「フォームの安定性、自分のしたいことが全然形としてできていなかった」
悔しさを胸に進化の形を模索している。福岡ソフトバンクの甲斐野央投手。今季右肘の手術から2年ぶりに復帰し、1軍で22試合に登板したものの「納得はいってないです」というのが率直な胸の内だ。
宮崎で行われている秋季キャンプ。第1クール最終日となった7日にキャンプで初めてブルペンに入り、36球の投球練習を行った。自らのフォームを確かめるように1球1球ボールを投げ込み、時にはサイドスロー気味にキャッチボールを行うシーンも。解析チームの計測するデータも確認しながら、試行錯誤を重ねている様子が見て取れた。
ルーキーイヤーの2019年には勝利の方程式の一角として65試合に登板。2勝5敗8セーブ26ホールド、防御率4.14と日本一に貢献した。だが、2020年のキャンプ中に右肘内側則副靭帯の一部損傷が発覚。その後も肘の故障に悩まされ、オフには右肘の手術を受けた。1軍復帰登板を果たせたのは今年の8月になってから。そこから22試合に投げたが、その内容は満足できるものではなかった。
「リハビリ明けてシーズン終わってみたら22試合投げさせてもらえていて、そこは感謝なんですけど、投げられなかった悔しさ、もどかしさは置いておいて、投げられるようになった中で技術的なところで成績は伴ってなかった。フォームの安定性、自分のしたいことが全然形としてできていなかった。フォーム変えたというのももちろんあるんですが、そこをもっと確立させないといけないなってシーズン投げて思いました」
キャンプで行ったサイドスローでのキャッチボールの意図は…
1軍復帰を果たせた喜びはあるものの、22試合で0勝2敗1セーブ4ホールド、防御率は4.35。安定感に欠き、失点する試合もしばしば。「フォームを変えて初めてシーズン戦ったわけで、いきなり上手くいくわけがない。今年の投げ方が1番下手くそな自分だと思って進歩しないといけない」と、己を見つめ直している。
投球練習中に見せたサイドスローでの投球にも意図がある。「全部が全部、誰しも色々考え方があって、合う合わないがある。僕の中ではサイドスローをする体の使い方というのがしっくり来ているので、その中でどんどん自分のフォームに落とし込んで、強いボールを投げられるようにと取り組んでいます」。下半身の使い方をヒントに、より良いフォームの構築に繋げようとしている。
どうしても、2019年の65試合の活躍を思い返しがちになるところだが、そこへの意識は消し去ろうとしている。「工藤前監督もおっしゃっていたんですけど、いい時の自分、いいシーズンを迎えたりすると、思っていなくても人間、馬鹿だから頭の片隅に残って慢心してしまう。まさに、その通りだなと。野球をやる上で謙虚でいなきゃいけないと思います」。初心に帰って、新たなスタート。その思いで秋のキャンプを過ごしている。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)
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