鈴木優の留学便り Vol.7 スタッツデータとは何のこと? 日米でビジョンにはこんな違いがあった!

パ・リーグ インサイト 鈴木優

2023.8.31(木) 16:00

ロサンゼルス・エンゼルス提供
ロサンゼルス・エンゼルス提供

比べてみると……ビジョンに書かれたスタッツはこんなにも違う

 今回は私が日本とアメリカの違いを感じた「スタッツへの理解」について書いていきたい。

 私がこう感じたきっかけは、メジャーリーグの球場ではどこの球場も、日本ではまだあまり知られていない部分のスタッツまでフィールドビジョンに写っているからだ。

 日本でもスタッツデータの存在について目にすることは増えてきたが、初めてエンゼルスタジアムで観戦した時にこの情報量の多さに驚いた。聞くところによると、日本でもエスコンフィールドHOKKAIDOのビジョンには、英語表記でスタッツが細かく掲載されているのだとか。つまりこれからは日本でも一般的になっていくのかもしれない。

 ではまず「スタッツ」とは何なのか。その定義から説明していくと、試合においてのチームや選手個人のプレー成績をまとめたものをいう。これは英語の「Statistics(統計)」という単語からきている。

 日本のプロ野球のビジョンでよく使われるものとしては打率、防御率などがあるが、アメリカではより多く、細かいものが観客にも理解され、選手を評価する手段として使われている。

京セラドーム大阪の例(C)PLM
京セラドーム大阪の例(C)PLM

 先日私は、アメリカのリトルリーグの試合を見に行ったのだが、そこでは日本ではまだプロ野球でしか聞かないような種類のスタッツをコーチや子どもたちが会話の中で使っていた。アメリカではもう常識として野球文化に根付いているのだ。
 
 まずは実際にスタッツデータについて説明していこう。

AVG(Batting Average)  打率

PA(Plate Appearance) 打席数

H(Hit)        ヒット数

HR(Home Runs) 本塁打数

RBI(Run Batted in) 打点

R (Run) 得点

OBP(On Base Percentage) 出塁率

SLG(Slugging Percentage) 長打率

OPS(On Base Plus Slugging Percentage) 出塁率+長打率

SB(Stolen Bases) 盗塁数

SBA(Stolen Base Attempt) 盗塁企画数

 打者のスタッツだけでこんなにも多くのスタッツが電光掲示板に掲載されている。それだけで驚きだが投手の方も見ていこう。


ERA(Earned Run Average)   防御率

WHIP(Walks Plus Hits Per Inning Pitched)  投球回あたりの与四球・被安打数合計

IP(Innings Pitched) 投球回数

H/9(Hits Allowed Per 9 innings) 被安打率

BB%(Walks Allowed Per 9 innings) 与四球率

K%(Strikeout Allowed Per 9 innings) 奪三振率

W(Win)    勝利数

L(Lose)    敗戦数

B(Balls)    ボールの数

S(Strikes)    ストライクの数

T(Total)    投球数

SO(Strike Outs)    奪三振数


 投手でもビジョンに載っているだけでこの多さだ。

 日本では現在、選手を評価するものとしては打者では打率、打点、投手は勝利数、防御率が特に重視される。またこの数値によってシーズン終了後にタイトルも決定する。

 しかしこれらの指標では能力を正確に測るのに充分で無いということが近年言われるようになった。特に打点や勝利数などは周りの影響をかなり受けるものでそれだけで能力を判断することはできない(もちろんこれらの数値が高い人がすごいのは変わらない)。

 そこでより選手を評価できるように考えられたのがセイバーメトリクスだ。
 セイバーメトリクスとは、成績を表すスタッツを使い、客観的に分析し統計的に研究することをいう。
 
 たくさんある中で打者では「OPS」が特に使用されることが多い。
 読み方はそのままオーピーエスで.700程度が普通で.900を超えると一流選手という認識だ。

 昨年は.900超えは2人しかおらず、吉田正尚選手が1.008で1位。続く2位が山川穂高選手で0.953となっている。

 投手ではWHIPを重要な成績として挙げる。
 読み方はウィップで、1イニングあたりに何人を出塁させたかということだ。1.00を下回ると一流選手と言われている。

 昨シーズン投手のタイトル四冠を果たした山本由伸投手の2022年の数値で0.93、同じく2022年の佐々木朗希投手は規定投球回に足りていないが、0.80だった。そしてそんな令和の怪物らを抑え、昨年の1位は加藤貴之投手でその数値はなんと0.91だった。

 まだ他にもたくさんの指標があるのだが、今回はメジャーリーグの球場で主に使われているものを説明してみた。初めて知った方はこれから試合観戦の際に、そんなところにも注目して見てほしい。

文・鈴木優

1997年生まれ、東京都目黒区出身の元プロ野球選手。ポジションは投手。2014年にオリックス・バファローズにドラフト9位で指名され7年間所属、その後読売ジャイアンツに1年間所属し2023年に現役引退。都立高校から直接NPB球団に入団した選手としては、史上初の勝利投手となり「都立の星」としても注目を集めた。現在はアメリカ・ロサンゼルスに移住し、現地の語学学校に通いながら野球について勉強をしている。また撮影、編集を自ら行うYouTuberとしても活動。

鈴木 優 【SuzuQtube

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