安堵の表情でダイヤモンドを回った。楽天・松井稼選手が13日の千葉ロッテ戦(Koboスタジアム宮城)に「7番・DH」でスタメン出場し、4回無死、右翼にソロ本塁打。今季初安打をホームランで決めてみせた。相手先発のイ・デウン投手の直球をすくい上げるようにして弾き返し「ようやく1本目がでて良かった」と、ほっとした表情で振り返った。
開幕から「3番・中堅」として期待されていた松井稼選手。だが3月29日に左翼手のウィーラー選手と交錯して右膝を負傷。一軍に帯同したが試合に出ることはなく、この日が11試合ぶりのゲームとなった。
今年41歳になる。野手ではチーム最年長。久米島春季キャンプでの早朝声出し。宿舎近くの浜辺で、海に向かって今季の目標などを絶叫する楽天の恒例行事だ。今年、そのトップバッターを務めたのが松井稼選手だった。「プロ23年目、今年41歳、肉体は伊志嶺よりもまだまだ若い、松井稼頭央です」とあいさつした。「もう一度、初心にかえって、一軍で大きな怪我なく、ペナントレースを戦っていけるように頑張ります」と誓うと、「最後になりますが」とジャージーを脱いでタンクトップ姿に。「今年はこれを着てビールかけがしたいです!」と締めた。2013年、優勝したときにビールかけで着用した服装に、選手からも拍手と爆笑が起きた。
その2013年、遊撃手としてリーグ優勝、日本一に貢献した。西武時代から走攻守のスペシャリスト。三遊間を抜けそうな打球をバックハンドで捕球し、ジャンプしながら体を反転。バスケットのシュートのように一塁へ山なりのボールを送ってアウトを取る、アクロバティックなプレーは幾度となくテレビやインターネットでも取り上げられた。だが体への負担が大きいのも遊撃手の宿命。2014年終盤、若手の台頭もあり、外野手として試合に出はじめると、そのオフの契約更改で「来年は外野手一本でと(球団に)言いました」と明かした。数々の実績を残してきた内野手の道をキッパリと捨て、不惑を目前に新たな挑戦。過酷な道のりにも見えたが、若手にポジションを奪われることはなく昨年1年間を戦い抜き、日本通算2000本安打も達成した。
周囲に多くを語るタイプではないが、新加入した今江選手がお立ち台に選ばれたときには「何か面白いこと言ってこい」と背中を押すなど、年下選手をいじってムードを高める。この日、本塁打を打った直後のベンチは、満面の笑みで祝福するナインの姿。後輩選手も、松井稼選手の一発を待ちわびていたようだ。
残念ながら試合は敗戦。今季初めてカードを負け越し、3位の福岡ソフトバンクに0.5ゲーム差と迫られた。だがこのまま食らいつくためにも、大ベテランの働きは不可欠。18打席目の一発は、敗戦の中に見えた光でもあった。
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