昨季は与四球率が大幅に改善
2017年の入団以降、打者を圧倒するピッチングで福岡ソフトバンクのブルペンを支え続けてきたリバン・モイネロ投手。昨季は左肘の故障により7月途中での離脱を余儀なくされたものの、そこまでの27登板で見せた安定感抜群の投球は、キャリアベストといえる素晴らしい内容だった。なかでも特筆すべき点は与四球率が大きく改善したことだろう。
過去のシーズンでは3点台中盤から5点台の間を推移していたが、昨季は1.63と非常に優れた数値を記録している。本稿ではこの与四球の減少に注目しつつ、左腕のピッチングの変化について探っていく。
平均的だったストライク率がリーグトップに
はじめに示したいのは、ストライク率が大きく向上しているということだ。例年のストライク率がリーグ平均前後の62~65%程度であるのに対し、昨季は75.0%と高い数値を記録。これは20イニング以上投げた投手の中でリーグトップの数字だった。ストライク率が高いということは、当然ながらボールカウントを少なく抑えることができる。
22年までは平均して対戦打者4.4人に1人のペースで3ボールとなっていたが、昨季は16.2人に1人とごくわずか。常にカウントに余裕を持ちながら打者と勝負できており、与四球が大幅に減少したのもうなずける。
ストライクゾーンに投げ込むというシンプルな良策
では、ストライク率を劇的に向上させることができたのはなぜか。その理由は実にシンプルで、ストライクゾーンに投げ込む割合が増えたことにある。全投球に占めるストライクゾーンへの投球割合はリーグ平均が毎年48%前後となる。以前のモイネロ投手はこの割合が低かったが、昨季は前年から6.4ポイント増加してリーグ平均を上回った。球種別で見るとストレートでの変化が大きく、50%前後だったストライクゾーンへの投球割合は61.3%に増加している。
普通であれば、単にストライクゾーンに投球を集めるだけでは、痛打を浴びるリスクも大きくなってしまう。しかし、モイネロ投手の投げ込むボールはそもそもの質が高いため、そのリスクを少なく見積もることができる。昨季のストライクゾーンへの投球における奪空振り率を見ると、特にストレートとチェンジアップの数値がリーグ平均を大幅に上回っていることがわかる。
この2つは昨季に限らず、毎年安定して高い奪空振り率を記録している球種だ。前述したように、ストレートはストライクゾーンへの投球割合が増えているが、空振りを奪える球威があるからこそ、積極的にゾーンへ投げ込むことができたのだろう。そして、同じく一級品であるチェンジアップとの緩急が、ストライクゾーンでの勝負をより有効なものにしたと考えられる。
球数の少なさが先発転向における強みとなるか
ストライクゾーンで勝負することにより与四球率の改善に成功した昨季は、余計な走者を許すことがなくなり、1イニングあたりの投球数が前年から2.6球ほど減少。結果としてリーグで最も球数が少ない投手となった。より一層の進化を遂げた左腕は、今季から先発への転向を予定しているとのこと。救援時と同じ出力で投げ続けるわけではないため、昨季のデータはあくまで参考値にはなるが、球数の少なさは長いイニングを投げる上で大きな強みとなり得る。先発投手としても存分に力を発揮してくれることだろう。新たな役割に挑むモイネロ投手の活躍に期待したい。
※文章、表中の数字はすべて2023年シーズン終了時点
文・データスタジアム
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