PLM
オープン戦パ・リーグ1位球団のシーズン成績(C)PLM

 オープン戦でリーグ1位の成績を収めたチームが、開幕直後に好スタートを切るケースが多かったのは先述の通り。しかし、そのうち最終的にリーグ優勝を飾ったのは、2023年のオリックスだけだった。「オープン戦の成績はシーズンに影響しない」という評価は、こうした結果に基づいたものでもありそうだ。

 しかし、2019年の福岡ソフトバンクと2020年の埼玉西武はいずれもAクラスに入っており、残る2チームもシーズン4位。どのチームも序盤戦で少なからず貯金を作れていたことによって、極端に悪い順位に沈むケースが存在しなかったという見方もできそうだ。

 また、2019年の福岡ソフトバンクは惜しくもリーグ優勝こそ逃したものの、クライマックスシリーズを勝ち抜いて日本シリーズへの出場権を獲得。栄冠をかけた頂上決戦では巨人を4勝0敗と圧倒し、見事に4年連続となる日本一を勝ち取った。シーズン最終盤まで熾烈な優勝争いを繰り広げたことも含めて、十分に成功を収めたシーズンだったと形容できよう。

 2020年の埼玉西武は8月までBクラスに沈んでいたが、9月以降は大きく調子を上げ、千葉ロッテと激しい2位争いを繰り広げた。この年はリーグ2位までのチームに出場権が与えられたクライマックスシリーズの出場権には惜しくも手が届かなかったものの、後半戦に底力を発揮し、リーグ王者の意地を見せた。

 2021年の福岡ソフトバンクは開幕直後こそ本来のチーム力を示したものの、故障者が続出した影響もあって徐々に失速。伝統的に得意とする交流戦でも11位に沈むなど苦戦を強いられ、8年ぶりのBクラスに沈むというまさかの結果に終わった。

 2022年の東北楽天は歴史的なスタートダッシュを切ったものの、5月以降は急激に調子を落とした。一時は18個の貯金を作って独走態勢を築いたが、最終的には2つの負け越しでリーグ4位と、大きな躍進を予感させた序盤戦の勢いを持続させることができなかった。

 そんな中で、2023年のオリックスは中盤戦以降も安定した成績を残して上位を維持し、大崩れすることなく順調に勝ち星を積み重ねた。開幕直後の好成績を一過性のもので終わらせることなく、最終的に2位に15.5ゲームの大差をつけてリーグ3連覇を果たしている。

過去5シーズンと同様に、オープン戦の勢いが開幕ダッシュにつながるか

 リーグ優勝を果たしたチームこそ1つだけだったが、オープン戦でパ・リーグ1位の成績を残したチームは、開幕直後も好調を持続させる傾向にあった。唯一その傾向から外れたのが特殊な日程だった2020年だった、ということを鑑みても、オープン戦の勢いをレギュラーシーズンに持ち込むことに成功するケースは多かった、と結論づけられるはずだ。

 はたして、2024年のオープン戦で好調な戦いぶりを見せたチームも、過去の例と同様に開幕ダッシュを成功させることができるか。各チームが見せるシーズン序盤の戦いぶりに、あらためて注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太

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