「8年かかってやっと着る事ができた」プロのユニホーム。NPB最低身長の坂本一将は、一軍で人々に勇気を与える存在となれるか
パ・リーグ インサイト 望月遼太
2018.7.3(火) 16:54
後半戦、期待の選手・オリックス編
苦労に苦労を重ねてたどり着いたプロの舞台で、162センチの内野手が千載一遇のチャンスをつかむ日が近付きつつあるのかもしれない。オリックスの坂本一将内野手が二軍で3割を超える打率を残し、支配下選手登録に向けて猛アピールを続けている。現在のNPBで最も身長が低い選手でもある坂本選手は、自身の持ち味を存分に生かしたプレーを見せ、育成の、そして小柄な人々にとっての星となれるだろうか。
浦和学院、東洋大学、セガサミーを経てBCリーグの石川ミリオンスターズで活躍した坂本選手は、2016年の育成ドラフト4位でオリックスから指名を受けてプロ入りを果たす。ユニホームに袖を通した感想を聞かれると「8年かかってやっと着る事ができたので、ここまでこられたかという気持ち」「一気にやる気が出ました」と話し、憧れの舞台に立てるという実感をかみしめていた様子だった。
ルーキーイヤーとなった2017年には二軍で60試合に出場したが、打率.181とプロの壁に跳ね返される形に。27歳という年齢もあってなんとしても結果を出しておきたい状況で迎えた翌2018年、プロの水にも慣れた坂本選手はシュアなバッティングを見せていき、ついにその本領を発揮し始める。
ウエスタンで42試合に出場して打率.308という好成績を残し、セカンドの主戦として1番や2番を任される機会も増加している。持ち前の俊足を生かした内野安打のみならず、低めの球を巧みなバットコントロールで捉えてヒットにするケースも目立ち、非凡な打撃センスを垣間見せることで改めて自らの存在価値を証明している。
昨季は155打席に立って7個だった四球が今季は126打席で10個と選球眼も成長し、出塁率も.364と1割5分近く向上した。この状態を今後も維持できれば、俊足と巧打を兼備した坂本選手はチャンスメーカーが不足気味の一軍にとっても面白い存在となれるかもしれない。
入団時に「年齢が上なので駄目だったら1年で終わってしまう世界。1日1日を修行のつもりで、早く試合で出る事ができるようにがんばります」と語るなど、大卒社会人、さらには独立リーグを経てのプロ入りとあって、残された時間が決して多くはないことは坂本選手自身も認識しているようだ。
しかし、体格面で少なからずハンデがあったにもかかわらず、高校・大学と名門を渡り歩き、社会人でも強豪のセガサミーで主力として活躍した経験は貴重なものだ。その実力はBCリーグでも証明済みで、苦労を重ねてプロ入りを果たした坂本選手が一軍の舞台で躍動する日が訪れれば、低身長に悩む多くの野球少年たちに勇気を与えることにもつながるだろう。
自身のセールスポイントを「身長が低い中でこれまで生き残ってやってこられた経験と生命力」と語った球界最低身長選手にとって、これからも1試合1試合が生き残りに向けた戦いの場となることだろう。しかし、坂本選手は持ち味でもある「泥臭さ」を武器に、体格のハンデをものともしないガッツと技術をこれからも見せ続けてくれるはずだ。
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