新庄剛志が教えてくれた「楽しむ」の裏側 専属広報が明かす“真の姿”とは?

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2022.4.20(水) 07:20

北海道日本ハム・新庄剛志監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
北海道日本ハム・新庄剛志監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

衝撃の引退宣言翌日、新庄が円陣で口にした大望とは…

 2006年の4月18日、現在北海道日本ハムを率いる“ビッグボス”こと新庄剛志監督は、試合中の本塁打コメントで突然現役引退を宣言し、世間の度肝を抜いた。先にこのコメントを預かり、発信するという役回りを担ったのが当時、新庄の専属広報を務めていた元北海道日本ハム捕手・荒井修光さんだ。当時も現在と変わらぬ破天荒ぶりで注目を集めた新庄の知られざる姿を、振り返ってもらった。

 衝撃の引退発表翌日、新庄は東京ドームで行われたオリックス戦の円陣で、ナインに大騒動を詫びた。「ああいう形で引退を伝えて申し訳ない」。そして「このチームで日本一になりたい」と続けた。ヒルマン監督が率いて3年目の北海道日本ハム。前年は5位で、プレーオフ進出も逃していた。この年も開幕から勝ったり負けたりで、この時点で10勝9敗の貯金1だった。

 それが44年ぶりのリーグ優勝、日本一まで駆け抜けてしまうのだから、シーズン開始早々の引退宣言にはチームを1つにする力があった。新庄自身もこの年、打率.258、16本塁打。引退する選手とは思えない成績を残した。左翼・森本稀哲、右翼・稲葉篤紀と組んだ外野守備も鉄壁だった。いとも簡単に、スマートにやってみせるのが新庄だった。

 ただ、メディアには決して見せなかった努力家の一面も、荒井さんにはハッキリと記憶にある。ナイターの日の札幌ドームで、朝9時から打ち込むのもしょっちゅうだった。ブルペンで3時間、みっちり打ち込み、他の選手が球場入りする頃には一旦、去っていくのだ。「僕が見ていないところでもやっていたはずですよ」。

 さらに頭のトレーニングもしていた。当時の北海道日本ハムでは、スコアラーが選手ごとに安打の画像をまとめ、DVDにして配布していた。これを移動の車中で荒井さんと2人、見るのも日課だった。「『ここでいい打ち方をするから』とか、よく言っていました。自分のバッティングを組み立てる作業を、頭の中でやっていたんです。とにかく頭の中には、常に野球があるんです」。監督として野球を考え続ける今と、根っこは変わらない。

「楽しい」の裏にあるものを、全て持っているのが新庄監督

 2005年から交流戦が始まると、荒井さんにはこんな要望もあったという。「ノブ、奥さんに頼んで、セ・リーグの試合をできるだけ録っておいて」。テレビ中継のセンターカメラからの映像は、自身が守る中堅からの視界に重なる。「うちの投手と球速、変化球の動きを比較したときに、どういう打球を打ってくるかわかるんだよ」。自身の経験と判断で、どんどん守備位置を変えていく新庄に、不可欠な情報が詰まっていたのだ。

「今もワイワイやっているように見えますけど、新庄さんの言う『楽しむ』は、苦しんで、苦しんで、できるようになるから楽しい。それで勝つから、盛り上がってくれるから楽しいんですよ。楽しいの裏にあるものを、すべて持っているのが新庄さんなんです」

 新庄は引退後、インドネシア・バリ島へ移住し、モトクロスレースや絵画などの趣味に打ち込んだ。野球界から距離を置き、いつしか荒井さんと連絡をとることもほとんどなくなった。ただ2018年の年末、札幌市内の量販店で突然、イベントに登場したことがあった。会場に出向き「お疲れ様です」と声をかけた荒井さんを、新庄は楽屋に引っ張りこんで、話し込んだ。「新球場ってどんな感じ? できた時に俺が監督なら楽しくない?」。今になって考えると、まさに“予言”だった。

 口だけではない。2020年の年末には12球団合同トライアウトに参加。48歳での現役復帰を目指した。オファーがないとわかるとすっぱりその思いは断ち、今度は監督になるための準備を続けていた。昨年のシーズン中、突然鎌ケ谷スタジアムに現れ、窓口でチケットを買いスタンドに座った。恒例行事となっている5回終了後の「ラジオ体操」にまで、楽しそうに参加してくれたという。

「新庄さんは、何をやるにしても主語が自分じゃないんです。『チームが』『選手が』『ファンの皆さんが』となる。周りへ与える影響力が本当に大きい。監督として何をやってくれるのか、楽しみしかないです」

低迷が続く北海道日本ハムを変えるには、うってつけの存在だった。荒井さんは現在勤務する2軍の本拠地・鎌ケ谷から、チームが“新庄色”に変化していく様を見守っている。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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