10月26日に行われたプロ野球ドラフト会議で、千葉ロッテが1位で指名したのは、巧みな打撃技術を備える明治大学の上田希由翔（きゅうと）選手だった。
オフシーズン迎え、各球団が来季に向けた編成を着々と進めているなか千葉ロッテとの仮契約を待つ上田選手に、ドラフト会議を終えた現在の心境やプロ選手としての抱負を語ってもらった。
オリックス宮城大弥投手との対戦を熱望 「成長した自分の姿を見せたい」
「前日もなかなか寝つけなくて、当日もずっと緊張していました。指名を受けた時に、ようやく安心できた感じです」とドラフト会議を振り返った上田選手は、1年の秋から明治大の4番打者として活躍。今季は主将としてもチームを牽引し、春のリーグ優勝を成し遂げた。
「自分の成績だけではなく、チームが抱えるいろいろな課題と向き合ったり、選手の気持ちをひとつにすることの難しさを感じた1年でした。人前に立って話すのも苦手ですし、最初は何もかもが手探りで、春季リーグの優勝旗を手にするまでは押しつぶされそうな重圧を感じていたんですけど、振り返ってみるとかけがえのない経験や達成感を得ることができました」と自身の成長を口にする。
上田選手にとっての大学時代は、プロ野球の世界で活躍することを見据えて自分自身を鍛え上げた4年間でもあった。
「投手とファーストしか経験してこかなった」という高校時代から一転して、明大ではサードやセカンド、外野などの新たなポジションに挑戦。「試合に勝つためにどこでも守れるようにしたい」という上田選手は、今秋まで4季連続のベストナインも手にした。
そして打撃面でも、大学から使い始めた木製バットを使って、プロ野球での活躍を見据えた打撃技術に磨きをかけた。
「じっくり考えながら 自分の技術を高められた４年間だったと思いますし、大学で得た経験値は自分にとって本当に大きかったと思います」と本人も感じるほどに確かな成長を掴み取った。
そんな上田選手が対戦を心待ちにしているのは、高校日本代表の時に対戦し「球が見えにくくて圧倒された」という宮城大弥投手だ。「宮城投手や奥川恭伸投手など、プロ野球の世界で活躍している同期がたくさんいるので、成長した自分の姿を見せられたらいいなと思う」と、4年越しの再戦にも意欲を見せる。
今年のドラフト会議では、東都大学リーグでプレーする7人の投手が1位指名を受けた。指名後の会見で「開幕一軍」を目標に掲げた上田選手だが、シーズンの開幕後には、昨年の神宮大会決勝で対戦し、「いろいろなコースに投げ分けられる投手だった」という武内夏暉投手（埼玉西武1位）や、今夏の代表合宿で「一緒にスマブラ（大乱闘スマッシュブラザーズ）をプレーした」という細野晴希投手（北海道日本ハム1位）や上田大河投手（埼玉西武2位）らとのハイレベルな新人王争いも予想される。
ドラフト後には、明治大OBの入江大生投手や村松開人選手など、「プロ野球の世界に身を置く先輩たちと話す機会があった」という上田選手は、「まだあまり実感が湧かないところもある」としつつも、「将来は勝負強く頼られる選手になりたい。新人王もそのひとつですが、将来タイトルが獲得できるような選手になるために、自分のスタイルを大切にしながら結果が残せるように頑張っていきたい」と、今後のキャリアプランを描く。
千葉ロッテファンの力強い応援に応えられるように頑張りたい
今季2位の千葉ロッテは、ポランコ選手が本塁打王のタイトルを獲得したものの、チーム全体を見ると打率と本塁打数はリーグ4位（.239、100本塁打）で、打撃面の強化が課題となっており、「セールスポイントの打撃を生かして少しずつでもチームに貢献していきたい」と意気込む上田選手へのチームの期待は高い。
「パ・リーグはDH制度があって、レベルの高い投手陣が揃っている」と語る上田選手に千葉ロッテの印象について尋ねると、「井口前監督が引退試合（2017年9月24日日本ハム戦）で放った本塁打や福浦選手のバッティング。今江選手や西岡選手の侍ジャパンでの活躍などドラマティックなシーンが印象に残っていますが、何よりも心強いのは、ファンの皆さんの力強い応援です。僕自身も熱いファンがいるチームでプレイしてみたいという気持ちがあったので、声援を背にプレーすることを今からとても楽しみにしています」と意気込む。
「最近は教習所に通ったり、大学のグラウンドで個人練習をしていることが多い」という上田選手は、26日に吉井理人監督らと面会し、仮契約を結ぶ予定になっているそうだ。
「今季はセ・リーグの阪神が日本一を手にしましたが、来季は千葉ロッテがパ・リーグ優勝と日本一を勝ち取れるように、僕も全力で上を目指していきたい。僕は皆さんの大声援が引き出してくれる選手の力が絶対にあると思っているので、熱のこもった応援にプレーで応えられるように頑張っていきたいです」
文・白鳥純一
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