初球宴でも「らしさ」を発揮。難病と闘い続ける男は、2つ目の「自身初」をつかめるか

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2018.7.19(木) 13:15

オリックス・バファローズ 安達了一選手(C)パーソル パ・リーグTV
オリックス・バファローズ 安達了一選手(C)パーソル パ・リーグTV

自身初の晴れ舞台でも、その献身性は不変だった。

オリックスの安達了一内野手が球宴出場を果たし、走攻守の全てで躍動した。不屈の精神でチームを支え続ける守備の名手は、今季2つ目の"自身初"を手にすることができるだろうか。

苦難のルーキーイヤーからチームの中心選手に

榛名高校、上武大学、東芝を経て2011年のドラフト1位でオリックスに入団した安達選手は、アマチュア屈指の内野手との呼び声高く、即戦力としての活躍が見込まれた。長池徳士氏や石嶺和彦氏といった往年の名選手が背負った背番号「3」を与えられたことからも、球団からの高い期待の一端がうかがえる。

ルーキーイヤーは故障で出遅れ、50試合0本塁打4打点、打率.159という成績に終わったものの、翌年は遊撃のレギュラーとして、ほぼスタメンに定着。131試合5本塁打30打点16盗塁、打率.235という数字を残して確かな成長を感じさせ、翌2014年には主力としてチームの優勝争いにも貢献した。

2015年には打率と盗塁数こそ減少したものの、自己最多の11本塁打と55打点を記録して不振にあえぐチームの中で意地を見せた。卓越した守備力も手伝って完全にチームの中心選手としての立場を確立していたが、翌年、誰もが予想しなかった事態に見舞われる。

突如襲った試練

2016年の1月、安達選手は厚生労働省が特定疾患に指定する難病である「潰瘍性大腸炎」と診断された。現役続行も危ぶまれたが、4月12日に復帰を果たすと、遊撃のレギュラーとして118試合に出場、自己最高の打率.273という数字を残し、その活躍を通して多くの人々に勇気を与えた。

翌年は打率.203と不振に陥り、シーズン最終盤には入院を余儀なくされて戦線離脱を強いられるなど、難病は未だ安達選手を苦しめている。しかし、今季はここまで81試合に出場し、発症後では初めて盗塁数を2桁(11盗塁)に乗せた。

思いがけない形で自身初のオールスター出場

そんな安達選手に思いがけない朗報がもたらされたことは、まだファンの記憶にも新しいだろう。「マイナビオールスターゲーム2018」で、プラスワン選出された北海道日本ハムの大田泰示選手が辞退したことを受け、得票数2位だった安達選手が繰り上がり。本拠地で開催される球宴に、プロ7年目、30歳で初出場を果たすこととなったのだ。

「ファンのみなさんのおかげだと思いますので、素直に嬉しいですね」と喜びを語った安達選手は、第1戦でスタメン出場すると第1打席で安打を放ち、直後に盗塁を決める。さらに「いい守備を見せられるようにがんばります」という言葉通り、5回表には安打性の打球を好捕。走・攻・守全てで「らしさ」を存分に発揮してみせた。

今年はもうひとつの“自身初”が狙える可能性も…

安達選手は、広大な守備範囲と的確なポジショニングによって難しいゴロも正面でさばくケースが多い。派手さこそないものの、UZRやレンジファクターといった守備指標では、軒並みリーグ最高クラスの数字を残している。しかし、福岡ソフトバンクの今宮健太選手の存在もあり、これまでゴールデングラブ賞の受賞経験はない。

ただ、今季はその今宮選手がケガにより約1カ月の長期離脱を強いられており、登録抹消前も攻守ともに本調子とは言えなかった。安達選手がパフォーマンスを維持できれば、自身初の栄冠をつかむ可能性は高くなるだろう。

球宴出場が決まった際、安達選手は「自分と同じ病気の方たちもそうですが、違う病気の方たちにも励みになるような、元気なプレーをしたいと思います!」と語った。現在も難病と闘い続ける安達選手は、これからの後半戦でも攻守に躍動し、そのプレーを通じてきっと人々の心を熱くさせてくれるはずだ。

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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