「パ・リーグ最高のクローザー」。現状ではそう言い切っていいはずだ。オリックスの増井浩俊投手は移籍初年度の今季、安定したピッチングで守護神を務め、好調のチームを支えている。自ら望んだ立場で躍動するベテラン右腕は、所属2チームの「先輩」に続いて、2つの栄冠を手にすることができるだろうか。
北海道日本ハムの優勝に貢献、「強くなっていくと感じた」チームに移籍
静岡高校、駒澤大学、東芝で活躍し、2009年のドラフト5位で北海道日本ハムから指名を受けてプロ入りした増井投手は、2012年に最優秀中継ぎ投手に輝く。先発と抑えの両方を務めた2016年には2桁勝利2桁セーブという両リーグ16年ぶりの快挙を達成し、チームのリーグ優勝・日本一に大きく貢献した。
2017年オフにFA権を行使し、北海道日本ハムからオリックスへ移籍。会見では「自分のやりたかったリリーバーをやらせていただけるというところ」でオリックスを選んだ理由を説明。そしてさらに「今シーズンまで敵として戦っていて、バファローズがこれから強くなっていくと感じていた」「一緒に優勝をめざしたい」と、チームのポテンシャルに大きな期待を寄せていることを明かし、新天地での戦いへ身を投じていった。
今季の開幕当初は好調とは言い難い増井投手だったが、4月18日に移籍後初セーブを記録してからは安定。5月2日から19試合連続無失点をマークし、防御率もあっという間に1点台。6月25日現在、32試合1勝0敗5ホールド18セーブ、防御率1.83という好成績を残し、昨季までの守護神・平野投手の渡米によって生じた穴を十二分に埋めている。
増井投手の復調とシンクロするかのようにチームも状態を上げていき、福岡ソフトバンクと激しい3位争いを繰り広げている最中。交流戦もパ・リーグトップの好成績で終え、2014年以来となるクライマックスシリーズ進出の可能性は日に日に高まってきている。
所属した2チームでともに「先輩」の後を追う
増井投手は、昨季までに129ホールド、110セーブを積み上げてきた。日本球界で通算100ホールドと150セーブの両方を記録したのは、阪神の藤川投手、元北海道日本ハムの武田久氏、現ダイヤモンドバックスの平野投手のわずか3人のみである。
純粋な実力はもちろん、場面を問わず腕を振るう器用さ、タフネスさ、チームへの献身的な姿勢がなければ成し得ないこの記録。増井投手が今季中に上記の3人に並ぶためには、40セーブ到達が条件となるが、2015年に39セーブを挙げた右腕にとっては決して非現実的な数字ではないだろう。史上4人目の「100ホールド・150セーブ」達成はおそらく間近だ。
北海道日本ハムの「小さな守護神」として君臨した武田氏と、昨季までオリックスの抑えを務めていた平野投手。増井投手は奇しくも、チームの枠を超えてこの2人の後を継いだ形となるわけだが、2投手が持っていて増井投手がまだ手にしていないものが、150セーブのほかにもうひとつある。最多セーブのタイトルだ。
増井投手の獲得タイトルは、これまで最優秀中継ぎ投手賞のみ。しかし、今季はここまで2位と2つの差をつけてセーブ数ランキングトップに立っており、このまま自身初の栄冠に輝く可能性は十分にある。新天地に久々のAクラスを、そして自身には2つの大記録を。増井投手はこれからも僅差の試合でマウンドに上がり、その腕で勝利の瞬間を手繰り寄せていく。
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