初勝利をあげた“獅子の由伸” 辻発彦監督をも“おちょくる”驚きの度胸とポジティブ思考

Full-Count

2022.4.21(木) 13:13

埼玉西武・水上由伸※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
埼玉西武・水上由伸※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

お立ち台で実家の両親に向けて「勝ったよ~!」

■埼玉西武 3対0 千葉ロッテ(20日・ベルーナドーム)

 埼玉西武の水上由伸投手が20日、本拠地ベルーナドームで行われた千葉ロッテ戦でプロ初勝利を挙げた。育成ドラフト5位で入団し、1年目の昨年5月に支配下登録を勝ち取ると、1軍デビューから17試合連続無失点のパ・リーグ新記録を樹立。この日は0対0で迎えた7回、2死2、3塁のピンチで登板すると、わずか2球で相手打者を打ち取り、その裏に味方打線が決勝点を奪った。試合は3対0で決着した。

「勝ったよ~!」。試合後、初めてのお立ち台に上がった水上は、ウイニングボールを掲げながら、人口8878人(今月1日現在)の長野県宮田(みやだ)村の実家に住む両親へ呼びかけた。

 先発の松本航投手が、6回まで無安打3四球無失点の快投。ただ、味方打線も千葉ロッテ先発の美馬に無安打2四球1死球無失点に抑えられ、6回終了時点で“両軍ノーノー”の投手戦となった。7回の守備で、松本が1死走者なしから菅野に右前打を許し、四球と暴投などで2死2、3塁と追い込まれると、辻発彦監督は思い切って水上へのスイッチを決断した。

 水上は代打・山口に対し、まず初球の外角低めのスライダーを空振りさせると、2球目の146キロのシュートで詰まらせ、投ゴロに仕留めた。「三振を狙うと力んで甘くなるので、思い切り詰まらせてやろうと思っていました」としてやったり。その裏、呉念庭の勝ち越し適時二塁打が飛び出し、水上に初勝利が舞い込んで「航さん、すみません。いただきました!」と頭を下げた。

「スマホを落として割ってしまった時も、これで新しい機種を買うことができる、と」

 今季11試合に登板し、計10回1/3でわずか1失点。防御率0.87の安定感を誇る。絶体絶命のピンチにも「ああいう場面の方が楽しめるタイプなので」と言い切る度胸は、いったいどこで磨いたのだろうか。

 山梨・帝京三高時代に、専門の講師からメンタルトレーニングの手法を学び、四国学院大進学後も独学で勉強を続けた。「常に最悪の場面を想定して準備する」ことが、ピンチにも動揺しない秘訣で「ここで抑えたらかっこいいな、と思ってマウンドに向かいます」と堂々としたも。ポジティブ思考は普段の生活にも及び「スマホを落として割ってしまった時も、これで新しい機種を買うことができる、と本気で思いました」と笑い飛ばす。「ポジティブすぎて、周りから『少しおかしいんじゃないか?』と言われる」ほどである。

「ふてぶてしいところがあるよ。俺をおちょくってくるくらいだから」と、楽しそうに明かしたのは辻監督だ。試合前の練習が終わる頃、物思いにふけっていた指揮官へ、水上が「監督、何か悩み事があるんですか?」と話し掛けたことがあるというのだ。チームでは7回を水上、8回を平良、9回を増田が担う“勝利の方程式”が確立されつつある。怖いもの知らずの快進撃はまだまだ続きそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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