史上8人目の800試合登板に笑顔「まさか今日投げるとは」
■北海道日本ハム 4ー0 埼玉西武(21日・札幌ドーム)
北海道日本ハムの宮西尚生投手が21日、札幌ドームで行われた埼玉西武戦でプロ野球史上8人目となる800試合登板を達成した。お立ち台では「(先発の)上沢が完投すると思っていたので、まさか今日投げるとは思わなかった」と笑ったが、14年連続50試合以上登板という献身ぶりを見てきた多くのファンは、貴重な瞬間に立ち会えたことを喜んだはずだ。
なにせ、宮西のヒーローインタビューそのものがレアである。防御率3.65と苦しんだ昨年は1度もなかったし、一昨年は700試合登板を達成した7月29日の1度だけ。最優秀中継ぎのタイトルを獲得した19年は3度、18年は2度。基本的にリリーフがヒーローインタビューに呼ばれる機会は、先発投手や主軸打者に比べて圧倒的に少ない。
先発は6回3失点でもクオリティースタートと評価される一方、リリーフは抑えた時よりも打たれた時の方が目立ってしまう。宮西自身、若い頃は脚光を浴びる花形の先発投手に対して複雑な思いを抱いていたと打ち明けてくれたことがある。
「リリーフは抑えて当たり前。打たれたらボロクソ。その厳しさに納得がいかなかったですね。わだかまりがなくなったのは、2年目(09年)に優勝した時。みんなに『リリーフのおかげ』と言ってもらって、意識が変わりました」
今季は苦戦も「やっと光りが見えたというか…」
以来、リリーフとしてのプライドを持って仕事に徹している。その美学は「一番すごいのは目立たないリリーフ」。マウンドに上がれば、目の前の打者をサッと片付けて、静かに戻ってくる。1年通してメンタルを安定させるため、常に平常心を心掛け、一喜一憂はしない。
そんな宮西が、今季は思うような結果を残せず、夜も眠れないほど苦しんでいた。「こんな感じやないのに、何があかんねんと。どこを目指してやればいいのか分からない状況だったので、やっと光が見えたというか、最悪なところは脱出したかなというところ。ここからですよ」。9回を三者凡退で締めたこの日、フォーム修正の手応えを口にした。
「グラウンドで目立ってはいけないけれど、記録の時は目立っていい」というのも宮西が語るリリーフの流儀の一つ。それは球界におけるリリーフの評価を高め、若いリリーバーの道標になるという強い使命感の表れでもある。
ヒーローインタビューで観客の視線を一身に集める宮西の言葉に耳を傾けていたら、ハッとした。「こういう記録をもう簡単にとれる年でもないので、今日の景色をしっかり眺めたいです」。冗談混じりの口調だったが、もうすぐ37歳になる男の本音も垣間見えた。球史に名を残す鉄腕のヒーローインタビューをあと何度見られるだろうか。目前に迫る記録は、あと23ホールドで到達する400ホールド。前人未到の偉業もまた本拠地の勝ち試合で達成して、お立ち台に上がってほしい。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)
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