後半戦、期待の選手・福岡ソフトバンク編
俊足、強肩、そして強打。この男に足りないのは、一軍での実績だけだ。福岡ソフトバンクの釜元豪選手が二軍で卓越した打撃成績を残し、虎視眈々と昇格の機会をうかがっている。
まだまだ超えるべき壁は高いが、抜群の身体能力を誇る24歳の大型外野手は走攻守のすべてで魅力十分。ここまでの道のりは決して順風満帆とは言えなかったが、数々の育成出身の主力を生み出してきたホークスにとっても、新たな「育成の星」となれるだけの素質を秘めた存在だ。
西陵高校から2011年の育成ドラフト1位で福岡ソフトバンクから指名を受けてプロ入りを果たした釜元選手は、着実に実力をつけて二軍で毎年のように好成績を収めるようになる。しかし、チームの選手層の厚さもあってか中々支配下選手登録が叶うことはなかった。それでもプロ入り4年目となる2015年に念願の支配下登録を勝ち取ると、2016年には一軍での自身初出場を飾る。これまで一軍では計3試合の出場でヒットこそ記録できていないものの、少しずつ経験を積んでいるところだ。
そして、今季は二軍でこれまで以上の好成績を残しており、一軍昇格に向けて猛アピールを見せている。40試合で打率.321、5本塁打、22打点を記録して、確実性と長打力を兼ね備えていることを証明。低めの球に対しても時には逆らわずに流し、時には思い切りよく振りぬく姿勢は、天性の打撃センスを感じさせるものだ。
釜元選手の持つ魅力は打撃だけにとどまらない。入団時に「セールスポイントは足の速さ。盗塁の技術を身につけて、しっかりアピールしていきたい」と語っていた釜元選手は、その言葉通りに年々盗塁技術を高めていき、2016年から2年連続でウエスタンの盗塁王に輝いている。さらに今季の二軍での出塁率は.390と選球眼も持ち合わせており、リードオフマンとしての適性は十分と表現していいだろう。
一軍の外野手は中村晃選手、柳田悠岐選手、上林誠知選手と強力な布陣だが、強肩と俊足を兼備する釜元選手も持てるポテンシャルは十分。あとは一軍でも自らのバッティングを披露することさえできれば、この中に割って入って出場機会を増やすことも決して不可能ではないはずだ。
釜元選手が支配下登録を受けた際、球団から与えられた背番号は「60」。先述の中村晃選手が2014年までつけていた番号と同じものだ。支配下登録を勝ち取った際には「中村さんには昨日連絡をしました。『おめでとう』という返事をもらいました。同じ外野手。中村さんに負けない練習量で、自分の持ち味をしっかりと出していきたい」と語っており、左打ちの外野手として目標としている様子もうかがえる。
福岡ソフトバンクでは千賀滉大投手をはじめ、山田大樹投手、飯田優也投手、二保旭投手、そして石川柊太投手に甲斐拓也選手と育成出身の選手が主力に成長したケースが多く存在する。また、釜元選手と同じ2011年の育成ドラフトで福岡ソフトバンクから2位指名を受けた亀澤恭平選手は、移籍先の中日で貴重な戦力として主力の仲間入りを果たしている。入団時に共に俊足をアピールポイントに挙げていた釜元選手としても、ドラフトの同期に負けてはいられないところだろう。
釜元選手はチーム内の熾烈な競争に勝ち抜き、かつて自身と同じ背番号「60」を背負っていた先輩と外野で並び立つことができるか。雌伏の時を越えた若き九州男児が持てるポテンシャルのすべてを発揮できれば、きっと一軍の舞台で旋風を巻き起こすことも可能なはずだ。
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