キャンプインは7日遅れ、キャンプ中には国家試験受験のために離脱
福岡ソフトバンクの育成ドラフト7巡目ルーキー・水口創太投手が28日、筑後のファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で行われている春季キャンプで初めてブルペンでの投球練習を行った。捕手を立たせて8割程度の力で18球を投げ「順調に来ているかなと思います」と柔らかい表情を見せた。
新人合同自主トレで一度、ブルペン入りしていたものの、キャンプに入ってからはこの日が初めて。「合同自主トレの時より、身体も徐々に変わってきてはいるので、フォームの安定感や球の強さは出てきているのかなと思います」と、プロ入りから2か月の間での自身の成長に手応えを感じている様子だった。
水口と言えば、京大医学部からプロ入りした異色の経歴で知られる。京大からのプロ入りは史上2人目で、医学部からは初めてのプロ野球選手。ブルペン入りがキャンプ最終盤までにズレ込んだのは相応の理由がある。卒業試験の関係で他の選手より7日遅れてキャンプインを迎え、第4クール途中には理学療法士の国家試験を受験するため、再びキャンプを離れていたからだ。
現役のプロ野球選手が国家試験を受験するというのは異例中の異例だ。水口は言う。「受けることはずっと決めていました。1年に1回しか試験がないので、ここで取るしかないと思っていました」。実習等の課程が全て終わり、4年生になってようやく受験資格を得た。試験はプロで最初のキャンプ時期と被ってしまったが、「今だけだと思って頑張りました」と練習と勉強の両立に力を注いだ。
理学療法士の国家試験を受験、自己採点では手応えも…
ここ数か月のみならず、大学4年になってからは今まで以上に野球と勉強の“二刀流”の負担は大きくなっていた。1月に若鷹寮に入寮してからは特に忙しくなった。練習が終わると部屋にこもり、1日4時間を目標に勉学に励んだ。プロとしての生活が始まってから、どうしても勉強量は落ちてしまった。そんな中で挑んだ試験で不安もあったが、自己採点では手応えも感じているという。合格発表は3月22日だが、「今はもう野球だけ考えています」と区切りが付いて安堵した様子だ。
無事合格すれば、極めて異例の“現役中に理学療法士の資格を取得したプロ野球選手”となる。「トレーナーさんからもいろいろ学んで、身体のケアやトレーニング面で(資格を)生かしていきたいです」と話す。チーム内にも多くトレーナーがいるため、話を聞くなどして、これからも意欲的に学ぶつもりだ。
「球の角度が自分の一番の武器だと思うので、そこを伸ばしていきたいと思います」と笑みを浮かべる水口。194センチの長身から繰り出す最速152キロの直球はまだまだ伸びしろだらけ。学んできたことを自身の身体で表現していければ、更なる成長も間違いないだろう。唯一無二の挑戦を続ける異色のルーキーのこれからに注目したい。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)
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