不測の事態にチームを救うユーティリティプレイヤーは、非常に重要な存在
現代野球において、9名のレギュラーだけでシーズンを戦い抜くことは現実的ではなくなりつつある。それだけに、複数のポジションをこなせるユーティリティプレイヤーの存在は、チームにとって大きなプラスをもたらす要素となっている。
今回は、レギュラーシーズンにおいて3つ以上のポジションで出場した選手たちを球団ごとに紹介。ユーティリティとしてチームを支えた選手たちの顔ぶれを振り返るとともに、各選手の働きぶりをあらためて確認していきたい。
北海道日本ハム
高卒3年目の細川凌平選手が内野の4ポジションに加えて外野もこなし、バッテリーを除く幅広い役割に対応。打撃面でも9月は月間打率.375と終盤戦でインパクトを残しており、今後のさらなる台頭にも期待がかかる。また、今季限りで現役を引退した谷内選手も例年通りに内野の全ポジションをこなし、現役最後のイニングで外野を守って有終の美を飾った。
加えて、新戦力の山田遥楓選手も内野の全ポジションに対応し、助っ人のアルカンタラ選手も内野3ポジションと外野でプレー。さらに、新人の奈良間大己選手、逆輸入ルーキーの加藤豪将選手、2年目の水野達稀選手、捕手登録の郡拓也選手、ベテランの中島卓也選手の5名が、いずれも内野の3ポジションをこなした。
そして、野村佑希選手は従来の主戦場だった三塁と一塁に加え、外野と二塁でも試合に出場。打率.236、OPS.692と打撃面では苦しいシーズンを送ったが、守備では新境地を開拓している。シーズン途中の入団で捕手、一塁、二塁、外野の4ポジションをこなした郡司裕也選手も含めて、打線の核になりうる選手のユーティリティ性の拡充は明るい材料だ。
東北楽天
プロ8年目で自己最多の98試合に出場した村林一輝選手は、1シーズンで内野の全ポジションを経験。とりわけ、遊撃手として見せたハイレベルな守備は特筆もので、打率.256とバッティングでも活躍。攻守にわたって躍動し、主力選手の一人へと成長を遂げた。
また、小深田大翔選手は内外野の4ポジションをこなしながら、36盗塁で自身初タイトルとなる盗塁王を受賞。守備では計15失策と苦戦も強いられたが、チーム事情に応じて複数のポジションをこなしながら、今季もレギュラーとしてチームを支えた。
新戦力の阿部寿樹選手は内外野の3ポジションを守り、打率.255、OPS.738と随所で存在感を示した。移籍2年目の伊藤裕季也選手も内野の全ポジションをこなしながら自己最多の87試合に出場し、打率.245と奮闘。さらに、山崎剛選手、渡邊佳明選手、黒川史陽選手も3つのポジションに対応するなど、複数の守備位置に適応した選手は多かった。
埼玉西武
呉念庭選手、平沼翔太選手、山村崇嘉選手の3名が、いずれも内野の全ポジションで出場。呉選手は過去2シーズンに比べて出場機会を減らしたが、打撃面で一定の存在感を示した平沼選手、シーズンの最後に2試合連続本塁打を放った山村選手の2名は、今後が楽しみな存在となっている。
北海道日本ハムからトレードで古巣に復帰した佐藤龍世選手は、本職の三塁に加えて一塁と二塁も守り、二軍では捕手としても試合に出場。打率.263、OPS.768を記録して終盤戦では3番打者を務めるなど、攻守にわたって成長を垣間見せた。
また、源田壮亮選手がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で右手小指を骨折したことを受け、新人の児玉亮涼選手が序盤戦に台頭。遊撃を中心に二塁と三塁もこなし、即戦力として存在感を示した。そして、山野辺翔選手も内外野の3ポジションでプレーし、代走や守備固めのピースとなった。
千葉ロッテ
昨季途中から出場機会を増やした茶谷健太選手が、今季は年間を通して一軍に帯同。内野の全ポジションをこなしながら自己最多の79試合に出場し、打率.284と打撃面でも活躍。序盤戦では4番も務めるなど幅広い役割に対応し、チームに欠かせないスーパーサブへと飛躍を遂げた。
池田来翔選手は1年目の2022年に打率.091と大苦戦を強いられたが、今季は5月に打率.373と大活躍。絶好調だった時期に右手薬指を骨折する不運もあって40試合の出場にとどまったが、打率.269、OPS.731と大きく成績を向上させて確かな成長を示した。
小川龍成選手は元々二遊間を主戦場としていたが、一軍の外野手に離脱者が続出したことを受けて外野守備に挑戦。二塁、三塁、外野の3ポジションをこなし、代走としてもたびたび好走塁を披露。持ち前の俊足にユーティリティ性が加わり、大いに活躍の場を広げた。
オリックス
MLB時代にバッテリー以外の全ポジションをこなしながらレギュラーとして出場する「スーパーユーティリティ」として活躍したゴンザレス選手は、NPBでも内野の全ポジションで出場。強肩と球際の強さを随所で発揮し、中嶋聡監督の日替わり打線にさらなる柔軟性をもたらす存在となった。
また、2年目の野口智哉選手も外野を中心に三塁と遊撃でもプレーし、着実に出場機会を伸ばして存在感を見せた。さらに、長年にわたってユーティリティとして活躍してきた山足達也選手は今季も内野の全ポジションをこなし、与えられた出番で自らの役割を果たした。
安達了一選手は二塁を中心に3つのポジションをこなし、9月9日には遊撃手として山本由伸投手のノーヒットノーランをアシストする好守を披露。5月にトレードで加入した廣岡大志選手は打率.200と打撃面では振るわなかったが、一塁、二塁、三塁、外野と4ポジションで起用されて利便性を示した。
福岡ソフトバンク
周東佑京選手は二塁、三塁、外野をこなしてチームを支えたが、今季は外野での出場機会が大きく増加。36盗塁で自身2度目の盗塁王を獲得し、外野守備でも圧倒的な脚力を活かしてたびたびファインプレーを見せるなど、攻守にわたって大きな存在感を示した。
周東選手と同じく、開幕前のWBCに出場した牧原大成選手は、今季も二塁と外野を中心に4ポジションで出場。故障の影響で91試合の出場にとどまったが、WBCの疲労もあるなかで打率.259と一定の数字を残し、離脱者が続出するチームをユーティリティとして支えた。
川瀬晃選手は内野の全ポジションをこなしながら、自己最多の102試合に出場。シーズン最終盤には2番打者としての起用も増え、ブレイクの足がかりをつかんだ。二塁、三塁、遊撃、外野を務めた野村勇選手も含め、複数ポジションをこなせる若手の台頭は楽しみな要素だ。
高いユーティリティを持つ選手は、采配に柔軟性をもたらす
ゴンザレス選手はMLB時代と同じく日本球界においてもユーティリティとして活躍し、小深田選手と周東選手は盗塁王のタイトルを分け合った。この3選手のように、複数のポジションを守りながら主力として活躍を見せる選手は、チームの戦術の幅を広げる意味でも重要な存在となる。
また、郡司選手、茶谷選手、川瀬選手のように、スーパーサブとして攻守にわたって幅広い起用に応えた選手たちも、チームの大きな助けとなる。今回取り上げた選手たちのような、一人で複数ポジションをこなしながらチームに貢献する選手たちの活躍に、来季以降もぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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