初回に山川に2ラン被弾、甲斐が発した「ゴメン」の一言
衝撃的な圧勝だった。後半戦初戦となった16日、本拠地での埼玉西武戦。前半戦を3位タイで終えた王者福岡ソフトバンクの打線が大爆発した。打ちも打ったり21安打16得点。球団タイ記録となる1試合8本塁打の一発攻勢で、打力を武器とする首位の埼玉西武を圧倒した。
試合で自身のキャリアハイに並ぶ5号2ランを放ったのが、甲斐拓也捕手だ。初回、松田宣浩の2ランで勝ち越し、なおも2死一塁で打席に立つと、埼玉西武先発の多和田真三郎から左翼スタンドへと飛び込む2ラン本塁打。リードを4点に広げる一発を放った。
この打席、甲斐の一振りには強い思いが込められていた。「打たれたのは、僕が要求したボールなので。僕に責任がある」。初回、埼玉西武の攻撃でのこと。四球で走者を出した福岡ソフトバンク先発の千賀滉大は、埼玉西武の主砲・山川穂高に手痛い一発を食らった。1ボールからの2球目。甲斐が要求した外角への真っ直ぐがやや高く入った。
打球は乾いた音を残して左翼スタンドへと消えていった。先制の24号2ランだった。「千賀は気持ちのこもったボールを投げていたのに…」。リードした甲斐には後悔の思いが募った。初回の守備が終わると、千賀に声をかけた。「ゴメン」。同期入団、同じ育成から這い上がった右腕から返ってきた言葉。それは「お前が打ってくれたら、それでいいよ」だった。
千賀の言葉に応えたい、その思いで振った一振りは本塁打になった。4回1死満塁では、当たり損ないのゴロが捕手前への適時内野安打となり、5回にも右前安打を放った。4打数3安打3打点。「今日はボールの勢いも、投げ方も良かったと思います。今日に関しては前半戦よりも良かった」と感じた千賀にも白星をもたらすことができた。
育成出身の同級生。その仲の良さは、広く知られるところだ。千賀と甲斐。固い信頼、絆で結ばれた2人が、埼玉西武追撃の鍵を握ることになる。
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