島内にソロ被弾し2年ぶりの自責点「まさかホームランで取られるとは」
■埼玉西武 4ー1 楽天(16日・ベルーナドーム)
埼玉西武の今井達也投手は16日、本拠地ベルーナドームで行われた楽天戦に先発し、9回を1失点に抑え切り完投で今季7勝目(3敗)を挙げた。楽天戦には、一昨年10月15日に楽天生命パーク宮城(現・楽天モバイルパーク宮城)で完投勝ちして以降、足かけ3年で8戦8勝(今季5戦5勝)と滅法強い。
立ち上がりから圧倒した。初回先頭の小深田大翔内野手を、カウント1-2から外角低めの153キロ速球で見逃し三振に仕留める。その瞬間、捕手の古賀悠斗へ向け、右の手のひらを立てて“ごめん”という表情を見せた。古賀の構えは内角で、“逆球”だったからだ。続く山崎剛内野手も外角の155キロで空振り三振に切って取るが、またもや古賀へ手のひらを見せて謝罪。この時も構えはインコースだった。
そして3番・小郷裕哉外野手を空振り三振させた内角低めのチェンジアップも逆球で、しかもワンバウンド。古賀は必死の形相でミットにボールを収めた。制球は荒れ気味だったが、それを補ってあまりある球威と変化球の切れで、3者三振のスタートを切ったのだった。
4-0とリードして迎えた7回、1死から島内宏明外野手に高めのストレートを右翼席へ運ばれると、思わず両膝に手を置き、がっくりと首を垂れて苦笑いを浮かべた。「楽天戦ではゼロが続いていたので、まさかホームランで取られるのかと……」。楽天戦で自責点が記録されたのは、8連勝がスタートした一昨年10月15日の敵地以来。奇しくも、この時も島内のソロによるものだった。今井自身「左中間に打たれたやつですよね?」とはっきり覚えていた。
それにしても楽天に強い。首脳陣はわざわざローテーションを組み替え、中10日のインターバルを与えて楽天にぶつけ、今井は最高の結果で応えた。松井稼頭央監督は「間隔が空いたとはいえ、普段、中6日で投げている投手ですから、難しいところがあったかもしれない。それでもしっかり準備をしてくれました」と称えた。2週間後にも、今度は敵地・楽天モバイルパーク宮城での先発が見込まれている。
「相手の作戦を下回らないように対策していければ」
球数は7回終了時点で104球、8回終了時点では115球に上ったが、イニングを終えるごとに松井監督から続投を打診され、いずれも「いけます」と力強く答えた。結局、危なげなく121球完投勝利。なぜ、これほどまでに楽天を寄せ付けないのだろうか。本人に聞くと、しばらく考えを巡らせてから、「イメージって、すごく大事だと思います。名前が挙がった時に相手が嫌がる存在で、試合前から嫌なイメージを持たせられているのかなと思います」と答えた。
相手の主砲の浅村栄斗内野手を、今季13打数1安打6三振、昨季も7打数1安打5三振と抑え込んでいることは、失点しない大きな要因だろう。「外角の球に対して、あまり踏み込んできていないと感じます。怖さを印象づけられているのかなと思います」と明かす。威力抜群で、その上制球の定まらない球ほど、打者に恐怖心を抱かせるものはない。
楽天サイドにとっては、なすすべがないのだろうか。今井は「前回の対戦と比べると、(マイケル・)フランコ(内野手)選手や鈴木大地(内野手)さんが出ていなかったり、伊藤裕季也(内野手)選手を出してきたりと、メンバーを変えてきている」と首を横に振って警戒する。
その上で「なるべく相手の対策に負けないように、次はこうしてくるだろうと、だいたいの予測を立てて、相手の考えや作戦を下回らないように、先、先を読んで対策していければと思います」と力を込めた。“お得意様”を大事に維持し続けるつもりだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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