2022年「ポスト・宮城大弥」は生まれるか? 来季2年目以降を迎える新人王の有資格選手を特集

パ・リーグ インサイト

左上から北海道日本ハム・今川優馬選手、福岡ソフトバンク・C.スチュワート・ジュニア投手、オリックス・元謙太選手、千葉ロッテ・小川龍成選手、埼玉西武・水上由伸投手、東北楽天・藤井聖投手(C)パーソル パ・リーグTV
左上から北海道日本ハム・今川優馬選手、福岡ソフトバンク・C.スチュワート・ジュニア投手、オリックス・元謙太選手、千葉ロッテ・小川龍成選手、埼玉西武・水上由伸投手、東北楽天・藤井聖投手(C)パーソル パ・リーグTV

 2021年12月15日に行われた「NPB AWARDS 2021 supported by リポビタンD」では、オリックスの宮城大弥投手が新人王に選出された。“新人”王というだけにルーキーイヤーで獲得するイメージがある方もいるかもが、受賞者をさかのぼると、実はここ数年を見ても、過去5年間でパ・リーグの新人王に輝いた選手のうち、ルーキーイヤーでの受賞は埼玉西武の源田壮亮選手(2017年)のみと、意外にも一人だけなのだ。

 先日行われたドラフト会議で入団した新人の有望株にかかる期待も当然大きい。しかしここ数年のパ・リーグ事情からすると、次期新人王は2年目以降の選手から生まれる可能性も十分あるだろう。

 そこで今回は「ポスト・宮城大弥投手」となりうる「パ・リーグの2年目以降の新人王有資格選手」を特集。少々気は早いが、来季の若手の活躍に思いを馳せながら読んでいただきたい。まず、新人王の資格は以下の通り。

①【全選手】海外のプロ野球リーグへの参加経験がない
②【全選手】初めて支配下選手登録されてから5年以内
③【打者】前年までの一軍公式戦での打席が60打席以内
④【投手】前年までの一軍公式戦での投球回が30イニング以内

パ・リーグ新人記録を樹立も有資格! パでは初の「育成出身の新人王」なるか

埼玉西武ライオンズ・水上由伸投手
【通算成績】29試合 27回 0勝 1敗 22奪三振、防御率2.33

 2020年ドラフト育成5位、“最下位指名”から数カ月でのスピード出世。気がつけば「プロ初登板から14試合連続無失点」とパ・リーグ新人記録を更新した水上由伸投手。持ち味のインコースを攻める強気な投球スタイルをファームでも貫くと、開幕から2か月も経たないうちに背番号を二桁にしてみせた。新人王受賞となれば、パ・リーグでは育成入団選手として初めてとなる。「育成出身の星」として輝けるか。

 投手の中では新人王有資格者の中で、群を抜いた活躍を見せつけた水上投手。また、埼玉西武には「打」の面でも期待のかかる選手が。同い年の渡部健人選手は、イースタン・リーグでリーグトップタイの19本塁打を放ち、一軍でも1本塁打マークしている。両選手による投打の活躍でチームをけん引してほしい。

プロ初安打が初本塁打。新庄新監督のもとで「北海道のスター」へ

北海道日本ハムファイターズ・今川優馬選手
【通算成績】13試合 28打数 2安打 1本塁打、打率.071

 北海道に生まれ、学生時代も北海道で野球に打ち込んできた生粋の“道産子”、今川優馬選手は社会人野球を経て2021年にドラフト6位で入団。春季キャンプでは伊藤大海投手らとともにキャンプインを一軍で果たした。一方で4月にはいきなり一軍での出場機会を得るも、11打数0安打と苦しみ二軍行きとなる。

 しかしファームでは61試合に出場すると、14本塁打46打点、打率.310の結果を残す活躍。シーズン終盤には再び一軍での機会をつかみ、昇格後の初打席でプロ初本塁打(初安打)を放つなど、将来性を見せつけた。来季は若手の積極的起用を明言している新庄剛志新監督の就任を追い風として、一気に駆け上がりたい。

奪三振率は驚異の“13.69”。「米ドラフト1位」の将来性抜群な22歳

福岡ソフトバンクホークス・C.スチュワート・ジュニア投手
【通算成績】11試合 23.2回 0勝 2敗 36奪三振、防御率6.08

 MLBのアトランタ・ブレーブスからドラフト1位指名されるも、入団を辞退し翌年に福岡へやってきたC.スチュワート・ジュニア投手。“異色の経歴”とも言える将来性抜群な右腕は、来日3年目となった今季、8月15日の北海道日本ハム戦でプロ初先発を果たす。白星はつかなかったものの、5回無安打9奪三振無失点と圧巻の投球を見せた。

 9イニングあたりに奪う三振数を表す奪三振率は、驚異の“13.69”。今季の奪三振タイトルを獲得した山本由伸投手が“9.57”だったことからしても、C.スチュワート・ジュニア投手の凄さが伝わってくる。一方で今季は0勝に終わり、防御率も6.08と原石はまだまだ荒削り。磨きをかけて次世代の鷹のエースとなるか。

守備は一級品。課題の打撃次第では新人王候補に浮上か

千葉ロッテマリーンズ・小川龍成選手
【通算成績】20試合 6打数 0安打、打率.000

 千葉ロッテからは期待の「守備職人」・小川龍成選手を紹介する。小川選手は華麗な守備が魅力の23歳。7月15日に行われたフレッシュオールスターゲームでは、適時三塁打を放つ活躍を見せ優秀選手賞に輝くなど、確かな自信につながる1年となった。一方で打撃面では課題も。守備固めでの出場がメインとなった一軍では無安打、二軍でも1割台と打撃の成長は必須だ。

 その一方で、ここをクリアすれば急成長するチャンスは十分ある。福岡ソフトバンクの周東佑京選手も、一軍初出場を果たした2019年は打率が1割台と対応に苦しんだ。しかし翌年には.270まで上げて出場機会を増すと、盗塁王のタイトルも獲得。小川選手は「守のスペシャリスト」だが、同様に打撃をレベルアップさせて出場機会をつくれば、飛躍の機会は舞い込んでくるだろう。

一軍未経験も経験値十分のダークホース。ファームでは完封勝利含む4勝を挙げる

東北楽天ゴールデンイーグルス・藤井聖投手
【通算成績(ファーム)】17試合 81回 4勝 3敗 66奪三振、防御率3.56

 東北楽天からは、一軍経験こそないものの今後の活躍を予感させる左腕をピックアップする。藤井聖投手は2021年にドラフト3位で入団。東洋大時代は福岡ソフトバンクの甲斐野央投手らと切磋琢磨し、国際試合も経験するなど経験値は高い。140km/h台の鋭く食い込むストレートと切れのあるスライダーが強みだ。8月7日の北海道日本ハム戦では完封勝利を収めるなど、今季はファームで4勝を挙げた。

 同じ左腕で今季新人王を獲得した宮城投手も、2020年は主にファームでの登板がメインだった。一軍で活躍するために新たに武器を身につけるのか、今の強みをさらに伸ばすか。まずは一軍争いに食い込むことが、新人王への第一条件となるだろう。日米で活躍した名左腕・石井一久GM兼監督のもとで成長する藤井投手に要注目だ。

二軍で全111試合出場。今後数年にかけブレイクの可能性を秘める

オリックス・バファローズ 元謙太選手
【通算成績(ファーム)】111試合 334打数 46安打 4本塁打、打率.138

 宮城投手はもちろんのこと、紅林弘太郎選手など高卒で入団した若手も主力としてチームを支えるオリックス。中京高からドラフト2位で入団した元謙太選手の名前も覚えていただきたい。元選手は強いパンチ力が魅力の選手。ファームの試合では、チームの中で唯一全試合に出場するなど、首脳陣からの期待も大きい。

 外野手登録だが今季は主に三遊間をこなすなど、ユーティリティな一面も見せる。宗佑磨選手や紅林選手など、同じく若手とのレギュラー争いの中でもう一段階の成長に期待だ。ぜひ元選手の今後の活躍に注目していただきたい。

文・小野寺穂高

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